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異世界ネコ転生! ゲーム世界に転生したら、ネコでしたが、くっそ強いロリ美少女のお供として、俺は生き抜くっ!  作者: MITT
第5章「クロネコの章 猫共の饗宴編」

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第三十六話「黒猫大捕物」④

「こ、このボクを雑魚呼ばわりだと! き、貴様ら! なんなんだよっ! このボクの……神に授かりし能力が尽く通じないなんて……あり得ないっ! そもそも、そこのチビっコ! なんで、ボクが見てることが解ったんだよっ! 質問に答えてないぞ! おかしいだろ! お前のことを見てるやつなんて、それこそいくらでも居たはずだろ! なんで、遠くから影と一体化してるボクを見つけ出せたんだ!」


 まぁ、確かにユリアちゃんって帝都でも有名になってたし、あの時も護衛の兵士とか皆、ユリアちゃんを見てたし、通行人からも普通に注目されてたからな。


「……あんな敵意の籠もった視線で見られたら、普通に解りますよ。でも解りました。……貴方はわたしの敵ですね……。幾多の分身を操って、影で足止めした上で、猛毒を使った奇襲暗殺を仕掛ける。普通は対抗するのは難しいでしょうけど……手口を知られていて、対抗できるとなれば、話は別ですよね? この技も……もう知ってますから、わたしには無駄です」


 そう言いながら、腕を振り上げるとユリアちゃんの影から一匹の黒ナックルが引きずり出される。

 

 直後目にも留まらぬ速さで、そいつは切り捨てられる。


 だが、敵もさる者……切り捨てられる直前に、口に含んでた毒針をユリアちゃんの目に向かって放ってたみたいなんだが、ユリアちゃんも軽く顔を動かしただけで、顔に毒針を受けながらも、平然としてる。


 そして、軽く片目をつぶると、それを無造作に引き抜く。


 毒は……回ってないらしい。

 針が刺さったほっぺたがちょっと赤くなってて、ポリポリと掻いてるけど、それだけ。


 俺同様、蚊に刺されたくらい?

 

 まぁ、サバトの言ってる猛毒っても、同じようなものはカザト達も持ってたからな。

 

 実を言うと、ユリアちゃん……すでに自分にその毒を投与してて、大丈夫だって実証済みだったりする。


 この辺もサバト恐れるに足らずってなってた理由のひとつなんだよな。


「さすがに、ちょっと痒くなりましたね……わたしでは完全に無害とはいきませんか。でも、猛毒と言っても、この程度なんですか? 切り札がこの程度なら、もうわたしを倒すすべも逃げるすべもないのではないでしょうか。ここは、潔く降伏をお勧めします。この一帯はすでに帝国軍が幾重にも包囲していますし、あなたの気配は覚えました。このわたしから逃げられると思わないでくださいっ!」


「お前っ! ほ、本当に人間なのかっ! 冗談じゃないぞっ! 今の毒は魔獣も数秒で動けなくなるよう強化毒なんだぞ! それに、このボクがお前らなんかにハメられて、為すすべなく追い詰められているってのか!」


 まぁ、こっちもまさか、こんな大物がストレートに釣れるなんて、思ってなかったんだがなぁ……。


 つか、コイツって俺ら的にはラスボスみたいなもんなんだが、それが自ら敵地のど真ん中に姿を見せるとか。

 よほど自分の能力に自信があったのかもしれんが、さすがにそれは自信過剰ってもんだ。

 

 まぁ……これは言わないでいてやるってのが情けってもんかな。


「悪く思うな……愚弟よ。貴様が我が国で探りを入れようとしていたことも、帝都に忍び込んだことも我々はとっくに把握していたのだ。そして、貴様がこのユリア殿に興味を持つことも予想されていた。だが、相手が悪かったな……彼女は、我らの天敵のようなものなのだ。我々も彼女相手に演習を重ねて、その事を思い知ったからな……さすがに同情しなくもないが、この結果はむしろ予想通りだ。お前如きでは、どうあがいてもユリア殿には勝てんよ! 格が違うのだ! 格がっ!」


 カザトも容赦ないな……煽る煽る!


