第十六話「空のまにまに」③
やがて、船体姿勢が安定し、高度も安定する。
高度は……目測で300mくらいかな? でも、これ……東京タワーやスカイツリーなら、ぶつかるくらいの低空飛行だぜ?
……雲が低く垂れ込めてるから、低空飛行を余儀なくされてるとは言え、こんなに低いとまじで怖い。
東京のビル街とかだったら、大迫力を通り越して、普通に泣くだろうな。
……でも、コレはもうしょうがない。
もっとも飛行機と違って、いきなり墜落とかはしないってのは、そこはまだ気楽でいいな。
なんだかんだで、80kmくらいの速度は出てるから、あっという間に景色がビュンビュン通り過ぎていく。
目標のダンジョンは……あ、見えた!
「目標を視認したぞ……左の方! 左舷側……でも、あっという間に通り過ぎちまったよ」
「了解した。なんだ、まぁまぁ近くに降りれたんだな。正面にオルドゥ山が見えてるから、こうなりゃ、あとは地図上で照らし合わせるだけだな……航法のじっさん、よろしく頼むぜ! それと上の連中にも遠話で連絡だ……我、目標地点付近に降下成功、追って指示あるまで上空待機ってな」
ちなみに、地図上と地上の目標物から、方位磁石やらを使って、現在地の座標を照らし合わせて、瞬時に誤差を修正して、自船の位置を把握する航法士は、一応プロが同行してくれてる。
現役引退してた爺さんで、キール爺さんって言うんだが。
ソラシムの空港からガランドゥ号を回航する際も、作業員の指揮をしてくれてたし、ジジィの冒険にも長年付き合ってたって言う大ベテラン様だ。
ちなみに、機関員や翼角調整やってるナックルは、回航作業員をそのまま、乗員として雇用した。
翼角調整はともかく、機関調整はさすがにある程度の慣れを要求するんで、ダメ元で頼んでみたら、あっさりオーケーしてくれた。
この辺の交渉はダリオがやってくれた。
あいつ、ナックル社会でも結構な大物として認識されてるみたいで、顔が利くらしい。
「座標ぉ修正ぃ……完了ぉ……。うむ、ダンテ君、君なかなか悪くない腕じゃなぁ……。雲抜けやって、誤差は最小。慣れんと見当違いの所に降りるなぞ珍しくないのだがなぁ……。お見事、お見事ぉ……ゲホゲホ」
「まぁなっ! 俺って、割と本番に強いタイプだからな!」
「やるねぇ……すまんが、一度転回して、ゆっくりと近づいてくれ……多分、左後ろの方だと思う」
「へへっ! 任せろや。左旋回いくぞっ! 機関室……左舷微速、右舷半速よーそろー。続いて、左舷翼角ひとつ下げ。いいぞ、その調子だ……」
「……クロイノ君、魔物たちの様子は見えたかい? 船の方はもう大丈夫そうだし、そろそろボクの仕事に取り掛かるとするよ」
ミレニアムちゃんの声が伝声管から聞こえてくる。
「あっという間に通り過ぎたから、なんとも……入口付近にチラッと黒だかりが見えたから、あれが魔物の群れだったのかな?」
「たぶん、それだね。そうなると、昨夜と状況はあまり変わってないみたいだね。ダンテさん、このまま現地上空で、緩旋回を続けるようにしてもらえないかな? そろそろ、ボクが出るよ。まぁ、さすがに飛空艇からの魔法爆撃なんて経験ないけど、そこはなんとかしよう」
「そうかい? なんなら、真上で停船位ならできるぞ? 砲撃するなら、なるべく近くで止まってた方がいいんじゃねぇのか? 魔法っても100mも離れたら、そう当たらんし、自分が動いてるとなると、相当難易度高いんじゃないか?」
ダンテの席の伝声管を借りてたらしく、ダンテが話に加わってくる。
「うん、でも、敵はゴブリンやオークとヒューマノイド系が主力らしいからね。一応、弓とか投げ槍で対空攻撃くらいやってくるだろうから、それはあまりオススメしない。もうちょっと高度が取れれば、脅威でもなかったんだけど、この低く垂れ込めた雲がネックになって、低空飛行を余儀なくされてるからね。まぁ、難易度はちょっと上がってるだろうけど、問題はないさ……じゃあ、ボクは上に上がるね。なるべく揺らさないようにしてくれると助かる」
「了解だ……。ご注文としては、なるべく速力落としつつ、ゆっくりと旋回だな。機関室、このままの推力バランスを維持してくれ。両翼は翼角そのまま……ただし、船体角はなるべく前後左右フラットを保ってくれ。微調整はそっちに任せるぜ」
各部所から、ニャッゴー! だのニャオニャオ言ってるのが聞こえてくる。
まぁ、アホっぽいけどナックルってのは、仕事に関しちゃ割ときっちりやるからな。
飲んだくれ船員とかよりもよっぽど頼りになるわな。
「やぁ、クロイノ君……聞こえるかい? ボクも上部甲板、配置についたよ。いやぁ、端の方も鎖を張った手すりがあるだけ……落ちても飛べるから平気って解ってても怖いもんだね」
ミレニアムちゃんの声が伝声管から聞こえてきた。
上部甲板は、ブリッジの上の方辺りに平らな板を乗せたような感じになってる。
確かに、甲板の端は鎖と支柱だけとシンプルだった。
