表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界ネコ転生! ゲーム世界に転生したら、ネコでしたが、くっそ強いロリ美少女のお供として、俺は生き抜くっ!  作者: MITT
おまけ外伝シリーズ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

269/276

閑話休題Ⅱ「割とドタバタなアリシュエルの日常」②

「大聖女アリシュエル様、メルシナ親衛騎士! お二人共お久しぶりです! お二人はとても仲が良いと聞いていましたけど、ホントに仲が良いのですね!」


「いやぁ、ラジエル様。アリシュエル様ってヤバいくらいに肉食系なんですよ。けど、助かりました……危うく、寝室で美味しくいただかれるところでしたよー!」


 例によって、空気の読めないメルシナの爆弾発言!


(ちょっとっ! メルシナ……そんな事、ラジエル様に……)


 さしものアリシュエルも気まずさのあまり、そこから逃げ出したくなる位には、メルシナの発言は爆弾だった。


「……えっと……一緒にお食事でもするところだったのです?」


 不思議そうにラジエル。

 念のために、言っておくが、彼女は至って真面目かつ、この反応は天然だった。


 二人のイチャつきや会話を聞いた上で、平然とこう答えるのだから、むしろ彼女のほうが聖女だった。


 アリシュエルはどちらかと言うと、聖女ではなく、性女様と言うのが、駐留軍の女性士官や配下の女性神官の評判だった。


 もっとも、男性陣は下手に近寄ると噛みつかれるということで、あんまり触れたくない人ナンバーワンと言う評価なのは、半ば自業自得と言えたが、当のアリシュエルはそんな評判、あまり気にしていなかったし、遠くから眺める分には普通に美少女なので、ある意味得をしていた。

 

 もっとも、性女様云々は、悪評というより、どちらかと言うと好意でもあり、アリシュエルにモノにされてしまった者はかなりの数になっており、アリシュエルの測り知らないところで、アリシュエル親衛隊のようなものが発生していると言うのは、知らぬは当人ばかり……と言ったところだった。


 いずれにせよ、今のラジエルの言葉は、ラジエルがその手の話に大変無知である事を示しており、むしろ、アリシュエル自身は自らが汚れた存在になりつつあると、自覚させ、大いに落ち込むのだった。


「はぁ……あ、相変わらず、すっとぼけた娘よね……。それ天然なんでしょ? むしろタチ悪い。はいはい、そう言う事にしときますわー」


「……あ、あの……なにか失言でも? お気を悪くしたのであれば、謝罪いたします……」


 そう言って、頭を下げようとするラジエルをアリシュエルは慌てて止める。

 何故なら、すでに騒ぎを聞きつけて、大勢の帝国軍の将兵たちが続々と集まりつつあったのだから。


 そんな場で、ラジエルに頭を下げさせるなんてやらかしたら、アリシュエルもあっという間に針のむしろ状態になる……その程度の事、解らないアリシュエルでもなかった。


「結構よ! そもそも、いい? ラジエル様……貴女ともあろうものが気軽に頭なんて下げちゃ駄目よ?」


「そ、そうですよ! 悪いのはこの肉食獣なんですから! むしろ、ここはアリシュエルが跪いて、調子こいててすみませーんって謝るべきです! ですよねーっ! そう言う訳でアリシュエル様のジャンピング土下座! 見てみたーい! レッツ土下座! 土下座っ!」


 絶大なる味方の来訪で、勢いづいたのか見るからに調子に乗っているメルシナ。

 それを見て、アリシュエルも呪い殺すかのような目で睨み返す。


(調子乗んな……このぽんこつ女!)


