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91.フリューネの実力



「グアアアアッ!!」

 ノルティは苦しそうに、だがどこか嬉しそうに叫ぶ。


「コ、レで、オ、オワり、ダ。……グ、グア、グガアアァァアア!!」

 ノルティは最後にそう言うと、完全に自我を失った。


「あれは、凶化!フリューネ気を付けて!あれは危険です。油断はしないで下さい」


「そんな事は分かってますわ。それよりも、あの怪物をどう倒しますか?」


「そうですね。…まずは先程までも攻撃が効くか試してみましょう。打開策を考えるのはその後で!」

 エリスは少し考えると、そう答えを出し、自我を失った怪物(ノルティ)に向かって走っていく。


「先程と同じですね。分かりましたわ!」

 フリューネは返事をすると、地面を一蹴りし、一瞬でノルティとの距離を縮めた。


「ふっ!」

 フリューネは先程と同じように双剣で攻撃をするが、ノルティはその攻撃を防がずに自身の体で受ける。


「なっ!?刃が通りませんわ!」

 フリューネはその光景に驚き、一瞬、隙を見せてしまう。

 一瞬の隙も見逃さなかったノルティはすかさず反撃し、フリューネを吹き飛ばす。


「ぐっ!」

「フリューネ!」

 攻撃を受けたフリューネを見たエリスは、方向転換しフリューネの方へと走る。


「大丈夫ですか!?」

 若干よろめきながら立ち上がろうとするフリューネにエリスは回復魔法をかける。


「ありがとうございます。エリス、気を付けて下さい。凶化の影響で刃を通さない程硬くなっています。先程までの攻撃は通用しません」


「そうみたいですね。なら、打開策を考えましょう。まず、剣で駄目なら魔法です。私が使える魔法を全てぶつけます。それでも駄目なら、その時はリンカさんの戦いが終わるまで耐えましょう」


「分かりました。ですが、魔力は使い切らないで下さいね」


「ですが、中位程度は出さないと効いているのか判りませんからね。出来るだけ残すよう善処します」

 エリスはそう言い詠唱を開始する。

 エリスが詠唱を開始した事に気付いたノルティはにやり、と笑い突進してくる。


「邪魔はさせませんわ。風属性魔法。ウィンドウォール」

 フリューネが無詠唱で魔法を発動させると、ノルティの行く手を阻むように猛風の壁が現れる。


「ッ!」

 それを見たノルティは一瞬怯んだ後、壁を避けて進む。


「今のは……」

「フリューネ。撃ちますよ」


「ええ。いつでも撃ってください」

 フリューネが許可を出すとエリスはノルティを狙って魔法を放つ。


「風属性魔法。疾風の刃!」

 エリスが魔法名を唱えると、ノルティ目掛けて風の刃が飛んでいく。


「グッ!」

 ノルティは魔法に反応すると自身を守る壁を展開する。

 壁にぶつかった刃は一瞬で霧散し、ノルティには傷一つ付けられなかった。


「そんな。中位の魔法を一瞬で消し去るなんて……」

「やはり、あの怪物は……」

 落胆するエリスに対し、フリューネは何かぶつぶつと独り言を喋っている。


「エリス。まだ落ち込むのは早いですわ。次は水属性の魔法を撃ってください。威力は先程と同じで大丈夫ですから」


「でも、またあれに消されますよ?」


「良いんです。時間は稼ぎます。早くしてください」


「わ、分かった。やってみる」

 エリスは頷くと急いで詠唱を始める。


「さて、私の推測が正しければ、これであの怪物の弱点が分かるはず……」

 フリューネはノルティを魔法で牽制し、エリスの詠唱時間を稼ぐ。


「準備できましたよ!」


「いつでも大丈夫ですわ」


「水属性魔法。水球!」

 今度は直径50センチメートル程の水の球が現れると、それはノルティを追跡するように飛んでいき、ノルティの肩にぶつかって爆発する。


「あれ、今度は消されなかった?」

「やはりあの怪物の弱点は……」


「グオアアアア!」

 爆発が収まると、叫び声を上げながら無傷のノルティが出てくる。


「そんな!?無傷!?……あんな化け物どうやって倒せばいいの?」

 エリスがノルティの防御力に諦めかけていると、


「エリス。あの怪物の弱点が分かりました。後は私に任せてもらえますか?」

 フリューネはどこか勝ち誇った様子でエリスに言った。


「……え?」

 エリスはフリューネの発言から少し経った後でも理解が追い付かずにいた。


「弱点が分かった?そんな、どうして……なんで……?」


「では順を追って説明しましょう。……と、言いたいところですが…っ!」

 フリューネはエリスに説明をしようとしていたところをノルティの攻撃によって阻まれる。


「怪物のせいで長く話してはいられません。ですので、見てもらうのが一番でしょう」


「見てもらう?」


「ええ。これを見ればエリスなら分かるはずです。風属性魔法。ウィンドウォール」


「ッ!」

 フリューネが魔法を使うと、ノルティは露骨にその魔法を避けた。


「なっ……魔法を避けた!?では先程私の魔法を風属性は防御し、水属性の時は生身で受けたのは……」


「理解が早くて助かりますわ。そう。この怪物は風属性が弱点なのですわ。それも、中位の魔法ですら防御をしてしまう程に」

 フリューネはノルティの攻撃を避けながら説明をする。


「でも、魔法を消したあれを使われては弱点が分かっていても無意味ですよ!?」


「いいえ。あれは正確には消しているのではなく吸収しているのです。つまり、あれの許容範囲を超えるほどの威力の魔法を撃てば確実に傷を負わせられるはずですわ」


「ですが、私は上位までしか魔法は使えませんよ?それでは確実に吸収されてしまいます」


「はあ……エリス。私を誰だと思っているのですか。私は風の精霊妃。風属性に関しては誰よりも扱いに長けていますわ」

 フリューネは呆れたようにため息を吐く。


「え、でも。フリューネってまだあまり強くないのでは?今までの戦闘だって一度も出てきてませんよね?」


「あれはまだ魔力が多くなかったので出来るだけ消費するのは避けたかったのですわ。ですが、今は違います。今は神位級の魔法を数発は撃てるほど魔力があります。ですから、後は私に任せてください」

 フリューネの自信に満ちた表情を見たエリスはふっ、と笑みを浮かべた後、


「ええ。頼みますね、フリューネ」

 なんのためらいもせずに言った。


「ありがとうございます、エリス。……では、まずは逃げられないように檻を作りましょうか。風属性魔法。ウィンドプリズン」

 フリューネがそう言うと、ノルティの周りに白い風の壁が四つ現れる。壁はノルティを囲むように近づくと正方形の形になり、その中にノルティを閉じ込める。


「グアッ!?」


「さて、長引かせるのはあまり趣味ではないので早く終わらせましょう。――私の魔力全てを持っていきなさい。風属性魔法。災害級嵐(ディザスターストーム)!」

 刹那、先程作られた檻の中心部分に竜巻が起こり、それはやがて嵐となりその場にある物全てをえぐる災厄となる。


「グアアアァァァアアアアッッ!!?」

 ノルティはフリューネが起こした災厄によって粉々に引き裂かれ、跡形も無くこの世から消え去った。


「討伐完了、ですわ」

 フリューネはそんな決め台詞を言うとその場に倒れた。

【投稿予定】

9/21 92.【剛水】スイエン

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