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81.魔鉱石



 優夜達がグランドベアーロードとの戦闘を終えた頃。場所は帝国。

 宿屋の一室に集まっていた四人の内の一人が怒声を上げた。


「何故だ!?」

 黒髪の男がテーブルを力強く叩く。


「おい、煩いぞ。私に迷惑だ」

 その行動に白髪で腰まで髪を伸ばした男が迷惑そうに顔をしかめる。


「まあまあ、落ち着けって。それで、どうしたんだ?」

 金髪の男が二人をなだめる。


「……王国へ放った熊がいたろ?」


「ああ、そうだな。予定では今日あたり都市について計画を始める筈だが……それが何か?」


「それなんだが、さっき熊からの信号が途絶えた」

 その言葉に金髪の男は首を傾げる。


「それは……計画が始まったという事か?」


「いや、違う。俺の使いからは都市に被害があるようには見えない」


「という事は……何者かに計画を阻止されたか」


「ああ、そういう事だ」


「それがどうした。別に計画の一つや二つ無くなっても大丈夫な筈だが?」

 白髪の男は不満そうに黒髪の男を睨む。


「そうだ。計画自体はどうでも良い。問題は熊の中に仕込んだ魔鉱石だ」


「「ッ!」」

 二人はその言葉を聞き初めて事の重要さに気付いた。


「あの魔鉱石は帝国でしか取れない物だ。もし、魔鉱石が王国の特に国王に知られれば不味い事になる」


「それは……不味いってレベルじゃないな。もしその事を帝国が知ればまず俺達を消しにくるだろう。そうなれば計画は全て無になる」


「それは確かに良くない。私達の目的の為にもそれだけは避けなくてはならない。……おい、貴様。魔鉱石を今すぐに回収してこい。出来なければ、分かってるな」

 白髪の男は壁に寄り掛かり今まで無言だった青髪の男へ話し掛ける。


「ッ……分かった」

 男は白髪の男を睨んだ後宿から姿を消した。


「あまり虐めるなよ。あいつだってSSSランク。それを敵に回せばかなり厄介だ」


「ははっ。裏切りの心配をしているのか?それなら大丈夫だ。何故ならあの男の妹の命は私の指示一つで今すぐにでも消せるのだからな」

 白髪の男は嗜虐に満ちた顔で笑う。


「……はあ。まあ俺は目的さえ果たせればそれで良い。じゃあ解散だ。また会おう」

 金髪の男はため息を吐いた後宿から去る。


「おい、魔鉱石の回収の件。これは貴様も行け。元々この計画は貴様が提案したのだからな」


「はいはい。分かりましたよ。……ったくこれだからお坊ちゃんは嫌いなんだよ……」

 黒髪の男は悪態を吐きながら青髪の男同様に宿から姿を消す。


「ふっ……私は貴様達とは生まれた次元が違うのだよ。さて……今日はあの女で遊ぶとするか」

 白髪の男は悪魔の様な笑みを浮かべたまま宿を去った。



 優夜達がグランドベアーロードとの戦闘を終えた後、訓練は終了し、ティーネの頼みを断っていた騎士達はスカーレットさんの手によって制裁が下された。

 そして現在、優夜は謎の物体とグランドベアーの大量発生を相談すべくエリーの元へ来ていた。


「優夜……確かにお主はこの部屋にはもう何度も来ておる、が!それでも断りも無く入ってくる奴がいるか!」


「それはすみません。でも、それよりも大変な事があったんですよ」


「大変だと?はあ……何故優夜は一度外へ出ると問題を抱えて帰ってくるのじゃ……」

 エリーはギルドマスターという立場から常日頃に大量の書類を背負っている。そして更に魔王軍の侵攻の件で増えた書類に頭を悩ませていたところにこれだ。

 歳を重ね知恵を増やしてきたエリーでさえ優夜には白旗を上げている。


「それは……すみません…」

 優夜も自覚はあるらしく申し訳なさそうにしている。


「まあ良い。それで?大変な事とは一体何じゃ?」


「あ、はい。まず訓練中に森の中でグランドベアーの群れとグランドベアーロードを見つけました」


「何……?」

 先程まで適当に聞いていたエリーが眉をひそめる。


「それで、俺達は熊達と戦闘をして勝利しました」


「そうか……」

 エリーは一瞬ほっと息を吐いた後質問する。


「それだけか?確かにグランドベアーロードにグランドベアーの大量発生は大変な事だ。だが倒したのだろう?それならそこまで慌てる必要はない筈だが」


「これだけではありません。グランドベアーロードのステータスが明らかに異常なのと、グランドベアーロードの体内から変な物体が出てきたんです」


「異常なステータスに変な物体?なんだそれは。ステータスはともかく変な物体は魔石とかではないのか?」


「違います。魔石に似てはいますが違う物です」

 優夜は即答する。

 グランドベアーやグランドベアーロードの魔石は爆発の影響でグランドベアーの物は吹き飛び、グランドベアーロードの魔石は爆発に巻き込まれて砕け散ったため、優夜達は戦利品を拾う事が出来なかったのだ。


「ふむ。では先にステータスの方を聞くか」


「はい。まずレベルが50でした。それと体力以外の数値は15000、体力は50000を超えていました。そして、スキルなんですが。スキルは自爆だけでした」

 優夜が記憶しているステータスを言い終わりエリーの方を見ると、エリーは見事に固まっていた。

 かちんこちんに固まっていたエリーは少しして動き出す。


「すまない……少々驚きすぎた。そうか。レベル50に全ての数値が15000以上、体力に関しては50000か。それにスキルが自爆だけというのも気になる……」

 エリーはぶつぶつと呟いた後、


「もしかしたらこれは帝国の仕業という可能性があるな」

 帝国という新たな単語を口にした。


「帝国……ですか」

 確かに帝国ってゆうのは考えてなかったな。でも何で?


「王国と帝国は昔から敵対していてな。帝国が何らかの方法で魔王軍の事を知ったのかもしれない」

 エリーが事情を知らない優夜に説明する。

 なるほど。王国が魔王軍に集中してる間にメルルラを攻めようとしたのか。

 ……てかじゃあ、もし帝国が関わってたらあの石みたいなのも帝国のなのか?


「エリーさん、これ見てください」

 優夜はポケットから謎の物体を出すとテーブルに置く。


「これは……」

 エリーは訝しげに見た後、手に取って色々な方向から見る。


「それがグランドベアーロードの自爆で唯一残った物です」


「ほう……魔石すら残らない程の衝撃に耐える物。そして帝国が関わっているとすると……これは魔鉱石じゃな」


「魔鉱石?」

 更に現れた新単語に首を傾げる優夜。


「これは簡単に言えば魔力を含んだ鉱石じゃ。が、これは天然物。優夜が持っている剣の魔鉱石とは別物じゃ」

 なるほど。それなら理解出来る。


「でも、人工のものと天然で何か変わるんですか?」


「変わる。天然物と人工のでは性能の差は桁違いじゃ」

 へえ。それは良いな。


「優夜、すまんがこれは優夜には渡せない。これは王都にいる陛下に届けさせてもらう」

 まあ、そうだよな。帝国が絡んでるんだもんな。

 優夜は少し残念に思ったが諦めて頷く。


「ありがとう。では行ってくる」

 エリーは優夜に礼を言った後姿を消す。


「ふう。……帰るか」

 優夜はため息を吐くと、腰を持ち上げる。

 ……魔王軍に帝国か。何か面倒臭くなってきたな。


「はあ……」

 優夜はもう一度ため息を吐くとギルド長室から出ていく。

【投稿予定】

8/22 82.SSSランク冒険者

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