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異世界ネコ転生! ゲーム世界に転生したら、ネコでしたが、くっそ強いロリ美少女のお供として、俺は生き抜くっ!  作者: MITT
第一章「クロネコの章 クロイノ覚醒、最強ロリっ子邂逅編」

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第六話「人質救出作戦」③

「……けど、人質が居る限り、ブルックリンや味方の有力な従騎士達が身動き取れんし、本来味方の奴らを相手に戦うのは気が進まん。何より、アイツらを敵に回したままだとこっちも厳しいんだ……だから、人質を救出するってのは、最優先で何としてもやらんといかん。なぁ、ダリオ……単刀直入に言うが……手伝ってくれないか? 報酬もたっぷり払う。お前なら、三日も潜ってたんだから、道案内くらい出来るだろうし、俺と同じ覚醒種って事なら、相当な腕利きなんだろ?」


 もう、恥も外聞もない!

 俺一人じゃ、どうしょうもねぇってのは解った。


 けど、コイツの知恵を借りれば、或いは……。


「そうさなぁ……。俺もグラハム閣下には、多少なりとも恩義はある……つか、ここの奴らは皆そうだろ。あの方が領主になってから、かつては貧しかった開拓村も今や貧困とは無縁だ……重税を課すわけでもなく、何か問題が起きればすぐに対処してくれる……ありゃ、間違いなく名君だ。心情的には、お前を手伝ってやりたいってのもやまやまなんだが……実際問題、勝算はあるのか? 負け戦なんぞに、付き合う気はさすがにねぇぞ」


 ごもっともな話であった。

 けど、要するに、勝ち筋があるなら付き合ってやるって事なんだよな。


 勝ち筋を考えて、説得力を持たせるってのは……俺の仕事だな。


「勝算があるなら……そう言うことか。そうだな……質問に質問で返すようで悪いが、普通に考えて何が問題だと思う? すまんが、やるやらないの問題じゃないんだ……。俺としては、やるしかないんだ。お前が手伝ってくれなくても、俺は一向に構わん! だが、第三者の視点で何が問題なのか教えてもらえるってのは、正直助かる……それならどうだ?」


 俺がそう答えると、ダリオは大きくため息をつく。


「止めても聞かんか、まったく……。いいか? はっきり言って問題だらけだ。まず、人質を連れ出してそれから、どうするんだ? 相手にとっても、人質を取ってるのは命綱のようなもんだからな。逃がそうもんなら、全力で取り返しに来るに決まってる。今の状況では、安全な場所なんてそうねぇだろ。それに見つかって、追撃されたらどうする? 従騎士も厄介だが、あの傭兵共も相当戦慣れしてるぞ。俺とお前……覚醒種二匹がかりでも人間の戦士、それも25人なんてとても相手にできん。いいか、クロイノ、勇気と無謀を取り違えるな……覚醒したナックルを俺は何人も見てきたが、お前みたいなヤツに限って、無茶やって、あっさりくたばっちまうんだ。俺達は決して強くない……無理はするな」


 うーむ、痛いところばかりを突いてきたなぁ。


 どれもこれも問題だらけだ。


 実際問題、人質救出の何が厄介って、人質が一般人だってこと。

 流れ弾や人質のポカであっさり死ぬ。

 

 自分より弱いやつを守らないといけないって言うのは、想像以上に厄介だ。

 自分の責任範囲外で死なれかねない上に、ワンミスゲームオーバー。


 確かに、こんなの一人、二人じゃ手に負える話じゃない。


 敵の数だって、多過ぎるっ!

 ノルマ一人十殺とか、どんな無双だって話だよなぁ……。


 ダリオもベテランなだけにさすがに慎重だった。

 

 けど、この人質を取ってるってのが、ワルツ派を圧倒的に有利にさせているのだから、ここで人質を奪回できるかどうかに、この内乱の行方が懸かってると言っても過言じゃない。


 けど、勇気と無謀の取り違えか。

 俺も解っちゃいたけど、無謀な選択を平然と選ぼうとしてたとか、耳が痛い話だ。

 

 あまり調子に乗るなよって、言いたいんだろうけど……ああ、返す言葉もねぇよっ!


