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異世界ネコ転生! ゲーム世界に転生したら、ネコでしたが、くっそ強いロリ美少女のお供として、俺は生き抜くっ!  作者: MITT
最終章「終の章」

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第五十一話「それぞれの戦い」③

 同時刻。

 

 ミレニアム達は、空を埋め尽くす程の凄まじい数の雷竜の雷撃を対雷撃用の無数の氷柱を避雷針とする魔術で凌ぎつつ、ジリジリとコアへと近づきつつあったのだが。


 最後の関門と言える群れをなした雷竜の死物狂いの総攻撃の前にジリ貧……進退窮まった状況になっていたのだった。


 けれども、唐突にコアを守っていた雷竜達がミレニアム達への攻撃を止めて、まったく別の方向へ殺到しているのをミレニアム達は呆然と眺めていた。


「な、何が起きてるんだ……雷竜の攻撃が……止まったのか?」

 

 ……遠くで響く地面を揺るがすほどの轟音……そして、地面から空へと立ち上る白い煙。


 けれど、それっきり雷竜達はどっちに行っていいのか迷っているように、ウロウロと散発的な雷撃を仕掛けるだけで、明らかに混乱しているようだった。


 そんな混乱の中……今度は雷竜の群れに黒い巨大なドラゴンが襲いかかって、次々と撃ち落としていき、その混乱に拍車がかかっていた。


「……グレン……君は何が起きてると思う? それに……あの黒いドラゴンは……一体なんなんだっ! それになんて圧倒的な強さなんだ……あの雷竜をあっさりと叩き落としてるし、雷撃が何発も直撃してるのにものともしてない……」


 まさに圧倒的強者……黒いドラゴンの戦闘力は雷竜を軽く凌駕していて、文字通り片っ端から始末していっていた。


「某にもさっぱり……。いや、ですが……これは好機でござろうっ! さっきまで頭もロクに上げられなかったのに、もう目標のコアまで素通していけそうです……皆のもの! あと一歩! 厄介だった雷竜共もあの新手の黒いドラゴンの相手で手一杯。今のうちに……取り巻きの雑魚どもを某達で押し返して、突破口を開くでござるよ!」


「ああ、雷撃さえなければ、こっちのものだ! ゆくぞっ! お前達……俺に命を預けてくれ! ミレニアムちゃん……ここは俺たちに任せて、先に行ってくれ!」


 独眼狼のリーダー、バソリが吠えると大斧を振り回して、ジリジリと迫りつつあった巨大な蟻を叩き切る!

 

 さらに、独眼狼のメンバーが続き、ミレニアムの道を作るべく、獅子奮迅の戦いを始める。


「そうねーっ! 今がチャンス! と言うか、ちょっと空に上がって様子見てみたんだけど、なんだか知らないけど、あっちの方でも誰かが派手に戦ってるような感じで、雷竜もあっちに殺到しようとして集まったところを一網打尽にやられた……そんな感じみたい。ミレニアムさんは、何か聞いてる? あのドラゴンも味方なのかしら? 確かに敵の敵は味方って言うけど……ちょっとあれは尋常じゃないよね……」


「あのドラゴン……炎龍との戦いで見たヤツ……邪毒龍とよく似てる。もしかしたら……あれは味方……そう言うことなのかな? けど、ヤツは確実に死んでいたはず……」


「……某達は、噂程度でしか知りませんが。確かに帝都ダンジョンの炎竜に挑みかかって、相打ちになった黒い瘴気をばら撒くドラゴンがいたと言う話は聞きましたな。味方……だとすれば、心強い限りですな。この状況……むしろ、あれを味方として考えて、連携を考えるべきかもしれませんな」


「そうだね……それに……そうかっ! コアは始めから二つあったんだ……。まったく、結局ボクらだけじゃ、始めから勝機なんて一つもなかったんだ……けどっ! 戦ってるのはボクらだけじゃないっ! となると……いいね! 希望が出てきたかもしれない」