 くらいのことは思っていたのだが、それを口に出すほどアリシュエルもアホではなかった。


「ぐぬぬ……で、アンタがなんで、こんなところにいるのよ! ……つか、しばらく空にいるんじゃなかったの? そもそも、アンタもタレリアへ留学とか色々あったんじゃないの?」


 とりあえず、メルシナの言葉を無視してラジエルに詰め寄るアリシュエル。

 そこで、間に割っているくらいの度胸があれば、メルシナも大したものだったが。


 アリシュエルの方が一手早く、むしろ、ドーンと押しのけられる格好になってしまっていた。


 メルシナのこう言う所がまさに小物たる所以だったのだが。

 まぁ、パッと出キャラなのは事実なので致し方しと言ったところでもあった。


「あ、はいっ! タレリアの留学の件は、さすがにそれどころじゃなくなったって事で、キャンセルってことになってしまったんですね。残念です……でも、アリシュエル様は、この事はすでにご存知のはずですよね?」


「まぁね……。タレリアも人材不足って事はうちと変わり無いのよね……。魔法学院も今や講師も生徒もほぼ全員地上探索に動員されてるから、学院に行っても建物と用務員くらいしか残ってないって話……。そりゃ、そんなんじゃ皇女様の留学もキャンセルにもなるでしょ」


 まぁ、この辺りは名誉学長のリンド・シュバルツァーの鶴の一声で、学院生の臨時学徒動員が決まってしまい、なし崩し的に動員されたのだが。

 志願者を募った所、学院生のほとんど全員が挙手してしまい、そう言う事なら、もうまとめて総動員でいいじゃんって事で、こうなってしまったのだった。


 何より、先のボルテクス・ノヴァとの戦いにおいて、魔法騎士のミレニアムが最前線で戦い抜き、ボルテクス・ノヴァの撃破に大きく貢献したという事実は、彼女の複雑な事情を差し置いて、タレリアの英雄として祭り上げるのに、十分すぎる戦果だったのだ。


 そんなミレニアムが、魔法騎士のエース格として、地上でも次々と幾多もの巨大魔獣を撃破していった事で、その義父たるリンド・シュバルツァーの名声や発言力も強化されたのだった。


 しかしながら、当然ながらこのままではよろしくないと判断したタレリア各地の貴族達は、むしろタレリアの次代を担う魔法学院生達をその助勢とすることで、バランスを取るべくこぞって後押ししたと言うのも大きかった。


 要するに、タレリアの権力闘争のとばっちりで、魔法学院生達は危険極まりない地上の戦場へ送り込まれたようなものだったのだが。


 アスリールやルイジーと言った今やトップクラスの魔法騎士となった者達も、魔法学院の関係者と言え、そんな彼らとともに肩を並べて、地上の最前線に出る。


 それは大変な名誉であり、誰もが率先してその助勢となるべく名乗りを上げた。

 端的に言えばそう言う状況だった。


「ええ、よくご存知で……。今や、タレリア魔法騎士団は地上攻略の尖兵となっていますからね。私の留学の件もそれどころじゃないというのは、よく解りましたからね。ただ、おかげでとっても暇になってしまったんですよ」


「なるほど、大いに納得だわ……つまり、絶賛ニート中って事なんでしょ? と言うか、この時点で嫌な予感が……」


「うーん、ニートってナニ? って思うんですが、なんとなく言いたいことは解りますね。とにかく、私も手が空いてて結構暇だったんで、なにか出来ることはないかって、お母様に詰め寄ったら、そう言う事なら、お城に引き籠もって遊んでるくらいなら、地上の様子でも見学して来るように命じられて来たんですよ」


「なるほど……そう言うことね。と言うか、陛下……むしろ、ノリノリで送り出してくれたんじゃないの? なんだか、すごい勢いで飛行戦艦やらなんやらが押し寄せてきてるんだけど……これ、何事?」


 かつてのラジエルは、サルガスのおまけ。

 存在感ゼロの人形姫とも揶揄されていたほどで、誰もマークもしておらず、積極的に行動をするとはとても思われていなかったのだ。


 そんな彼女が自分から、なにかやらせろと皇帝に詰め寄る。

 