 ……勝利の道筋……さっぱり見えねぇよ……厳しいーっ!

 

「……クソッタレ! ぐぅの音も出ねぇよ! こりゃ手詰まりか……けど、手詰まりだからって、ここで諦めちゃ駄目なんだ……。ダリオ、すまん……お前の知恵を貸してくれ。それだけでもいい……頼むっ!」


 くそっ! 勅命騎士とか任命されて、ワルツなんか余裕で蹴散らしてーとか思ってたけど。

 考えれば考えるほどキッツい状況なんだって、解る。


「素直に人に頼って頭を下げられる。それは紛れもなく長所だぜ? だが……実際問題、こちらの戦力が足りんな……。それに戦となれば確実に誰かが死ぬ。お前は人間に死ねと命じられるのか? 俺達は所詮ナックルだ……そんな立場じゃ決して無い。こう言う時は、大人しくしてるべきだと思うぞ……。弱者の知恵ってヤツだ」


 確かに俺達は弱い……けど、弱いなりに工夫をすればいいだけの話だ。

 考えろ……! ここで引き下がったら駄目だ!


「戦力不足……それは確かなんだが。そうだ……実は傭兵達の買収工作を仕掛けてるんだ。希望的観測だけど、イゼッタの買収工作が上手く行けば100人くらいの傭兵を寝返らせることが……」


「傭兵の買収か……。まぁ、悪くない手だが……奴らは全員「黒き鷹の団」の傭兵だぞ? 奴らの団結は強い。買収して同士討ちを命じたとしても、やる気のない泥仕合を見せられるのが関の山だ。なぁ、一つ聞くが、義理と人情に篤くて、一人一人も十分戦える……そんな奴らが、十人もいればなんとかなるかもしれんのだが、心当たりはないか?」


「……居たら苦労なんてしねぇよ。味方と言えるような奴らは、全員療養院送りか、人質取られて身動き取れねぇ……その人質の奪還をしようにも、戦力不足……か。こりゃ、どうしょうもねぇな」


「そうか……まぁ、現実ってのはそんなもんだ。そう言う事なら、とにかく機会を待つんだな……必ずチャンスはある。今は雌伏の時だ……潮目は必ず来る。こう言う時は、葉巻でも吸って、空でも見上げろ……案外悪くねぇもんだぜ?」


 ……要するに、ここは我慢ってことか。


 もう一本葉巻を勧められるので、ありがたくいただく。

 たしかに焦ってもしょうがない。


 裏路地の隙間から見える空は、切り取ったように狭いのだけど。

 青く澄み切っていて、まるで吸い込まれるようだった。

 

 確かに、気持ちが少し落ち着いてきた。

 俺もちょっとばかり、気が急っていたみたいだ。


 けど、このままだとマズい。


 時間はむしろ、ワルツ達の味方だ……。

 こっちは待てば待つほどに状況は悪くなる。

 

 今は待ち時じゃない……今すぐ、動くべきだった。

 ……なんとか、なんとかするんだよっ! 


「……おーいっ! クロイノ! そこにいるな? 話は聞かせてもらったぜっ! まったく、そんな狭苦しい暗がりでこそこそ話してないで、二人共こっちこいよ!」


 ダンテだった。 

 言われて、裏路地を出るとホールに居た冒険者連中がズラッと並んでた。

 