「そうですな……案外、それを察して、どこぞの助っ人が参戦してくれた。そう言うことなのかもしれんですな……。ですが、これも運命の風の導きというヤツです。かの者達の思いに応えるためにも、某達は某達の戦いを……やり遂げるべきですぞ! ここは誰もが共に手を携えて、運命にあがらう……まさに総力戦……ですな。なんともやり甲斐がある戦ですなぁ……」


「ああ……まったくだ! どこの誰かは知らないけど、これは助太刀に感謝しないとだね。確かに、ここは千載一遇の好機……一気にカタを付けて、むしろ、向こうに助太刀するしようっ! 総員突撃準備……お互いを守り、敵を殲滅し……皆、無事に帰ろうっ! 皆、行こう……」


「「「「「明日へっ!」」」」」


 最後の……戦いが始まった。


 ……無数の雷竜相手に無双するクロイノ。 

 雷竜の雷撃自体はその強固な鱗でまったく寄せ付けていないのだが。

 クロイノはたった一人。


 空の上には敵しかいない……それが現実で、状況は明らかに多勢に無勢だった……。

 雷竜もまだまだ百匹単位で残っており、頭数では圧倒的な差があった。

 

(クソッタレ! 数が多すぎるっ! けど、ここで俺が退いたら、地上の奴らがヤベェ……! ここは一歩たりとも退けねぇ……よな)


 吠える……切り裂き、叩き落として、次々と雷竜を血祭りにあげていく……。

 もはや、クロイノが倒した数は二十匹以上に及んでいた。

 

 それでも相手はまだまだ大量にいて、死物狂いになって、次々と襲いかかってくる。

 彼らにとっても、ここは絶対に退けない最終防衛ラインなのだ。


 まさに、双方必死の戦い……互いに総力を尽くした戦いだった。


(クソッタレ! 帝国軍の残党を追撃してた雷竜共が戻ってきやがったのか……こいつら、一匹一匹は雑魚だが、この数……いくら殺っても切りがねぇぞっ!)


 もちろん、フルブラックの撒き散らす猛毒は容赦なく雷竜をも侵していくのだが。

 猛毒に晒されながらも、雷竜達は全く怯む様子がなく、クロイノは最大級の敵対戦力として、完全にマークされているようで、雷竜の集中攻撃に晒されていた。


 そんな状況にさしものクロイノも焦りを隠せないでいた。


(くっ……誰でもいいから、ちょっとくらい援護くらいしてくんねぇかなぁ……。まぁ、こんなナリじゃ無理か……。せめて、何人か理解者がいてくれれば……)


 不意打ちでかなり数を減らしたものの、すでに当初の混乱はなく、雷竜達も統制を取り戻しつつあった。


 闇雲にクロイノに近づくのではなく、隊列のようなものを組んで、前列はクロイノの接近を阻み、後列に集まった雷竜達は雷撃を束ねて、一撃でクロイノを葬るべく、お互いの雷撃を重ね合わせてチャージを始めていた。


(クソッタレ! あれは、重束雷撃っ! いくら俺でもあれを食らったらやべぇぞっ! てめぇらっ! そこをどきやがれーっ! やらせるかーっ!)


 クロイノが取れた戦術は唯一つ……闇雲に雷竜の後列集団目掛けて、ブレイドを放ち、その後に突っ込む……だったが、前列の雷竜達は敢えて、クロイノのブレイドを体を張って防ぐことで、それを無力化し、その上でクロイノに複数で一斉に噛み付くことで、その動きを止めにかかる。


 もちろん、猛毒を持つフルブレイド・フルブラックに噛みつきなど、自殺行為で噛み付いた雷竜は次々と猛毒に侵されて、あっけなく即死してバタバタと墜落していくのだが……。


 時間稼ぎとしては……それで十分だった!

