閑話休題ー1「いい夢旅気分だネコ」④
遠くからカコーンとかなんとか、鹿威しの音が響き、清流のせせらぎがどこからともなく聞こえ、遮るものもなにもないフルオープンな露天風呂。
そこでは、一糸まとわぬ美少女たちが……。
「うむ! やはり、雰囲気抜群であるな! リンド……まずは駆け付け一杯じゃ! 飲むが良いぞっ!」
「ああ、久しぶりの温泉であるが、やはり良いのう。生き返るようだ! かぁーっ! 美味いっ! やはり、帝国の酒は美味いのうっ! おお、サルガス殿下も一杯どうですかな?」
「うん、僕も頂こうか。いやはや、確かにコレは実に良いね! まるで大自然に抱かれているようだ……程よく熱めの湯、渓谷の風が素肌をなでで行くこの感触。たまらないね……あれ? クロイノ君……どうしたんだい? なんだか、不機嫌そうだけど」
ジジィ、ジジィ、優男。
この残念な組み合わせで、どうやったらテンション上がるんだ? コラ。
当人共は気持ちよさそうに温泉で寛ぎながら、お互い酌をし合いながら、楽しそうにしてるんだが。
俺は……全然楽しくないぞ。
この温泉宿、風呂はちゃんと男女で区切られてる。
まぁ、帝国の公衆浴場とかって、帝国法で風呂は男女別に分けろよってなってるんで、帝国ではそれが一応普通。
ナックルは、別に汗もかかないから、あんまり汚れないから、そんな風呂大好きって訳じゃないんだけど。
基本的に綺麗好きだから、風呂なんかも入る奴は入る。
それに、人間のお供として一緒に入ったりもするし、人間側も別にオスメスで区別とかしない。
要するに、ナックルなんだから、好きな方に入れば? ってのが普通なんだわ。
場所によっては、ナックル専用とかあったりするけど、どっちかと言うと抜け毛で配管が詰まったりするから、その対策でってパターンが多い。
ナックルも別に人間の女の裸とか見てもなんとも思わないし、別に興味ないし、女の子達側もナックル相手に恥じらいも何もってのが一般的な感覚だから、ユリアちゃん達がおかしいって訳じゃない。
ミレニアムちゃんも最初は俺と一緒にお風呂とかって、ちょっと抵抗あったみたいだけど、ネコと一緒にお風呂なんて、そこら辺のネコ好き女性ユーチューバーとかでもやってたりするからな。
そもそも、俺もオッパイむしゃぶりついたりとかしねーし。
一緒にお風呂に入って、背中流してあげたり、綺麗にしてもらったりとか、それだけで十分だからな。
俺、非モテだったけど、そこらへんガッツかない紳士だからな。
ミレニアムちゃんも、要はそもそもお風呂の習慣がなかったから、慣れてなかったってだけのはなしで、最近は全く気にしなくなってたからな。
まぁ、それはいいんだ。
そもそも、ナックル同士でも全裸のヤツだって、割と普通だから、恥ずかしいも何もねぇよってのが常識なんだよ……だが、しかしだなっ!
「え? なんで、クロイノまで女湯に入ろうとしてるのーっ!」
当たり前のようにユリアちゃんに抱かれて、一緒に女湯の暖簾を潜ろうとしたら、アマリリスが絶叫とともにストップかけてきやがったんだ。
「アマリリスちゃん、クロイノ様と私はいつも、一緒にお風呂入ってますよ? なにか問題でもあるんですか?」
ユリアちゃんが不思議そうに尋ねる。
うん、アマリリスの反応がおかしいんだからな……当たり前の反応。
そもそも、ユリアちゃんは、俺と片時たりとも離れてたくないって子。
それ位には、俺ってば愛されてるんだ。
「そうだね。ボクもお風呂はユリアちゃんと一緒でクロイノ君とも一緒だったけど、別に気にするような事も無かったよ。クロイノ君もちゃんと身体一人で洗えてたし、マッサージしてくれたり、お背中流してくれたりもしてくれたからね」
うむ、俺ってばサービス精神旺盛なナックルだからな。
俺が背中に乗ってふみふみするのって、割と程よい重さと肉球の感触がたまらなく気持ちいいって評判。
もちろん、二人だけじゃなくて、お手伝いのメイドさん達にも大好評だからな。
「そうですね……私のところの使用人はナックルが多いんですけど。男の子と女の子で区別とかはしませんよ?」
三人三様……ナックルの俺と一緒にお風呂なんて、普通じゃない? って意見。
ほら見ろ! 多数決で決定!
つか、アマリリスの感覚が変なんだよっ! つまり、オメーがおかしい!
「はぁ? 三人とも、何言ってんのよ! 私はイヤよっ! クロイノに裸見られるなんて! 絶対駄目っ! アンタは男湯っ! そもそも、グラハム閣下やサルガス殿下をほっといていい訳ないじゃないのっ! いいから、さっさと出てけーっ!」
……アマリリスのあまりの剣幕に、三人も同意せざるを得ず、結局俺は女湯を追い出されて、むさ苦しいジジィ共と男湯へ……。
なんてこったっ!
