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84.決戦前夜②



 フェザードは優夜達の前で止まると、息を整える事無く優夜に話しかける。


「久しぶりだな!元気か?体調とか大丈夫か?」

 あんたは親か!というツッコミを堪えて、


「はい、大丈夫ですよ。それより落ち着いてください」

 平常心で受け答えをする優夜。


「はは……すまない。少し取り乱した」

 フェザードは荒い息を整え、改めて優夜達を見る。


「優夜、凄いな。こんな短期間にここまで成長するとは思わなかったぞ」

 フェザードはティーネ達を一人ずつ見た後、優夜の肩を優しく叩く。


「お疲れ、そしてお帰り」


「はい。ですが、まだただいまを言うには早いですよ。俺達にはやらなきゃいけない事がありますから」


「分かってる。優夜、私はエリーと話す事がある。お前達は先にギルドに行ってユナと話をしていろ」

 優夜はフェザードの指示に黙って頷くと、ティーネ達を連れてギルドの方へ歩き出す。

 優夜が去ったのを確認したフェザードはエリーに話しかける。


「どうだ、優夜は」


「どうだ、か……。まあ、不思議な奴だ。それに面白い」

 エリーは普段の口調を全く使わずに答える。


「そうだろう。優夜は私が最初に目を付けたんだ」

 フェザードは自慢するように鼻を鳴らす。


「神獣だけでなく精霊妃を従え、更に、神に選ばれ神になる事を許された者、か」


「まるで二百年前の再来だな」

 二百年前――それはこの地に勇者が現れ魔王を封印した人魔戦争の時代を表す。そして、今現在それがまた始まろうとしている。


「確か、二百年前の水の勇者、名前はユウヤだな。その勇者も神獣に精霊妃を従え神からも祝福を受けていたな」


「ああそうだ。名前だけでなく状況も同じ。偶然だと思うか?」

 フェザードの言葉にエリーは頭を悩ませる。


「普通は偶然と考えるのが正しい。が、今は状況が状況だ。これがもし、必然だったとして、神の祝福はどちらが受けるのか」

 人間か、魔族か。神はどちらに微笑むのか。その答えは神だけが知っている。


「もし必然にこの時が作られているならば、神は人間(私達)に微笑むだろう。何故なら――私達には神に選ばれし者(優夜)がいるのだから」

 フェザードは勝ち誇った表情で優夜の去っていった道を見た。



 フェザードに促され優夜達はギルドへ来た。

 優夜が懐かしみながら中に入ると、聞き覚えのある声に迎えられる。


「お久しぶりです優夜さん。それにティーネさん達も。エリス様とそこのお二人の女性は初対面ですね。私はユナ、先程お会いしたはずの父フェザードの娘です」

 ユナはエリスとリンカ、レフィアに頭を下げて挨拶をする。


「よろしくお願いしますユナさん。あと、様は要りません。優夜様と同じようにさん、もしくは呼び捨てでお願いします」


「そんな王女様を呼び捨てには……ではエリスさんと呼ばせて頂きます」


「はい」

 エリスは優夜達と同じ待遇を受けられて嬉しそうにしている。

 エリスって普段は優しいけど様付けとか、自分だけ特別扱いされるのを嫌うよな。でも、俺も様付けはいやだなあ、エリスさん。


「僕はリンカ。よろしくね」

「私はレフィアです。よろしくお願いします」

 二人はほぼ同時に言う。


「よろしくお願いします」

 一通り挨拶が終わると、今度はきょろきょろと周りを見渡すユナ。


「どうした?」


「あの……白は何処に?」

 ん?白?……どこだろう。そういえば朝起きた時から宿にはいなかったぞ。

 優夜は頭の中での整理が終わると冷や汗を垂らし、


「あ、あー。俺ちょっと用事が……」

 冒険者ギルドを出ようとするがあと一歩のところでティーネに阻まれる。


「優夜様」

 特に怒っている様子を見せずに優夜に話しかけるティーネ。

 あ、まずい。これはやばい。

 優夜が自分の死期を悟った次の瞬間、


「安心してください。白とルウは先にガッハの宿にいますよ」

「はっ?」

 ティーネから全く予想もしていなかった言葉が飛んできた。



「えっと、つまりティーネは俺が白とルウを置いていくかもと思って先にエリーさんに送ってもらってたって事か」

 優夜はあの後、ティーネから事情を聞き、情報を整理する。


「はいそうです」


「そっかあぁぁ。まじで良かったあぁぁ」

 優夜は自分に非が無いことが分かると、深く安堵のため息を吐く。

 ユナに白の話題出された時生きた心地しなかったからなあ。ほんと良かった。今回は俺何も悪くない。


「ですが、出来れば優夜様に気付いてほしかったですけど」


「うっ……」

 悪いとは、思ってるよ……?


「では皆さん、後は部屋に入ってから話しましょう。ここはギルドの入り口、他の人の迷惑になります」


「あ……そうですね」

「確かにそうだな」

 ティーネと優夜は我に帰り、移動を始める。



「改めて久しぶりユナ。元気にしてたか?」

 優夜達はソファーに座り、少し休憩した後優夜が話かける。


「はい。優夜さんがガッハを去ってから特に病気などを患う事もありませんでしたよ」


「そっか。ユナが何も変わってなくて安心した」


「そんな半年も経っていませんからね。人は短期間では変われませんよ」

 そういや俺この世界(こっち)に来てからまだ半年どころか三ヶ月くらいか。自分で言うのもあれだけど俺ってチートだな。


「まあ、そうですね…強いて言うなら冒険者ランクがBに上がった事ですかね」


「へえ!それは良かったな」


「はい」

 ユナは自分のパーティメンバーに祝われ顔に現れない程度に喜ぶ。


「私もうかうかしてられないね。頑張らないとユナちゃんに追い抜かれちゃう」

 ユナの成長を優夜達が祝う中、ミルは焦りを見せていた。


「でもミルはセルフがいるだろ?」


「うーん。でもやっぱり頑張る」

 ミルは優夜の誘惑に負けず決意する。

 それから優夜達は旅の間であった事などを楽しく話していた。

 この時間がずっと続けば良いのに。誰もがそう思っていた頃、ギルド長室の扉がいきなり開かれ、慌てた様子の白とルウが入ってくる。


『大変だ優夜!サファイアが!』

「「「「「「!?」」」」」」

 サファイア!?あいつに何かあったのか?

【投稿予定】

8/31 85.サファイア囚われる

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