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72.ミルの短剣



 オークエンペラーと戦った翌日。優夜はグレン、ミルと一緒に朝食を取っていた。


「いやあ、まさかオークエンペラーが出るとは。ミルとグレンがいなかったらほんとにやばかったな」


「ふふん。もっと褒めたまえ!」

 ミルは胸をどんと張る。


「ミル。お前はそんなに活躍してないだろ」


「ううぅ……。だって、そもそも後衛はそんなに活躍できないじゃん!」

 ミルは昨日の一戦での不満を口にする。


「まあ、それもそうだな。ミルは頑張った。えらいえらい」

 優夜はその言い分に納得し、ミルを褒める。


「えへへ~」

 グレンは二人のやり取りを呆れたように見ていた。そして優夜がその視線に気づくと。


「どうした?グレンも褒めて欲しいのか?」


「アホか。それで、今日はどうするんだ?」

 グレンは優夜を軽くあしらう。


「ああ。今日も依頼を受けに行きたいけど、その前にオークエンペラーの換金とか依頼達成の報酬を貰いにいくのと、あと」


「あと?」


「昨日のグレンのやつ。まだ話聞いてないだろ」


「ああ」

 グレンはその言葉に腑に落ちた表情をする。


「で、あれって一体何なんだ?」


「んー。どっから話そうかな」

 グレンは少し頭を悩ませた結果、武器屋で意思を持った剣と出会った時からの事を話した。

 話を聞いた優夜は意思を持つ剣に興味を示す。


「へえ。意思を持った剣かぁ。それって今持ってるか?」


「俺のは部屋にあるが、ミルは持ってるか?」


「うん。えっと……はい、これ」

 ミルは頷いた後短剣を取り出し、優夜に渡す。


「見た目は…普通だな。それじゃ」


『鑑定(強)発動』


種類 短剣

材質 ???

攻撃力 ???

耐久力 ???

スキル 主従契約(持ち主と主従契約をする事で封印されたスキルを使えるようになる。現在契約をしている相手はいない) 意思疎通(人と意思疎通が出来る) 隠蔽(自身の認めた者にしか姿を見せない。触れられている場合は発動しない) 分身(封印)(自身の体を増やせる。増やせる分身は契約した相手の魔力量による) 斬波(封印)(斬撃に魔力を含ませる事で波にして斬撃を飛ばす。使用する魔力は契約相手から消費される) 崩壊(封印)(自身の意思で発動する事は出来ない。契約相手の意思によって発動出来る。自身の体を代償に半径50メートル内にある生き物を全て死滅させる)


「………」

 優夜はこのステータスを見て言葉を失う。

 なんだ、これ…。剣が主従契約?というか鑑定(強)を使って材質も攻撃力も分かんないって……。


「優夜、大丈夫か?」

 グレンは心配になり優夜の顔を覗き込む。


「……はっ。あ、ああ。大丈夫だ。ちょっと驚いただけで特に心配する事は無い」


「そうか。それで、鑑定結果はどうだ?」


「ああ、それか。……ちょっと俺の剣も鑑定したいんだが、いいか?」


「無論だ」

 優夜は魔錬剣を鞘から抜き、鑑定する。


種類 長剣

材質 魔錬金

攻撃力 17000

耐久力 17000


 俺の剣を鑑定したけど、これだけだった。つまり、ミルの持ってる剣は明らかに異常だ。俺の聖剣は分からないが、業物である魔錬剣(この剣)ですらスキルなんてものはでてこないし、材質も攻撃力もでる。それなのにさっきの短剣は大量のスキルがでた。という事は、あの短剣は俺の剣を遥かに超える業物だ。


「……グレン、ミル。その剣が意思を持ってるのは知ってるだろうが、更にその剣はスキルを持ってる。それも結構強力なものだ。それと、剣の材質、攻撃力、耐久力は分からなかった」