スマヌ、スマヌ……。
せっかくの温泉回が台無しになってしまった……。
こいつは詐欺と言われても文句は言えん……スマヌ……スマヌ。
なお、女湯は……キャッキャウフフと賑やかだった。
今も色々会話やら聞こえてくるけど。
要約すると、ラジエルは三人の中でもダントツの巨乳で、二人で代わる代わるタッチしたり、巨乳になる秘訣やら聞き出してるらしい。
それに、ラジエルお付きの侍女さんとか、ユリアちゃんのお世話係のメイドさんとかもいるから、人数だって、軽くダース単位はいて、なんだか手狭らしい。
……つまり、壁一つ向こうはまさに楽園っ!
ああ、そっち行きたかったよぉおおっ!
切に……切にぃいいいいっ!
アマリリスの野郎……後で泣かすっ!
覚えてろよ、ザッケンなコラ!
「な、なぁ、サルガス。お前も若い10代男子として、女子の裸体とかって興味ねぇのかよ……」
こうなったら……あまり、気は進まねぇが。
その楽園を垣間見る……覗くしかねぇだろ!
嫌な話だが、ジジィの気持ちがよく解った!
そこに楽園があると解っていて、ジッとしてるなんて耐えられないぜっ!
まぁ、グラハムのジジィならノリノリで乗ってくるだろうし、リンド爺さんも真面目ぶってるけど、ジジィと一緒に、キャバクラで鼻の下伸ばしてたような不良エロジジィだって事を俺は知ってるんだ。
後はサルガス……こいつを巻き込んじまえば、オールオッケー!
どうせ、コイツだって優等生気取ってるけど、頭の中はエロいことでいっぱいだっつの!
思春期男子なんてそんなもんだろ?
ああ、こうなったら俺は……やってやるぜ!
男のロマン! 乞うご期待っ! 震えて待てっ!
「うん? 僕はそう言うのあまり興味ないかな。上級学院とかだと、同年代の男子はその手の話題で盛り上がってたりするから、解らなくもないけどね……」
こ、このっ! ……朴念仁がぁーっ!
っていうか、立ち上がるなら前くらい隠せよ! このヘボンボンがっ!
なお、俺の視点だと目の前でサルガスのナニがブランブランと揺れてるのがイヤでも目に入る。
なんだこれ?
まさに誰得……ザッケンなコラぁっ!
「おう、ジジィ……テメェもだ。何しっぽりと静かに酒なんざ飲んでんだよ……。ここに来て、紳士気取りとからしくねぇじゃん。せっかくだから、いつもみてぇに「そこに女体があるからっ!」とか言って、堂々と覗きでも何でもすりゃいいんじゃねぇの? なぁに、たまには、俺も付き合ってやるさ……。殿下はそこら辺で、まったり景色なり星空でも、眺めてりゃ良いんじゃねぇかな。まぁ、優等生気取りも程々にしねぇとだがね……」
そう言って、グラハムのジジィに目線を送ると、気まずそうに視線を逸らされる。
「いや、確かにそれは惹かれるのじゃが……殿下にちょっとばかり釘を刺されておってな……。まぁ、ワシもこんな所に来てまで、無粋な真似をするつもりはないからのう……」
……なん……だと?
このエロジジィが真面目? これは……明らかに異常だ。
「……なぁ、サルガス……お前、ジジィになんか言ったのか?」
「別に……僕はただ二人にこう言っただけだよ。「覗きとか不敬だからね」って」
そう言って、フフンと冷笑を浮かべるサルガス。
……怖い。
ああ、うん……まじでコイツに逆らっちゃ駄目だ。
ラジエル……お前のお兄ちゃん怖すぎる。
だから、そのブランブランはしまえよ……ふぁっきゅーっ!
