第五十三話「ファイナル・シューティング」③
「へへへっ! よくご存知で……それを知ってるって事は、お前やっぱ、そう言うことか」
「……それはこっちのセリフよっ! 要はアンタもわたしもご同類……プレイヤーってそう言う事だったのね!」
「そう言う事だ。まぁ、時間があればゆっくり色々話をしたかったが、残念ながら時間がねぇ……んで、お前はどこまで知ってる? どうせ、ネタバレ承知でWikiとか熱心に見てたクチなんだろ? 例のルビーアイズへの対応だって、知ってなきゃあそこまで完璧に出来ない。となると、地上編攻略者かWikiでも見てたかのどっちかって事だろ?」
「ま、まぁ……Wiki派なんだけどね。とにかく、シナリオパターンD……確か、砂唄復活フラグと雷竜の島の地上の2つのコアを潰して、そして、その時点でなんとかって狩猟騎士が生存してるって3つのフラグで発動するパターンだっけ……。確かに他はどれも大勢の犠牲者が出たり、島が沈んたりするのよ……ね」
「ああ、そうだ。今の状況に該当するシナリオはパターンDが一番近い。となれば、パターンDのシナリオに沿って行動すれば、いいってことだ」
「そんな安直な……けど、安直と言い切れない……。そこは解るわ」
「ああ、Wiki見てたなら、お前だってプロトン・ウェーブの事は知ってるんだろ? あれでも無理と言えるか? なら、一番いい最善の方法なんてもう解ってんだろ」
その言葉を聞いて、アリシュエルも下を向いて考え込む。
そして、決意したかのように顔を上げる。
「皆、聞いて……砂唄にはプロトンウェーブって、1万キロを数秒程度で軽くかっ飛ぶ超兵器があるのよ。それを喰らえばこのボルテクス・ノヴァもイチコロ……。要するに、クロイノが言ってるのは多分、事実」
「……事実って……なんで、君がそんなことをっ! 砂唄の事なんて、現時点では何も解ってないんじゃないのかい?」
「ごめんね……。説明してる時間はないの。あんまり気がすすまないけど、そうなるとわたし達に出来ることはもう無い……そう言うことなのよ……。確かに納得だわ。残念ね……わたしの手で勝利を確実にって思ってたけど、犬死はごめんだしね……」
「ああ、そう言う事だ。お前らは地上の2つのサブコアを破壊してくれた……この時点でもう奇跡みたいなもんだし、最高の仕事をしてくれた。もちろん、サブコアは今も再生しようとしてるようだが、さすがに直ぐには治せねぇ……あと二時間はかかるだろう。これで二時間以内に中核コアを破壊さえすれば、コイツはここでおしまいってワケさ……」
「二時間かぁ……さすがに、ヴォルテクス・ノヴァの体内迷宮を二時間で踏破は無理よね……。わたし達に出来ることは……もうなにもない……か」
「ああ、お前らは自分たちの仕事を立派にやりとげたんだ。後は……ここから先は俺たちの仕事だ! いいか? ここがお前らが生き延びる最後のチャンスなんだ。お前達には、まだまだ地上平定って大事な仕事が残ってるんだ。ここで死なせる訳にはいかねぇんだ……」
「……はいはい、状況は解ってるから、ここで撤退に異論はないわ。けど……シナリオパターンDも犠牲はゼロじゃなかったでしょ?」
「ああ、流石に5000kmの超長距離砲撃となると、最終誘導……マーカー役がいる。アリシュエル……実際、シナリオパターンDではマーカー役がいただろ? あいつと同じことをやらねぇといけねぇだろうな」
「わ、わたしは……Wikiで大筋読んだ程度で、実際はそこまで行ってないんだけど……えっと確か、負傷した狩猟騎士が盛大に死亡フラグ立てまくって、俺ごと撃てー! ってやるんだっけ?」
「概ね合ってるかな? オスカー・ヘンドリックって勝手に主人公をライバル視して、時々一緒に戦ったりもしてくれた狩猟騎士がいるんだが。そいつは雷龍の島第二次攻略戦で致命傷を負って、どのみちもう助からねぇってことで、マーカー役を買って出て……コアの射線上でド派手な魔力ぶっ放して、砂唄にそれ目掛けて撃たせて……もろとも派手に散るって訳さ」
