幕間「とある師弟の語らい」
『……ねぇねぇ、なんで、あんなモブキャラがわんさか生き残ってるの? 我、意味分かんないだけど……。どう言う事? 我の見た未来では彼女たった一人で特攻して、失敗……それがなんか全然違う展開になってるんだけど……こんなの、誤差とか偶然じゃないよ!』
『漆黒卿……貴方の未来予知って、案外ポンコツなんじゃないですかね。そもそも、あの子達は相当強いよ? 誰かさんの要らない手出しで、ユリアちゃんと一緒に地上種討伐したおかげで、いわゆるパワーレベリング状態になって、どうも人類最強レベルにまでなっちゃったみたいでね。おまけに乗ってた船も一見オンボロながら、タレリア最盛期の技術を惜しみなく使ったハイエンド魔導船のガランドゥ号。だからこそ、皆、しっかり生き残った……それだけの話じゃない。ちゃんと伏線はあったのよ。一応、漆黒卿の見た未来……本来のシナリオを聞いておくけど……?』
『えっと……モブ達はあっけなく全滅……。彼女は……たった一人で戦い続けて、心折れてボルテクス・ノヴァのコアの破壊は既のところで間に合わず……絶望の中、誰も看取られずに一人寂しく後悔と無念の中で命を落とし、負の存在となって、ユリアちゃんに最後の戦いを挑む……。そうなるはずだったんだけど……なんだか、どう見ても死にそうもないし、むしろ、上手くやっちゃいそうだよね? ……って言うか、光る導き手って……オレアナっ! まさか……これは君の仕業なのか!』
『さぁ? なんのことかしらね……。でも、そうね……今の私は貴方と同格の存在と言ってもいいかも……。貴方の出来ることは、もしかしたら今の私にも出来るのかも……どうなのかしら?』
『君は……我を謀ったと? 敢えて、ユリアちゃんから分離したことで、期間限定ながら我と同じ力を手に入れたとでも? まさか……我同様に、過去に影を送り込んで少しづつ、我が気づかないうちに過去の事象に干渉し、今を改編したとでも? それが……君なりの救済の道と言うことかっ!』
『あら、そうなんだ。そんな素敵な特典があったのね……。まったく、長生きはしてみるものですね……いいこと聞いちゃったっ! そう言う事なら、早速試してみますか……なるほど、こうすればいいのね……』
『ぬわーっ! まさか、我……墓穴堀った? 今の一言をきっかけに君は……我同様過去に干渉に出来ることを知って、干渉を始めた……もしかして、そう言う事だったりする? ねぇっ!』
『ぬふふー! だったらどうします? それに、そこまで動揺した貴方の顔、始めてみましたよ。どうですか、なんだか面白い展開になってきたでしょ? なるほど、なるほどー。あそこでこうして、こうすれば……答え合わせは、もう済んでるから、確かに割と簡単な話よね』
『い、いや! 甘いねっ! そもそも、コアは一つだけじゃないんだ! ミレニアムちゃん達がいくら頑張っても……結果は一緒さっ! ほんの十数人の凄腕冒険者が加わったからって、ここから逆転とか無理ゲーだよっ! 最強魔獣ボルテクス・ノヴァ……天空の覇者……コイツに勝てるような存在なんて、この世界にいるわけがないっ! 仮に砂唄を制御できても、あの砂唄は完全体じゃない……そう、人類は……ほぼ確実にっ! 滅亡するッ!』
『それはどうかしら? と言うか、ほぼ確実って100%じゃないって事ですよね? まったく、変なところで弱気なのは相変わらずなんですね。次……これは漆黒卿の気まぐれに感謝すべきよね。これは言ってみれば、最後の希望! さぁ、まだまだ旅は続きますよ! 最後までお付き合いくださーいっ!』
『だーかーらっ! 我は君に連れ回される言われはないのっ! ねぇ、聞いてるーっ?!』