 アマリリス達や冒険者兄妹、他の冒険者連中もぞろぞろと……軽く20人はいる。


「てめぇら、盗み聞きとはいい趣味してんな……」


 流石に思わず、苦笑する。


「いや、アーニャちゃんに話を聞かせてもらったのさ。まったく、お前ら泣いてるアーニャちゃんをほってどっかに行っちまったからな。しゃあねぇからこいつらと一緒に宥めてやってたら、人質になってる女子供を目の前にしてたのに、見捨てて逃げるしかなかった事を悔やんでるって言うじゃねぇか。だが、その上で、お前らはその人質奪還を企ててた……けど、お前らだけじゃ無理がある……違うか?」


 なんだ、結局アーニャちゃんが話してくれたのか。

 ダリオは口止めされてるからって、こっそりと打ち明けてくれたけど……。

 人の口に戸は立てられないってのはよく言ったもんだな。

 

「ああ、その通りだよ! 人質を取り返せば、グラハム派の従騎士や警備隊の隊長やらの枷はなくなるからな。そうなれば、戦力的にワルツたちを圧倒できる。けど、人質を取り返すには、俺達だけじゃ無理だ……だから、今は諦めて機を待つしかねぇんだ……」


 結局そうなる……ナックルである以上、人間に命令したり、頼ったりするのは難しい。

 こいつらに頼めば、もしかしたら手伝ってくれるかもしれないけど、そうなったら俺がこいつらの命に責任を持たないとならない。


 ナックル風情にそいつはあまりに荷が勝ちすぎてる。


「おいおい、水臭いやつだな……。この俺を忘れちゃいないか? とことん最後まで付き合ってやるって、言ったはずだぞ。それにそこの爺さんナックルも言ってたよな。義理と人情に篤く、それなりに強い奴が10人くらいいればって……。ここに居る奴らじゃ役不足か?」


「……お前ら、まさか人質救出の手助けしてくれるってのか? 俺達はナックルだぞ……ナックルがやろうとしてることに、命懸けで付き合うような義理はねぇだろ」


「義理ならあんだろ。俺はお前にデケェ借りを作っちまったからな……。それにこいつらもこの騒ぎで何か出来ることは無いかってことで、ギルドに集まってたんだ。こんな面白くてカッコいい役柄、命懸けだろうがやるに決まってる……お前、冒険者舐めてんのか? そうだよな! てめぇらっ!」


 ダンテが振り返ると、他の冒険者達も一斉に頷く。

 そして、めいめいに俺達に任せろだの、こんなのやるしかねぇだろとか口々に言ってる。


「……人質になったか弱い女子供を助けに行くなんて、誰がどう見ても正義の行い。こんな話聞いちゃ、皆もう黙ってられないってね。どうせ、ギルドに居たって、このままだと全員何もせずおしまいでしょうからね……。クロイノ君……皆、君の味方なんだから、これから何をするのか、ちゃんとお話してくれる? 一人で戦おうなんて思わないで、私達を……人間を頼ってくれていいのよ」


 そう言ってナスルさんがコロコロと笑う。


 ……くっそ! いい奴ら過ぎんだろ……コイツら!


「……おめぇ、何をやったんだか知らんが、人間にここまで信頼されるなんて、余程のことをやらかしたんだろうな……。おもしれぇ……俺も実を言うと、あの時、脅されてズコズコ引き下がった事を悔やんでたし、腹も立ててたんだ。案外、おめぇに賭けてみるってのは、悪くねぇかもな……いいぜ? 俺も乗ってやるよ!」


「ダリオ! お前がいれば100人力だ! ありがとう! ありがとうっ!」


 思わずその手を握って乱暴に振り回す。


 なんと言うか……誰かに信頼されるってのは、こう言うのを言うんだな。

 

 俺がやったことなんて、グラドドドスにぶちかましたくらいだろ。

 けど、あの行動がここにつながったんだ。


 俺の勇気が……人を動かしたんだっ!

 ……なんか、視界が曇ってきたよ。


 こうなったら、まずは人質救出作戦! やってやるぜっ!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 勇気が、人を動かす……主人公ですね! 熱い展開に、ワクワクします! クロイノはクールだけど熱くて、とてもかっこいいです。
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