かくして、俺もマッタリモード。
いい感じにビーチチェアみたいなくつろぎ椅子もあるから、ごろりと横になる。
ふっ、温泉で温まった身体を冷たい風がクールダウンしてくれるぜ。
まぁ、毛皮ビチョビチョだから、こまめに温まりに行かないとだがね。
なお、上がる時は毛皮がなかなか乾かないし、石鹸で無造作に洗ったりすると、ゴワゴワになるから、ナックル専用シャンプー&リンスも必須。
まぁ、そんなものが普通に売ってるってのが、帝国って国のお国柄なんだがね。
別に俺は風呂はむしろ、好きなんだが、ナックルって人間よりも風呂上がりがちょっとばかり、面倒なんだよな……ここら辺は全身自前毛皮故の面倒くささ。
もっとも、お風呂上がりに毛皮乾かしてくれたり、ブラッシングなんかは、ユリアちゃんがいつもやってくれるんだがね。
あの子、自分の着替えは人任せなのに、俺の毛皮の手入れは率先して自分でやるし、もうスッカリ手慣れたもの。
もうね! ユリアちゃん……ホント、俺の嫁です。
けど、今日はこの調子だとそれもナシ。
あれ、ユリアちゃんだけでなく、メイドさんも三人がかりくらいで手伝ってくれて、なんつーかハーレムみたいで、いい気分なんだがなぁ……。
まぁ、どのみち……お屋敷に帰ればユリアちゃんの裸なら見放題だしねぇ……。
日々成長してるから、今は幼女ボディでもそのうち美少女ボディにクラスチェンジ。
ユリアちゃん係のメイドさんもお風呂では当然、裸だから、それだって毎日見放題だしなぁ。
どのみち、お風呂から上がって、布団に入れば、今日も今日とて美少女の抱き枕。
それでいいじゃん……ああ、でもなぁ……。
旅先、それも露天風呂……いつもとちょっと違うシチェーションで、ダース単位の女子の裸体に囲まれ……たかった。
無念だ……実に無念だ。
何より、温泉回を期待してた皆を裏切ってしまったこと。
慚愧に堪えない……スマヌ、スマヌ……。
でも、奇跡ってのは起こるものなんだ。
俺は今夜、それを思い知ることになるのだった。
「あああーっ! ユリア、もう我慢出来ないですっ! 」
なんか、唐突にそんな叫び声が男湯と女湯を区切る壁の向こうから聞こえてきた。
「クロイノ様分が切れましたぁああっ! 早く……早く補給しないとっ! ユリア、行っきまーす! えっと、ここに隠し扉があるのはお見通しなんです。……クロイノ様、待ってて下さいね! 今すぐ、正妻であるこのユリアがお側に参りますからねっ!」
「あ、ちょっと! ユリアちゃん、せめて、タオルくらい身体に巻いて下さい! と言うか、それ……多分従業員用ですから! 無理やり、開けちゃ駄目ですって!」
「いえ、私には解ります! この扉を見つけたものには、自由に行き来する権利が与えられると……そう言う意味なんですよ!」
「いやいや、それ隠してるんじゃなくて、雰囲気を守る為に目立たないようにしてるってだけなんじゃない? と言うか、ボクは良く解らないんだけど、そこって自由に行き来して良いもんじゃないんじゃないかな? ユリアちゃん、女の子なんだし、男の人のお風呂に乱入とか駄目だと思うよっ! ちょっと冷静になって!」
「いえ、もう我慢の限界です! 禁断症状が出そうです! ユリアにはクロイノ様との触れ合いが必要なんです!」
……そんな会話が聞こえてくる。
どうも、ユリアちゃんの我慢が限界突破して、ラジエルとミレニアムちゃんが頑張って止めようとしてるみたいなんだけど。
……ユリアちゃんは止まらないっ!
バキバキと言う音がして、巧妙に隠されてた従業員用っぽい隠し扉が開かれる……と言うより、ユリアちゃんに蹴り壊されたっぽい。
「クロイノ様ーっ! お待たせしました! ユリア、推参ですっ! ユリアが来たからにはもう大丈夫です!」
……ユリアちゃん登場っ!
扉を蹴破った勢いのまま、クルクルズザーって感じで、空中で軽く一回転して着地して、そのまま身構えつつ、周囲を警戒してる辺り、さすが生粋の戦士。
でも……文字通り全裸状態でそんなアクロバットアクション。
アウチ……せめて……タオルくらい装備してきて欲しかったよ!
ジジィ共がいた事を思い出して、慌てて振り返ると、サルガスがジジィ二人を隅っこに連行して、その間に割り込んで、ヘッドロックしつつ背中を向けるのが見えた。
サルガスナイスフォローッ! そう言う真面目なとこ好きだぜ?
大丈夫! 謎の湯けむりが仕事してくれてたし、明かりも小さなランタンと、月明かりしか無いから、ギリギリセーフだったからっ!
実際、俺も逆光だったから、シルエットしか見てないしっ!
……うしろから、バスタオルを持ったラジエルが慌ててついて来て、いそいそとユリアちゃんにタオルを巻いてくれる。
ただし、ご本人も全裸……むむっ! なんだラジエル! そのデカくてけしからんのはっ!
服着てるときは、そこまで主張してなかったんだが、あれでもガードルかなんかで押し込んでたらしい。
推定、EだかFとかそれくらいはあるようなダブルデカメロン!
女湯から追いかけてきた侍女さんが、慌ててラジエルにもタオル装備してるけど、手遅れ。
俺、皇女殿下のデカ乳、ガッツリ見ちまったよ。
……不敬で誠にスマヌ。
って言うか、この皇女様……まじで凄い乳してるよ。
いや、俺が見た中で一番でかい! 例えるならまじでデカメロン!
たゆんったゆんっじゃありませんか……ナックルの俺ですら、ちょっと立ちくらみがしたよ。
マママ、マーヴェラスゥウウウッ!
我! たった今この瞬間より、第二皇女ラジエル殿下に永劫の忠節を誓うものなりぃいいいっ!
まぁ、これくらいならセーフだよね。
そこまで具体的に描写してないしね!
ちなみに、私はオクトラではミスターマーヴェラスが一番好きです。