「ふん……。そうなるとアンタがそのオスカー・ヘンドリックの役をやると? なにそれ……わたし達には逃げ帰れって言っときながら、自分だけカッコつけて派手に散るつもり? そんなのいい迷惑なんだけど」
「まぁ、似たような事はやるつもりだが……それだけじゃねぇんだ……。なぁ、シナリオパターンDの展開……どんな展開になるか知ってるだろ?」
「……砂唄とヴォルテクス・ノヴァの撃ち合いだっけ? メインコアだけになって、完全復活してなくても、それくらいは出来る……のよね? 結局、砂唄とボルテクス・ノヴァは相討ちになる……確か、そんな展開なのよね」
「ああ、ヴォルテクス・ノヴァはプロトン・サンダー……要は荷電粒子砲での反撃の為に停止してただろ? 実を言うと反撃のその瞬間こそが超遠距離射撃の狙い目なんだ……だが、正面切ってまともに撃ち合ったら、相打ちになって砂唄も沈む……俺としてはそれは出来れば避けてぇ」
「……要するに、アンタ……盾役とマーカー役を兼任するつもり? それこそ、100%死ぬでしょ……いくらアンタが最強のドラゴンだって、そんな超兵器の撃ち合いの真っ只中に手を出すとか……」
「ばぁか! 俺は死なねぇよ! 俺を信じろ! 策だってあるんだ……。これでも俺はかつて、ハンターナイツのトッププレイヤーなんて言われてたんだ。それにこの俺の力……まぁ、間違いなくこの世界、最強の力ってところだからな。なぁに、なんとかなるって!」
「……ホントに? わたし達を追い返すために、適当なこと言ってない?」
そんなアリシュエルの言葉に、クロイノは何も応えない。
実際のところ、生還の可能性は彼自身も限りなくゼロに近い……そう考えていたのだ。
だが、その事を悟らせる気はなかったし、悟られていたとしても、無理を押し通す……そう言う心積もりだった。
「……事情は解った! けど、君自身がマーカーになるなんて、無茶は許容できない。ボクらの事は構わなくていい。その最後のコアの破壊に全員で挑む……。さすがに全員生還は厳しい……そんなことは承知の上! ここまで来たら、最後までやりとげるっ! それはここに居る全員の意志だ」
「そうよ……! わたし達だって、アンタが居なかったら、最初のとこであっさり全滅だったわ。だからこそ、アンタ一人が犠牲になってとか……やっぱり納得できない! 何か……方法があるはずよ……全員生き延びるグッドエンドへの道が……」
「……いや、納得してくれ。この状況……もはや、何の犠牲もなく勝てるほど甘い状況じゃねぇんだ。とにかく、話はこれまでだ……砂唄は大気圏を突破して、すでに宇宙まで出たようだ……。さすがユリアちゃんだ……まともに説明する時間もなかったが、どうやら砂唄を制御して、この可能性にも気づいてくれたってことだな。さすがだな……」
「待ってくれ! そうなると砂唄はユリアちゃんが動かしてるってことなのかい? なんで、彼女がそんな真似を……」
「いや、実際に動かしてるのは多分メルシナだろうな。あの娘……とんだ伏兵だったぜ。この調子だと土壇場で覚醒したとか、そんなところだろうな……こりゃ、確実に流れ来てるな! くっくっく!」
「はぁ……何だか知らないけど、わたし達の知らないところで、見も知らぬチートキャラが覚醒とかそんな展開になってて、あのユリアちゃんもしっかり関わってるってことなのね。……ここに来て、結局ユリアちゃんかぁ……。なんと言うか、格の違いを見せつけられたような気分よね……」
「そうだな。あの娘こそ、主人公ってとこだな。ああ、そろそろ始まるぜ? いくら決死の覚悟を決めてても、超兵器の撃ち合いに巻き込まれて死ぬとか不本意だろ? いいから、ここは全部まとめて、この俺に任せて……お前らは……生き延びるんだっ! この世界の……希望はお前らに任せるっ!」
そんな覚悟を決めた声色を聞いて、誰もがクロイノの本気を理解した。
けれど、そう言われても尚更、そんな男のために何か出来る事はないか……そう思うのもまた共通した思いだった。
あと一万文字くらいで完結予定!
もう下書きレベルで最後まで書き終わってるんで、このまま最後までやります!
震えて待て!(笑)