 ちなみに、演習の話は本当で、一発でもユリアちゃんに攻撃を当てることが出来たら、カザト達の勝ちって圧倒的に有利な条件で、ユリアちゃんと俺相手に、暗殺演習をやったんだ。


 結果は、カザト達隠密衆の完封負け。


 なにせ、ユリアちゃん相手だと、もう視界に入れただけで見つかって、奇襲なんてどうやっても無理だと判明した。

 

 もう、この時点で奇襲暗殺専門の猫チームは無理ゲー。

 なんせ、数キロ先から望遠鏡で観測するとか、そんなんでも気づくんだもんな。

 

 後半戦は俺も攻撃チームに入って、色々試したんだが、もうユリアちゃんが魔王かなにかに見えた。


 それくらいには、敵に回ったユリアちゃんはいちいち半端じゃなかった。

 

 なんせ、俺らの得意とする毒物攻撃もユリアちゃんは最強クラスの猛毒、フルブラックの瘴気が充満する中で延々じっとしてたことでとっくに耐性を身に付けてたらしく、痺れ毒もなにもかも全く効かなかった。


 念の為に解毒剤を用意した上で、黒ナックル一族秘伝の猛毒を試したんだが、まるで効果なし……だから、毒なんて効かないって、実は知ってた。

 

 まぁ、フルブラック由来の毒に耐性付けたなら、他の毒なんて効くわけがないとは思ってたけどな。


 遠距離スナイプ攻撃も、照準中に先制攻撃食らって潰されて、とても無理……。

 

 なんつーか、カザト達ともども、ユリアちゃんの凄さを思い知る羽目になった。


 なんせ、相手の影を動かしたり、固める事で動きを封じる影繰りも全然通じないんだもんな。

 一瞬だけ、動きを止めるのがやっとで、軽く力技で振り払われる始末。


 目潰しで煙幕炊いても、気配だけで軽く迎撃されて、やっぱり駄目。

 なんせ、真っ暗闇の中で、影から飛び出してのゼロ距離アタックだろうが、お構いなしなんだもんな。


 やけっぱちで、出来る限り大勢……30匹くらいで、円周陣を敷いて一斉に飛びかかるってやっても、まとめて薙ぎ払われて終了……。


 ユリアちゃんもゴム剣装備で、十分に手加減してくれたんだけど、もうけが人続出。

 割と早い段階で、もう無理ですって皆して、白旗挙げて演習終了ってなった。


 まぁ、おかげでこの隠密猫どもともすっかり仲良くなったんだがね。

 

 皆、健闘したと思う! 俺だって頑張った!

 でも、さっぱり及ばなかった。


 そうなると、例のサバト。

 

 ソイツが帝国に忍び込んでコソコソなんかやってるって情報は俺らも入手してたから、敢えてユリアちゃんの警備を手薄にして、町中を堂々と歩かせた上で、野郎をおびき出して、のこのこ出てきたとこをユリアちゃんに見つけてもらって、強襲してとっ捕まえてやろう……そんな話になったんだ。


 これは、ユリアちゃんの能力を思う存分、思い知ったサガトの奴がむしろノリノリで提案して来て、こりゃ絶対とっ捕まえられるって、みんなで大盛りあがりして、決定したんだ。


 そして、案の定……野郎が釣り出されてきやがった。

 

 要するに、俺らの手の上で転がされてたようなもんだな。

 

「……は、話が違うっ! 至高なる神よ! ここでボクがコイツらに負ける? そんな展開……聞いてませんよ! ボクは最強のナックルじゃなかったのかっ!」


 ……至高なる神だと?

 まさか、野郎……アイツと関係あるのか? やっぱり!


「カザト……行けるか? 奴は何が何でもここで捕縛するぞ。絶対に逃しちゃいけねぇぜ!」


 うん、ここでコイツをとっ捕まえる。

 これは間違いなく、アイツの計算外……なら、むしろ狙っていくべきだった。


 あんにゃろーの思惑なんて、ぶっ潰してやるよ!