 後列の雷竜達は中には自分の雷撃に耐えられず、息絶えるものも出ている有様ながらも、チャージは完了し、味方をも巻き込んで必殺の雷撃を放とうとしていた……。


(クッソたれ! 間に合わねぇええええっ!)


 けれども、唐突に地上から無数の炎の槍が打ち上げられ、チャージ中だった後列の雷竜が次々撃ち落とされていった!


「……見知らぬドラゴンさん、アリシュエル様が援護しろって言うから、援護してさしあげましたわよっ! それにしても、雷龍と言えど意識が空に集まってるところの不意打ちには、案外脆いものなのね……オーホホホホッ! しかも、どうやら溜め込んでた雷撃が暴発して、ちょっとした大惨事ってところかしら! 奇襲大成功ですわーっ! 魔法騎士を……この私、アスリールを舐めないでくださいましーっ!」


 クロイノが地表を見下ろすと、地面に空いた大穴から飛び出してきた全身真っ赤のド派手な魔術師が高笑いをしていた。


 彼女が言うように、雷竜は雷撃のチャージ中だったのだ。

 その状態で、下からの攻撃を浴びて、直撃……或いは、とっさに避けた結果、密集していた雷竜同士が接触。


 まるで連鎖誘爆するように、チャージ中だった雷竜は揃いも揃って、自らの雷撃の暴発に巻き込まれて、甚大な被害を受けていた。


(あいつ……あの時のド派手なネーチャンじゃねぇか! なんでこんなところにいるんだっつーのっ! だが、ありがてぇ……へへっ! 雷竜共……固まりすぎて、自滅してんじゃねーか……ああなると、哀れなもんだな)

 

 更に、クロイノの周りに群がった雷竜も次々と正確に頭を撃ち抜かれて、落ちていく。

 もうひとり……緑色の装束の弓を持った男の仕業のようだった。


「ソルバージ卿、貴方まで来なくても良かったのでは? それにあのドラゴンが味方とは限らないのではなくて?」


「いや、ここであのドラゴンがやられたら、こっちも危うい。これは合理的な判断と言うヤツだ……アスリールくん、見給え。どうやらあっちの連中もこっちの加勢に加わってくれるようだ。なるほど、向こうもこの場の最強戦力……黒いドラゴンの支援が最善手と判断したのか……」


 更にミレニアム達のいた方向からも、無数の巨大な火球や氷柱、雷撃が殺到し、雷竜の群れに次々着弾し、露骨にその数を減らしていく。

 

 雷竜ももはや統制どころではなくなり、一気に混乱を来していた。


「ですね……しかも、この距離で当ててくる上に、一発一発が凄まじい威力ですね。一体、何者なのでしょう……噂のミレニアムさん……なんですかね」


「いや、この術式は私達、魔法騎士とは明らかに別系統のようだ……。亜人の使う精霊魔術……だと思うんだが、威力がおかしい。なんにせよ、味方にとんでもない実力者がいるみたいだね。まったく、優秀な味方ってのは援護もやり甲斐あるね。ドラゴンも持ち直したようだし、これは……行けるぞっ! アスリールくん、ドラゴンを支援しつつ、ひとまずこの雷竜を殲滅してしまおう!」


 次々と咥えられる支援攻撃に、クロイノも思わず相好を崩す。


(……へっへっへ! てめぇら、あんがとな……。感謝の気持ちは生き残ったら、存分に伝えるとするぜ……! こうなったら、雷竜共! 俺のファイナル決め技……メガクラッシュ・ブレイド! こうなったら、出し惜しみはなしだ! 全員まとめてくッたばれぇええええッ!)


 アスリールとルイジー、ミレニアム達が放った援護射撃による混乱で出来た隙間を縫って、雷竜の密集地帯にクロイノが突っ込むと、その全身に纏った刃を一斉に放った!


