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88.人魔戦争②



 戦場で優夜が待機している時サザンガはサファイアの部屋の外で見張りをしていた。サファイアのいる部屋には、ベッドや本などが置いてあり、不自由な事は特にはなかった。外に出る扉は格子状になっていて、誰かを呼ぶときはそこから声をかけるようになっていた。

 予定時刻まであと少しか……。頼んだぞ優夜。俺達が始まる前にそちらに行くのは無理だ。最悪、そちらに向かえないということもあり得る。

 幸い、見張りはさせてもらえたが、今まで不審な動きをしていたという事もあり、周りにはエンガ様の配下の魔族が何人か見張っている。この状況でサファイア様を連れて外に出るのは少し無理ががある。


「さて、これからどうするか……」

 サザンガは他の見張り達に聞こえない程度で呟く。

 サファイア様は落ち着かない様子で部屋の中をうろうろとしている。連れ出そうと思えば何時でも出れそうだ。

 今魔王城には魔王様以外に有力な魔族はいない。魔界では実力によって魔族の位付けがされる。つまり、俺がここで他の見張りを倒して、サファイア様とここを出ても逃げ切れる可能性はある。それにこの部屋の外にはウルが待機している。いざとなれば俺が残り、サファイア様をウルに頼むのもありだ。

 あとの問題は人数だな。数人の見張りがいるこの状況では、戦っても何人か逃がしてしまうかもしれない。逃げた魔族に援軍を、もしくは魔王様を呼ばれでもしたら、それこそ脱出するのは不可能になる。

 ……ここはサファイア様に一芝居打ってもらうか。

 サザンガはそう考えると、見張り達がサザンガから目を離した瞬間歯ぎしりをする。見張り達はその歯ぎしりには気付かず見張りを続ける。


「!」

 サファイアはサザンガの歯ぎしりに気付くが、近づこうとはせずに先程までと同様に部屋をうろうろとする。


『どうしたの?』

 サファイアが歯ぎしりに気付いてから数秒、サザンガの頭にサファイアの声が響く。

 これはサファイアの持つスキル念話だ。サザンガとサファイアはここに来る直前に念話の発動の条件を決めていたのだ。


『気づいてくれてありがとうございます。ちょっと一つ芝居を打ってほしいのですが良いですか?』


『それを使えば優夜に会える?』


『確実とは言えませんが、会える可能性があるのは確かです』


『分かった。やる。どうすればいい?』


『では、ここにいる見張りの数を少し減らしてもらえますか?』


『了解』

 サファイアはここで念話を切るとサザンガのいる扉の方へ向かう。


「ちょっと……」

 サファイアは目の合った見張りを呼ぶ。


「はい、何でしょうか?」

 呼ばれた魔族は丁寧な言葉遣いで聞きながらサファイアに近づく。


「喉が渇いた。水を、持ってきて。あと食べ物も」

 サファイアの言葉を聞き見張りは二人で外に出ていく。

 この場所から厨房まではそれなりに時間がかかる。それに食べ物も要求すれば二人ほどは必要になる。ありがとうございます、サファイア様。完璧な演技でしたよ。


『喉が渇いたのはほんと」


『それは後で優夜の知り合いから貰って下さい』

 一部演技ではなかったようだが関係ない。今残っている見張りは五人。十魔族を舐め過ぎだ。もう少し見張りを用意しておけば逃げる事は無理だったかもしれないが、この人数なら余裕だ。


「ふっ!」

 サザンガは見張り二人がこの場所から完全に居なくなった事を確認すると、床を蹴り、近くの見張りの首を手刀で叩く。


「ぐっ!?」

 見張りは一瞬呻くと、そのまま倒れる。


「なっ!?」

「貴様、何を!?」

 見張り達はサザンガの行動に驚いた後、戦闘態勢をとる。


「ふむ、遅いな。やはり主力は戦場か。魔王様は――」

 サザンガは一旦言葉を区切り、もう一人見張りを倒した後続ける。


十魔族(俺達)を舐め過ぎだ」

「がっ!?」

 サザンガは言葉を言い終えると同時にもう一人倒す。


「くそっ!」

「逃げるぞ!」

 残った二人の見張りは戦う事を諦め出口へと走る。


「悪くない判断だが……そっちは行き止まりだぞ?」


「がっ!??」

「お前は、ぐっ!?」

 二人の見張りの前に突然ウルが現れる。ウルはサザンガと同じように手刀で気絶させる。


「遅い。もうすぐ始まるぞ」

 ウルは苛立った様子で言う。


「悪い。では向かうぞ」


「勿論だ。サファイア様、こいつに乗ってください」

 ウルは肩に乗っている鷲を降ろすと、鷲は「ピィー!」と高く鳴くと、一瞬でウルの倍以上の大きさになる。


「そいつってでかくなれたのかよ」


「無駄口を叩くな。もうすぐ見張りが着くぞ」


「それもそうだな。では行きましょうサファイア様」

 サザンガは格子状の扉を開けると、サファイアに手を伸ばす。


「ん。分かった」

 サファイアはサザンガの手を取り、部屋から出ると、巨大化した鷲の背中に乗る。


「では行くぞ。今からならまだ間に合う。全速力で行くぞ」

「おう」

「ピィーー!」

 ウルが合図を出すと、サザンガとサファイアを乗せた鷲は地面を蹴り飛ぶ。そして少し遅れてウルも飛ぶ。

 優夜、やっぱり間に合いそうだ。今行くから待っていろ。



 時はサファイアが部屋から脱出した少し後。


「何?サファイアが脱走しただと?」

 魔王城の玉座に座る魔王は見張りからの報告に眉をひそめる。


「は、はい!私達が目を離した隙に他の見張りは倒され、十魔族サザンガと【宝石妃】サファイア様の姿が無くなっていました」


「そうか……まあいい。放っておけ」


「え?良いのですか?」


「ああ、そうだ。所詮は十魔族一人とあのサファイアだ。あの二人がどう動こうと私達の勝利は揺るがない」

 魔王が見張りに言ったその言葉は冷たかった。サファイアの事は気にせず、人間との戦争に勝利する。それだけを考えた言葉だった。今の魔王には、サファイアを拾った頃の暖かさなどどこにも無かった。


「はい……分かりました」

 見張りは魔王の言葉に頷き、部屋から出ていく。


「私は勝つのだ。人間を一人残らず殺す。それだけだ……」

 魔王は暗い部屋の中で一人、虚ろな目をしながら呟いた。まるで、操られているかのように。

【投稿予定】

9/12 89.人魔戦争③

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