「もとより、そのつもりよ! 安心しろ……我ら以外にもすでに帝国軍が幾重にも包囲しているし、ユリア殿もいる。奴の能力ではこの場から逃げるなど到底不可能……サバト、観念するがいい! 大人しく降伏するなら、悪いようにはしない……これはお前の兄としての情けであり、身内としての約束だ!」


「ははっ! 兄者……甘いっ! 実に甘いですなぁ! この期に及んで何が身内の情けだっ! おい、そこの黒ナックル……名前はなんだっ!」


「……はっ! これから捕まる野郎に名乗る名前なんてねぇよっ! ……って言いたいとこだが、俺の名はクロイノ様だ! これから、テメェをとっ捕まえるヤツの名だ……せっかくだから、覚えとけ! まぁ、オメェには俺も聞きたいことがあるからな……怪我したくなきゃ、大人しくお縄に付くんだな!」


「ははっ! クロイノくんか……ふふっ、その名……確かに覚えたよ。兄者……あまり、ボクを舐めないで欲しいなっ!」


 そう言って、サバトがパチンと指を鳴らすと、猿ぐつわを噛まされた小さな女の子が後ろ手を黒ナックルに掴まれて、その首筋にナイフを押し当てられながら、ヨロヨロと物陰から出て来る。


「……てめぇっ! まさか……人質のつもりか!」


「悪いね……ユリアちゃんに見つかった時点で、こう言う事になる可能性も考えて、ボクの分身に命じて逃げ遅れてた子供を捕まえて影の中に潜ませておいたんだ。君たちこそ、詰めが甘かったね……。もう、ボクが何も言わなくても何をすべきか解るよね?」


 この……野郎っ!

 あの一瞬でもっとも人質として効果がありそうなのを見繕って、保険としてキープしてたってのか……汚ねぇ……まじ汚ねぇな。


「……語るに落ちましたね……。そんな幼子を人質に取るなんて……卑怯にも程があります。けれど、人質と言っても、わたしがより早くあなたの分身を切り捨てれば済む話ですよね? わたしの剣はもう数段階早くなりますよ?」


 君も十分、幼子のカテゴリーに入ると思うんですが。

 

 でも、いくらユリアちゃんの剣が神速の領域に達していたとしても、この局面を打開するのは、無理だろうな……。


 なにせ、人質を取ってるのは、野郎本人じゃなくて、分身体だからな。


 分身体ってのは使い捨て上等だから、要するに相打ちオッケーなんだ。

 

 そんな相打ちオッケーな奴に人質を取られて、無事に取り返すのは恐らく不可能だ。


 クソッタレ! やり方としてはうめぇとしか言いいようがねぇな。


「試してみるか? お前の剣とボクの分身がナイフを引くのがどっちが早いかなんて、やるまでもないと思うけど? それに、分身を斬られたところでボク自身は痛くも痒くもないし、人質には君と違ってちゃんと毒が効くはずだからね……。要は人質を助けたかったら、ボクの言うとおりにするしか無いんだ……解ってくれないかな?」


「……サバト! 貴様というやつは……! おのれっ! 恥を知れっ!」


「兄者……忘れたとは言わせないよ。ボクらは常に帝国の闇……ドブ掃除みたいな汚れ仕事ばかりさせられてきたじゃないか……色んな奴を人知れず始末してきたよね。年老いた老人も無垢な子供ですらも……容赦なく、痕跡一つ残さずに。こう言うド汚いやり口だって、本来のボクらのやり口じゃないか。今更、正々堂々だの綺麗事でも言うつもりなのかい?」


 ……まいったな。 

 確かに一般人を人質に取られるってのは、一応可能性として用心はしてたし、市街地を戦場とする以上、それが最大の懸念点ではあったんだ。


 だから、帝国軍にも最優先とするのは、民間人の避難誘導と保護って事になってんだ。

 実際、帝国軍は出来得る限り最高レベルの仕事をやってのけた。

 

 けど、黒ナックルの能力なら、逃げようとしてる奴を影に引きずり込むとか容易ではあったんだ。


 しかも、女子供を人質に取るとか……古今東西、悪党の常套手段だ……。


 こう言う状況は、予想はしてたんだが、ヤツのほうが一枚上手でこっちの対策が間に合わなかったんだ……。

 

 さすがに、こりゃ誰も責められねぇよな……。


 つか、ここまでやるか? この野郎……ッ!

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