 例えるなら黒い花火。


 全身のブレイドを一斉に放つクロイノの最大攻撃は、壊乱しかけた雷竜の群れに、トドメを刺すのに十分だった。


「ははっ! さすが……邪毒龍。あれだけいた雷龍が一瞬で壊滅なんて……。まったく、あの時死んだように見せかけて、ここ一番に駆け付けてくれたとか、何ともカッコいいね……まるで、どこかの誰かさんみたいだ」


 思わず、ミレニアムは笑みを押さえられずにいた。


「……まったく、さっきはさすがに危なかったようですが。向こうの連中も相当な激戦だろうに……良く支援なんて出来ましたな……。ですが、あの状況であのドラゴンが落とされていたら、我々も終わりでしたからな……。と言うか、アリアーナ殿……某、完全に騙されておりましたぞ。なんですか、ありゃ? 魔法騎士でもないのに、雷竜が一発で沈む大魔法など……」


「えへへーっ! 言われたとおり、支援攻撃完了ーっ! やっぱり、支援攻撃もタイミングを合わせると凄い戦果でるねっ! アリアーナ……がんばっちゃいました! グレンさん、褒めて褒めてーっ!」


 ……黒いドラゴンを支援した特大火球や無数の氷柱など大魔術を連発していたのは、彼女だった。


 見た目は子供で言動も幼い為、誰もが彼女を子供扱いするのだが。

 その実、彼女は軽く数百年の歳月を生きる高位精霊術士であり、その従属精霊達はどれもこれも上位精霊と呼ばれる人間の魔術を遥かに凌駕する魔術を使う化け物揃い。


 そんな物を使役できるアリアーナの実力は、察して余りあるものであった。


 ……普段は、イゾルデ達の顔を立てているのか、本気を出すことなどほぼ無く、戦いになっても逃げ惑うだけなのだが。


 戦いで彼女が傷を負うことなど、一度たりとも無かったし、彼女が本気を出せば、雷竜がダース単位で駆逐される……それは紛れもない事実だった。


「あ、相変わらず、アリアーナの本気はヤバいね……。ごめん、留守番とか押し付けちゃって……連れてきて……正解?」


「ふっふーん! むしろ、私が居ないと、イゾルデ達ってあっさり死にそうで、心配だったんでついてきたんですよ! 悠久の翼の秘密兵器……このアリアーナ……偉いと思ったら、めちゃくちゃ頭、撫でてください!」


 なお、この悠久の翼……全員がレベルキャップが高い亜人であることも手伝って、その大半がレベル100超えと言う恐るべき実力者達でもあった。


 その中でもこのアリアーナはトップクラスの高レベル者で、レベル135と言うサーシャ辺りに匹敵する最大戦力と言えた。


 そんな最大戦力を留守番として、置いてこようとしていたのだから、さすがに過保護と言われても文句は言えなかったのだが。


 そこら辺は、アリアーナ自身が子供扱いされて、保護されると言う立場が気に入っていて甘んじているだけの話で、本来は保護されるようなか弱い存在でもなんでも無いのだ。


 ミレニアムも……自分の見立てが間違っていたことを認めざるを得ず、思わず変な笑いが浮かびそうになっていた。


「いや……世界ってのは広いね。今日は何度も驚かされたけど……まさに、嬉しい誤算と言うやつだね。とにかく、皆……ありがとう。それにしても、このタイミングで助っ人が次々参戦したり、味方が思っていた以上に強かったとか、色々ちょっと出来すぎてるな……けど、こうなってくると、こっちは一撃で決めないと……だよねっ! グレンさん……イゾルデさん、すまないが、後ろは任せた……ここはボクが……決めてみせるっ!」


 不敵に笑って、一気に飛び上がって距離を詰めるミレニアム。


 その目前には、雷光を纏う巨大な繭のような物体が鎮座していた。

 ミレニアムが必殺の一撃を放つべく、詠唱を開始するなり、一手早く雷撃が放たれる!


 そして……それは一瞬で彼女の身体を貫いたっ!

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