「俺なんか、足元スケスケなんだぞ? もうタマがヒュンヒュンする!」
「タマって……。あまりレディに言うもんじゃないよ。で、手はずはどうする? 遠距離からの魔法攻撃ともなると、精密射撃は不可能だ。広範囲系の集中投射で一気に殲滅するのがベストだと思うけど。経験上、100m以上離れると、どこに落ちるかちょっと解んないな……距離はざっと1kmってところかな? こりゃ、完全に未知の領域だね」
目標ポイントはもう視界に入ってる。
ゴブリン、オーク、オーガの人型モンスターの三点セット。
数は……なんか知らんけど、ラッシュアワーの駅のホームみたいにぎっしり集まってて、縦横50匹くらいいる様子から、2500匹? まぁ、千は余裕でいるな……目の前だったら、まさに圧巻だっただろうな。
「……こう言うケースは観測射撃って言ってな。最初は数発大雑把に狙って、撃つ。そこからだと良く判らんだろうから、俺がどれくらい逸れたかとか、指示を出すから調整しながら撃つ感じだな。いい感じの角度や方位、出力がつかめたらなら、効力射……全力射撃で一気に吹き飛ばす。まぁ、こんな感じだったかな? 問題は射程……そもそもあそこまで、届かないって事なんだが、それはどうなんだい?」
……正直、数が思った以上に多いんだよな。
向こうも馬鹿じゃないから、爆撃され始めたら、散るだろうし。
そうなると、ここは3割ほど削れたら上等だろうな。
でもまぁ、空爆だけでそこまで削れたら十分だろ。
「ユリアちゃんと色々試した感じだと、一度作り出した攻撃魔法に付いては、そうそう消えないって断言できるね。射程については、この程度の距離なら多分問題ないし、高い所からの方が射程は伸びるみたいだからね。要は試し打ちを繰り返して、本命を叩き込むってことかな?」
「端的に言うとそうなんだがね。まぁ、どのみちぶっつけ本番だしなぁ。多少撃ち漏らしても、手間が増えるだけで、どうとでもなる。気楽にやろうぜ」
なんにせよ、向こうは地べた、こっちは空の上からやりたい放題って時点で、数なんていくら居ても問題にならんからな。
「そうだね。そう言われると、確かに気楽になったよ。それに観測射撃だっけ? 説明良かったよ! 解りやすかった……さすがだよ!」
「良いってことよ。じゃあ、早速試射第一射目……軽くお見舞いしてやりなっ!」
「んじゃ、小手調べ……『火球弾』撃つよっ!」
火球自体はそんなに早くもないからな。
弾道観測と弾道修正なら、俺でも出来るだろ。
この下方見張り部屋は半球状のドームみたいになってるから、下方向の視界はやたら広いから、飛んでいってるのもよく見える。
そこ、第三艦橋配備とかいうなよ?
俺だって、薄々そんな気はしてたんだが、たった今確信に変わった。
……知らない人に説明すると、宇宙戦艦某には、艦体の下に第三艦橋という、予備ブリッジがあるんだが。
その扱いはとっても不遇で、何に使われてるのかほぼ描写されない上に、硫酸の海の惑星に浸かって、真っ先にボロっと溶け落ちたり、直撃弾を食らって木っ端微塵に吹っ飛んだりと、宇宙戦艦某の被害担当部署みたいな扱いで、第三艦橋配備ってのは死亡フラグの一種だとされてるんだ。
まぁ、俺が居るところは限りなくそんなところ。
対空砲火とか食らったら、真っ先にやられそうだし、墜落なんかしたら多分、一番最初に地面と激突することになって、迫る地面を特等席で見れるだろう。
まぁ、貧乏くじなのは承知なんだがね。
ここどう見ても、ナックル専用……その程度にはくっそ狭い。
タレリア製の船で、ナックル押し込むことなんて想定してないだろうから、多分、後付装備……つまり、ジジィの仕業だな。
大方下が良く見えないってんで、後から無理やり見張りスペース作ったんだろ。
このガランドゥ号もジジィはいい加減、自分が乗るのはキツくなってきたからって、もう5-6年くらいは倉庫で埃被ってたらしくて、俺も一度も乗った事なかったんだが……たぶん、そんなところだろう。
まぁ、今回の敵は別に対空砲とか装備してないし、ダンテも乗員ナックルもよくやってるから、墜落とかもしないだろうから、そこは棚に上げとく。
どっかの天空の城の空賊の飛行船みたいに、一人だけ子機に乗せられて、分離させられて、引き回されるってのよりはマシだろうからな。
浮揚石船だと、魔力供給役の魔術師の魔力切れって問題が終始付きまとうけど、ユリアちゃんと言う無限魔力機関搭載だから、そこも無問題。
俺、思わず、足組んで寛いじゃうもんね!
あー、飲み物でも持ってくりゃ良かったな! あ、一服でもすっかな。
先日は一日2回更新してもポイント変わらずで、ヘコみかけましたが。
朝になってみたら、トントンって増えてて、感激しました。
……作者ってのはそんなもんです。
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