 皇帝陛下にとっては、喜ばしいこと以外の何物でもなく、大々的なバックアップと共に送り込んできたと言うのは、次から次へと着艦してくる帝国軍の飛行戦艦や、それらから吐き出される大勢の文官や盛大な物資、コレでもかと言うほどの勢いで飛行船から秩序立った動きで下艦し整列し、今にも発着場を埋め尽くしそうになっている夥しい数の帝国兵、そして、凄まじい数の軍属ナックル達の様子を見れば明らかだった。


 つまり、一歩引いた位置でバックアップに徹していた帝国が本気を出した。

 この状況はそれを意味していた。


「そ、そうですね……。最初は、高速飛行船一隻でお忍びでって話だったのに、いつの間にか随伴って事で、私の名を冠した大艦隊が編成されてしまって……。すみません、すでに連絡は行ってると思ったんですが。思った以上に混乱しているようですね……。か、格納庫や係留索……足りますかね?」


 そう……非公式ながら、この総勢100隻あまりにも達する帝国の大艦隊は、またの名をラジエル親衛艦隊とも呼ばれていた。


 ボルテックス・ノヴァとの決戦では、帝国艦隊はやられ役の如く、雷龍の群れにあっさり蹴散らされ、全艦隊の7割近くを失う壊滅的損害を被ったのだが。


 地上攻略自体は、タレリアや聖国に華を持たせる形で、自分達は物資提供や後方支援に徹しているようにみせかけて、その実、急ピッチで帝国艦隊と帝国軍再編成が進められており、その艦艇総数はもはやかつての帝国軍を上回るほどの艦数となっており、この大艦隊ですら、氷山の一角と言えた。

 

 そんな大艦隊がラジエル共々地上へ降下してきた。


 まさに、風雲急を告げると言うべき状況だった。


「殿下! 申し訳ないです! た、確かに聞いていた以上の大部隊のようで……。一体何がどうなって、こんなに増えたんです? なんだか、桁が一つ違わないですか?」


「そうですね……。出発に当たって、壮行式で、白の騎士リャン・クー・リン様を見習って、我と思わんものは我と共に赴かん……そんな感じの演説をしたんですが、とても盛り上がってしまって……。地上派遣艦隊の参加希望者がとんでもない数になってしまったようなんですよ……」


 元々、ラジエル自体、雷龍の群れに帝国艦隊が敗退すると言う国難にあたって、最前線に赴き、不退転の決意を示す事で、士気崩壊しかかった帝国艦隊を鼓舞し立て直し、最終防衛ラインで雷龍の群れを撃退したと言う話になっており、帝国軍将兵達からは絶大な支持を受けていたのだ。


 実際の所、雷龍の群れは、クロイノの襲来で大慌てで取って返したと言うだけで、ラジエル率いる最終防衛艦隊の戦果は、第一陣を粉砕した程度であり、その上、その時点で壊滅的損害を受けており、ラジエルの演説も思いっきり女子御用達小説の登場人物白の騎士リャン・クー・リンのパクリ演説と言うなかなか酷いものだったのだが。


 内容自体は、状況に恐ろしくマッチしていて、その壮大な演説を聞いた帝国将兵は皆、感激のあまり号泣するような有様で、士気向上と言う面ではコレ以上ないと言うほどの名演説となったのだった。


 帝国軍将兵たちの視線では、雷龍達は第一陣と戦い相応の損害を受けていたのに、退く気など無いと言わんばかりに全艦隊で突っ込んでくるのを見て、その気迫の前に怯えて逃げ帰っていったようにしか見えなかった為、帝国軍ではもはやそう言うこととなっていたのだった。


 そんなヴォルテックス・ノヴァ戦の勝利の立役者の一人であり、帝国の英雄とも噂されるラジエルが地上親征を開始するともなれば、誰もが喜んでついていく。


 むしろ、これは当然の流れでもあったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