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73.短剣の過去



『今から話すのは昔の話。それも小僧達の生まれるよりもずっと昔のだ』

 おい。小僧言うなってさっき言ったろ。これは徹底的に叩き込まなければ。物理的に。

 まあそれは置いといて、俺達の生まれるよりずっと前か。もしかして人魔戦争の時期だったりして。


『人間の言う人魔戦争とやらが起こっていいた時代だな』

 お、当たった。人魔戦争か。それならあの規格外の鑑定結果も頷ける。


『私はその時代の魔族の手によって作られた。…いや、作られた、というよりは生み出された。というほうが正確だな』


「なっ。それはどうゆう事だ?」

 グレンが質問する。

 作られたんじゃなく生み出されたか。それも魔族によって。うーん。分からないなあ。


『まあ黙って聞いていろ。私は意思を持っている。そして命もだ。心臓などの臓器は持っていないが、確かに生きている。では、この意思は()()()だと思う?』

 グレンに続き今度は短剣が質問をしてくる。


「誰の物……っ!まさか!」

 優夜が何かに気づきいきなり大声を出す。


『ほう。頭が回る小僧だ。では言ってみろ』


「その意志と命はお前を作った、いや生み出した魔族の物、という事だろ」

 その答えに短剣は微かに笑ったような気がした。


『そうだ。私の意思や命は全て、私を生み出す代償として自分自身を捧げた魔族の物だ』


「「!」」

 短剣の言葉にミルとグレンは絶句する。

 でも、それが分かっても謎は深まるばかりだな。


「なあ、どうしてお前は短剣になった?どうしてミルとグレンの前に姿を現した?どうして街の武具屋にお前が置いてある?」

 優夜は息を途切れることなく次の質問を放った。


『まあ、落ち着け小僧。それら全てに今から答えていく』

 短剣は一度言葉を区切り、また語り始める。


『まず、そこの二人に姿を現したのはどうしてか。という質問から。それは単なる直感だな』


「は?」


『そこの二人なら私を使いこなせそうだったからという意味だ。……頼まれたからというのもあるがな』


「ん?頼まれた?誰にだ?」

 グレンは短剣の小さな呟きも見逃さなかった。


『それもあとで話す。次の質問に移るぞ。街の武具屋に何故私がいるのか。それはあの店の店主が私に頼み事をした本人だからだ』


「その店主は誰なんだ?」


『名前は知らんが、確か解放軍がどうとか言ってたな』


「「「!」」」

 解放軍を知っているという事はつまり、武具屋の店主は魔族、もしくはサファイア達の味方の人物という事になる。


「でも、何でその頼み事を受けたんだ?」


『ああ、それはな、頼み事をした魔族が元主だからだ』

 その言葉に優夜は納得する。

 なるほどな。それと今の質問で頼み事をしたのは魔族、それも解放軍の一員だという事も分かった。


『じゃあ、最後の質問、どうして私が短剣になったのか。それを話すにはまず私の過去を話す必要がある』

 短剣の過去。つまり人魔戦争の時代を生きていた魔族の話。


「分かった。話してくれ」

 優夜は頷き、短剣に許可を出す。


『これは私が短剣になる少し前の話だ』

 短剣になる前か。それって短剣がまだ魔族だった頃の話だよな。興味はあるな。


『あの頃、私はセルフ・アルヴァンと名乗っていた。名前から想像できるだろうが、私は魔族の中でも有力の貴族だった。当時、人間と魔族は激しく対立しており、私も戦争に加わった。だが、戦争の途中で気づいたのだ。このまま戦争を続けていても必ず魔族が負けると。そこで私は戦争の原因である魔王を殺そうと決めた。魔王さえ殺してしまえば人間との戦争は終わり、魔族がこれ以上殺されなくて済む、そう考えたのだ。しかし、その考えは浅はかだった。魔王は私の想像を絶するほど強く、また恐ろしかった。そこで今度は人間と手を組むことにした。人間は少々渋ったものの私の提案を受け入れた。そうして、私は人間の武器となり、勇者達と共に魔王を封印する事に成功した。という訳だ』


「……なるほど。じゃあ、お前は俺達の味方、そう思っていいんだな?」


『まあ、そういう事だな。私は同胞たちが無意味に死んでいくのが許せないのだ』

 その考えには同意だな。俺もできれば戦争なんかしたくない。


「あと、最後に」


『む。まだあるのか?質問の多い小僧だ』

 優夜が口を開いた瞬間、短剣が愚痴を零す。

 この……!…落ち着け、俺。これは必要な事だ。せっかくのチャンスを棒に振るな。


「最後に、グレンの持っている長剣をお前は知ってるか?」


『ふむ。長剣か。あれは私の分身のようなものだ。あちらも意思は持っているが喋ったりする事は出来ないぞ』

 よし、これで大体知りたい事は知れたな。


「ミル、グレン。俺からの質問は終わりだけどまだあるか?」


「あっ、じゃあ」

 ミルが手を挙げる。


「お、良いぞ」


「主従契約ってどうすればいいのかな?」


「えっ、まさか本当にそうゆう事に興味が……」

「無いから!ほんとに無いから!!」

 ミルは顔を赤らめ、必死に抗議する。

 やはり、ミルを弄るのは楽しいな。何か新しい性癖に目覚めそう。


「分かってるって。…だから、その短剣を置いて!?」

 新たな性癖目覚めそうにないです。だから短剣をこっちに向けないで!?

 ミルは少し経つと落ち着きを取り戻し、話題を戻す。


「優夜くんはもう……。それでどうなの、短剣さん?」

 少し怒気のこもった声で短剣に聞く。


『あ、ああ。それも話すが、その前に私を置いてくれないか?」


「あ、ごめん」

 ミルは短剣を先程置いていた場所に戻す。少し荒っぽく。

 ひええぇ。ミルさんまだ怒ってらっしゃる…。ちょっとこれからは弄るの自粛しよう。うん。

 完全なとばっちりを受けた短剣は嫌な顔一つせず話を続ける。


『さて、ここからが本題だ』


「ん?それって主従契約の事だよな?」

 本題って、俺にとってはさっきまでの話の方が重要だったんだが。


『そうだ。今から話すのは主従契約の仕方でありーー試練だ』

【投稿予定】

74.セルフ・アルヴァンの試練

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