96.勇者の帰還
投稿再開です。またよろしくお願いします。
エリスの元に着き、無事合流出来た優夜達。
「優夜様!」
「優夜!」
十魔族との戦闘を終え、少しぶりに優夜達に会えたエリス達は嬉しそうに叫ぶ。
「おお!二人共生きてるな。……じゃあ、グレンの左腕以外みんな無事って訳だな!」
「おい。それだと俺の左腕は死んでいるように聞こえるだろ。もう治ってるから無事に等しいぞ」
「いやいや。あんな傷見て無事なんて言えねえだろ」
優夜はグレンの反論を即否定する。
「傷って何の事?」
「グレンさん大怪我したんですか!?どこですか?直ぐに治さないと!?」
傷の事を聞いたリンカは首を傾げ、エリスは気を取り乱している。
「エリス。傷はもう治ってるから治療はもう要らないぞ。それで、傷の事なんだが……」
グレンはエリスを宥めた後、優夜達に説明したのと同じようにエリス達にも説明する。
「へえ~。そんな事があったんだね。てかその状況でよく倒せたね」
「凄いです!流石グレンさんですね!」
話を聞いたエリス達は感心し、口々にグレンを褒める。
「まあな。……さて、魔王の事も気になるしそろそろ移動した方が良いんじゃないか?」
褒められたグレンは照れを隠すように優夜に言う。
「ええ~俺はもう少し居ても良いけど……分かった。分かったからそう睨むなって」
「よし。じゃあ行くぞ」
グレンは優夜から了承を得ると、先に歩き始める。
「あっ、ちょっと待てって。みんな行くぞ」
「「「「「「はい」」」」」
◇
優夜達が歩き始めてから少し経ち、魔族と人間が争っていた戦場に着いた。
「何だこれ……」
「これは……」
優夜達が戦場に着き見たのは、魔族が人間を、人間が魔族を治療している光景だった。
「魔王様だろうな」
「え?」
呆然とする優夜の後ろで確信したという顔でサザンガが言う。
「魔王様が人間を説得したのだろう。どうやったかは分からんが恐らくそうだろう」
でも説得って……この戦場にいる人間全員を納得させるなんて出来るのか?……いや、待てよ。そういやここにはあの人が居るのか。
「クロードさんだ。あの人なら地位も信頼もある。クロードさんと魔王が人間と魔族を説得したんだ」
優夜の言葉にティーネ達はああ、と頷く。
「まあ、ここが落ち着いてるなら魔王様やその人間に会うのは後回しでも良いだろう。俺達にはやるべき事がもう一つある」
「分かってる。サファイア達に会いに行かないとな」
サザンガは無言で肯定する。
そして、サザンガは自ら先頭に立ち歩いていく。それだけサファイアやウルに会えるのが嬉しいのだろう。
「むっ。そこに居るのは勇者か」
「魔王か。……ちょうど良い。魔王も一緒に来てくれるか?」
魔王は優夜の誘いに少し迷いを見せたものの、首を縦に振った。
……サファイアを魔王が拾ったのはまだ支配が完全にされていない時。今会えば反応を示すはず。何より、サファイアを支配が解けた魔王に会わせてあげたい。
優夜は魔王が首を振ったのを見るとまた歩き出す。
◇
優夜……大丈夫かな……?
優夜が魔王に勝利した事を知らないサファイアは、ウルと共に戦場から離れた小屋に身を隠しながら優夜の身を案じていた。
「サファイア……」
サファイアの微かな震えを感じたウルは心配するように言う。
「大丈夫……優夜なら、パパにも勝てる。そう、信じてる」
「はい。私もあの人間なら大丈夫だと思います」
「優夜……。早く帰ってきて……」
「おう。分かってる」
「!」
サファイアは下に向けた顔を上に向ける。そして、目に映った人を見て目から涙が溢れる。
「だから、早く終わらせてきた。…ただいま、サファイア」
サファイアは優夜が言い終わると同時に抱きつくと、
「お帰り!優夜っ!」
嬉しそうにそう言った。
「なあ、サファイア」
サファイアが泣き止み、少し落ち着いたところで優夜は話しかける。
「何?」
「サファイアに会わせたい人がいるんだ。連れて来ても良いか?」
「……?良いよ」
サファイアは一瞬首を傾げたがすぐに許可する。
「良し。入って来てくれ」
優夜がそう言うと、小屋の扉が開かれる。
「!?」
「久しぶりだな……。……サファイア」
魔王は自分が拾った子にどんな顔をして会えばいいのか分からず、ただ申し訳なさそうな表情をする。
「パパ……パパ…なの……?」
「ああ。そうだ。長い間一人にしてすまなかった。だが、これからはずっと一緒だ。本だって幾らでも読んでやる。……だから、この私を、罪深き私を許してはくれないか?」
サファイアは優夜の時よりも激しく泣き、魔王に抱き着く。
「うんっ!うんっ!!許すよ!だってパパが帰ってきたんだもん!」
サファイアは今までの気持ちを全て魔王にぶつけ泣き叫ぶ。
サファイアは今まで色々な気持ちを溜め込み、我慢してきた。本来の泣き虫な自分も全て封印してきた。だが、魔王が戻ってきて我慢をする必要がなくなり、その気持ちは爆発した。それがこれだ。
「感動の再会……だな」
優夜は泣きながら抱き合う二人を見て微笑ましく思った。
あんなに片言で、表情を見せなかったサファイアがここまで嬉しそうにしてる。ほんと、頑張って良かったな……。
「優夜!」
サファイアはしばらくして泣き止むと、魔王から離れて今度は優夜の方を向く。
「本当にありがとう。パパを救ってくれて。それにみんなも。みんながいてくれたからパパは救われた。みんながいたから優夜も無事に帰ってこれた。本当にありがとう。……そして、これからもよろしくね!」
サファイアは最後満面の笑顔で言った。
「ああ。これからもよろしくな。それと、魔王に本を読んで貰うのが嫌になったら俺のとこに来て良いぞ。また相手してやる」
「なっ!勇者よ。たとえ貴様だろうと私の娘はやらんぞ!」
「うん!優夜に本を読んで貰う。それもずっと!」
魔王が反論をするも、サファイアの声に消される。
「分かった。いつでも来て良いぞ……って、え?ずっと?それってどうゆう……」
「そのままの意味。ずっと優夜といる。パパの事も好きだけど、だけど、気付いたの!私、優夜の事も好きだって!だから優夜。私と結婚して!!」
優夜は固まった。否、その場の全員が固まった。それこそ、時が止まったように。そして、動き出すと皆各々の気持ちを爆発させる。
「なっ!?何を言ってるんだサファイア!そんなのパパが許さないぞ!」
「「「「「何を言ってるんですか!?」」」」」
「ふふっ……優夜。ついにサファイアもか……」
特に女性陣が凄かった。優夜を盗られると悟った女達は必死に優夜を抱き守ろうとする。グレンは新たないじりの材料を見つけて面白そうに笑う。
そして、プロポーズをされた優夜はというと……まだ固まっていた。
……ははっ……ほんと、頑張って良かったな……。
【投稿予定】
10/18 97.人魔戦争、終結