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95.グレンの剣



 勇者と別れた後私は全速力で戦場に向かった。理由は勿論、戦いを終わらせるためだ。私は精神を乗っ取られていたとはいえ、何の罪も無い魔族を戦場へ出させてしまった。今も私のせいで魔族が死んでいると思うと私自身の愚行に詫びとして死んでしまいたい程だ。

 私は魔力が後少しでなくなる事も知っていながら更に速度を上げた。そして、魔力が枯渇する一歩手前で魔族と人間が武器を持って戦っている戦場へ辿り着いた。


「皆の者!聞けッ!!私が魔王だ。私は魔族が血を流すのも、罪の無い魔族が死ぬのも、全てが悲しい。全てが悔しい。戦争をしろと言ったのは私だ。恨むなら私を恨め!だが、今だけは私の言う事を聞いて欲しい。魔族よ!人間よ!双方武器を降ろせ!!」

 魔王がそう言うと、魔族達は皆目の前に今まで戦っていた人間がいるというのにも関わらず武器を捨て、魔王を見上げ両手を合わせて泣き崩れた。

 そして、人間もまた戸惑いながらも魔族が武器を捨てたのを見て、剣を振り上げる手を止めた。

 全員が戦う意思を失くしたのを感じた魔王はまた喋り始めた。


「ありがとう。では、もう一つ聞いてはくれぬか。……私はとある人間達に精神を乗っ取られていた。その人間達は冒険者ギルドでSSSランクという今この世で最強の称号を持っているというのに、私を封印から肉体だけを解き放ち、操り、そして王国を、魔族を滅ぼそうという恐ろしい計画を企てていたのだ」

 魔王がそう言うと、戦場がざわつき、怒声や憎悪に満ちた声、魔王を疑う声が戦場を飛び交った。


「魔王よ!」

 一人の人間が声を張り上げ魔王を呼んだ。

 魔王が声の聞こえた方へと顔を向けると、そこには重装備をし、大量の血しぶきを浴び、傷を付けられたグランドギルドマスター、クロードがいた。


「何だ、人間よ」


「魔王の言葉は我々人間には信じ難い。それを証明するものはあるのか?」


「ああ、あるぞ。その冒険者達は魔族と王国を戦争させ、疲弊した両者を帝国の総力を挙げて徹底的に潰すつもりだ。そして、彼らの言っていた事が本当ならば、帝国が侵攻するのは明後日の早朝だ」

 戦場をもう一度どよめきが包み込んだ。

 先程まで疑いの姿勢でいたクロードも魔王の正確な言葉に信じつつあった。


「魔王よ。貴方は王国と帝国、どちらの味方だ?」


「私はどちらの味方をするつもりは無い。魔族の民を守るのなら協力をし、逆に魔族の民を傷付けるのなら敵対する。ただそれだけだ」


「そうか」

 クロードは安心したように息を吐き、続けた。


「では魔王よ。魔族の中から回復魔法を使える者を集めて欲しい。王国と魔族。協力して今を立て直し、帝国の侵略に備えるぞ」


「魔族の民を守り、助けるのなら、私は協力しよう」



 ホーラと別れた優夜達は急いでグレン達の元へ向かった。そして、優夜は目的地に着いた時、ミルとレフィアがグレンの左腕を治療している所を見た。


「グレン!」

 グレン達無事だったのか!それに四天王の姿も見えないし、グレン達が倒したのか。


「!優夜!」

 治療されているグレンは、顔を上げ優夜の顔を見ると嬉しそうな笑顔をする。


「優夜くん!」

「優夜さん!」

「ほお。もう終わらせたのか」

 ミルとレフィアもグレンと同様に喜び、ハルはどこか感心した様子だった。

 グレンはある程度腕が回復したのを確認すると、ミルとレフィアに「もう大丈夫だ」と言い優夜の元へ走って行った。


「グレン。その腕、大丈夫なのか?」

 優夜はグレンの左腕を指差す。


「ああ。ある程度は治療してもらったからな」


「でももう少しやった方が良いんじゃ……」


「それもそうだが……優夜は早くエリス達のとこに行きたいんだろ。てか俺達全員同じか」


「グレン……。分かった。早くエリス達と合流して、早くグレンの左腕を治すぞ」


「ああ。それでいい」

 優夜は皆を集めると、エリス達の元に向かった。



「えっ!?それからどうやってそのスイエンって奴を倒したんだ?」

「私も気になりますね」

 エリス達の元に向かう中、優夜達はグレンがスイエンを倒した事を話していた。


「そこ!そこだよ。どうやって倒したの兄さん?」

「そうです!もう駄目かと一瞬思いましたよ!」

 グレンは水の壁に閉じ込められた後の事を優夜達(主にミルとレフィア)に問い詰められていた。


「ああもう。分かったから。話すから一旦落ち着け」

 グレンはそう言って優夜達を落ち着かせると、もう一度口を開いた。


「あの後、またスイエンが突進してきて、避けられないって分かった俺は覚醒者を発動したんだ。それで、その後炎の魔人(イフリート)を使ったらスイエンの頭が焼けてた」


「えっ……焼けてたって。あれそんなに威力あったか?」

 確かにオークエンペラーの時はほとんだ焦がしてたけどあれは弱点属性だったし。


「そうなんだよ。俺もこんなに炎吹き出てたか?って一瞬自分の目を疑ったからな」


「それで、」

 グレンは真剣な顔と声に変えると続ける。


「この剣。セルフから分身って聞いてたけど、全く喋らないし、今回の威力といいやっぱおかしいんだよ。だから、ちょっと鑑定してくれないか」


「分かった」

 優夜は即答すると、目の前に差し出された長剣を鑑定する。



種類 長剣

材質 ???

攻撃力 ???

耐久力 ???

スキル 主従契約(持ち主と主従契約をする事で封印されたスキルを使えるようになる。現在契約をしている相手はグレン・ディクフォード) 意思疎通(人と意思疎通が出来る) 隠蔽(自身の認めた者にしか姿を見せない。触れられている場合は発動しない) 生存本能(封印)(契約している者の強い意思によって攻撃力が上昇する。上昇率は意思の強さによって変わる)  属性強化(封印)(契約している者の使う魔法の威力は上昇する)


 はえ〜。グレンの剣ってこんな感じになってたんだ。……何かグレンに滅茶苦茶合ってない?てか、セルフも言っとけよ。普通に能力あんじゃん。


「グレン。この剣の能力分かったぞ」


「そうか!どうだったんだ?」

 優夜はそれからグレン達に能力を話した。結果、普通に驚かれた。……うん、まあそうなるよな。

【投稿予定】

10/3  96.勇者の帰還

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