「「!」」


「そして、その剣は主従契約を結ぶことが出来る」


「えっ!?」

「なっ……」

 スキルにも驚いたが、主従契約と聞きグレンとミルは驚愕する。


「それと……意思疎通が出来るんだろ。何か話してくれないか?」

 優夜は短剣に話しかける。周りからすればこの光景は異様だろう。一人の青年が短剣にはなしかけてるのだから。


『……バレていては仕方ない。確かに私は意思疎通が可能だ。混乱させまいと今まで取ってこなかったが知られているなら構わないだろう』


「おお~」


「「!?」」

 優夜は喋らないはずのものが会話をする事に慣れているが、二人は違う。いまだに理解の追い付かない二人は混乱する。


『むっ。そこの二人は混乱しているではないか。どうしてくれるのだ小僧』


「俺は小僧じゃない、優夜だ。グレン、ミル。驚かせてごめん。まあ、あれだ。白と話してるようなもんだ。慣れてくれ」


『そんな説得で慣れる訳が……』


「「ああ、なるほど」」


『は!?』

 ふむ。この剣は意外に話しやすいかもな。じゃあ、


「取り敢えず、俺の部屋に移動するぞ。ここは少し人が多い」

 優夜は短剣を持ち部屋に移動する。グレンとミルはその後を付いて行く。



 優夜は椅子に腰かけ、その隣に置いてある椅子たちにグレンとミルも座る。そして三人の前の机に斜めに置かれているのが短剣だ。


「さて、何から話してもらおうか」

 優夜が悩んでいるとミルが手を挙げる。


「私から、いい?」


「もちろん。持ち主なんだしこの剣のことは知っておかないと」


「えっと、主従契約ってどうすればいいの?」


「えっ、ミルまさかそうゆう事に興味が…」

 剣ではなく優夜がミルの質問に反応する。


「違うから!ただ、封印されてるスキルに興味があって……てか話の流れから分かるでしょ!」


「ごめんごめん」

 封印されているスキルは主従契約を結ばないと使えないみたいだからな。ミルが気にするのも当たり前か。んー、でもな。


「ミル。主従契約を結ぶ前に主従契約について知らないと駄目だぞ」

 優夜の考えをグレンが代弁する。

 おっ。さすがグレン。分かってるな。


「あ、そっか。確かにそれも知らないと。ありがとうグレン兄さん」


「まあ、妹を心配するのは兄として当然だからな」

 グレンは少し顔を逸らす。

 その反応にミルと優夜が顔を見合わせると。


「「グレン(グレン兄さん)照れてる」」

 同時に言う。


「うるさい!それで、どうなんだ?」

 グレンは話題を戻し、顔を短剣の方に向ける。


『主従契約をどうすれば出来るか、か?』


「話を聞いていただろう。まずはその契約でミルの身に何かが起こるのか、何か代償があるのかを聞いてるんだ」

 怒り交じりの呆れた口調でグレンは言う。


『はい、分かっている。契約についてだな。…まあ特に代償などは無いな』


「本当か?」


『ああ。嘘なんて吐いてないぞ。第一、そんな嘘私にとっても利が無いだろう』


「まあ…確かに」

 短剣は契約が出来なければ力の半分近くを封印されたまま。それなのに契約出来るかもしれない相手に嘘を吐くなどという行為はしないはずだ。そして、短剣の言った通りそんな嘘を吐いたところで短剣には利が無い。仮に今、嘘を吐いていたとしても代償が無いなどの嘘はやがてバレる。なら最初から嘘など吐いてない方が良いだろう。


『それで、質問は終わりか?』


「いや、まだだ。次はお前自身について喋ってもらう。」

 優夜は終わらせようとしている短剣を止め、次の質問に移る。


『私自身、か』


「嫌でも話してもらう。それが出来ないならお前をごみ箱に放り捨てる」

 優夜は短剣へ冷淡に言葉を放つ。


『なっ!?分かった、話す!だからそれだけはやめろ!やめてくれ!』

 おお。これは良いことを知った。今度からこいつにはこれを使って脅そう。

 ごみ箱行きを必死に止めようとする短剣を隅に優夜は一つ武器を得たのだった。

【投稿予定】

7/26 73.短剣の過去

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