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71.豚帝王討伐②



 優夜は一度オークエンペラーと距離を取り、スキルを発動する。


『身体能力強化(レベル8)発動』

 優夜の動きがスキルを使う前よりも格段に速くなる。

 おお。これが身体能力強化レベル8か。確かに速いな。これなら縮地を使わなくても戦えるんじゃないか?


「今度はこっちの番だな!」

 優夜は地面をグッと踏み込み、オークエンペラーの胸元まで跳躍する。……はずだった。


「あれ?思ったよりでかい……というかでかすぎだろ!足元までしか行かなかったぞ」

 優夜は仕方なくオークエンペラーの左足を剣で攻撃する。


「いや、グレン達の魔法を当てやすくするためには足を攻撃するのは良いんじゃ……」

 そこで優夜は口角を上げ、もう一度左足を攻撃する。


「ついでにこれも食らっとけ!火属性魔法。『ファイアーボール』」

 優夜は切り傷を負った足に魔法で追い打ちをかける。


「ブモオオオオッ!」

 優夜の攻撃が効いたのかオークエンペラーは左足を地面につき、腕で優夜を薙ぎ払う。


「おっと」

 優夜はその攻撃を難なく躱す。

 ……やっぱ俺が速くなってるのか……。さっきからオークエンペラーの動きが遅く見える。


「優夜!右にどけ!魔法を撃つ!」

 後方からグレンの声が聞こえる。


「分かった!」

 優夜が右にジャンプをすると、刹那、優夜のいた場所を炎の龍が通る。


「危なっ!」

 優夜は冷や汗をかきながらグレンの放った魔法を見る。

 あんな魔法見たこと無いな。もしかして、最上位の魔法か?でも、それにしては詠唱が速くないか?いや、それは後で聞こう。


「ブモッ!?」

 オークエンペラーは魔法を顔面に直撃し、悲鳴を上げる。


「ようし、さらに畳みかけるぞ!」

 優夜は縮地を使いオークエンペラーの胸元まで行くと、袈裟斬り、左切り上げ、刺突を繰り出す。


「グオオオオ!」


「優夜くん!左にどいて!」

 今度はミルの声が聞こえる。


「分かった!」

 優夜は左にジャンプすると、その数秒後幾つ幾つもの炎の槍が通る。

 炎の槍はオークエンペラーの顔に当たり炎上する。


「ブモオオオオッ!!」

 オークエンペラーは更なる追い打ちに悲鳴に似た怒声を上げる。

 うわあ。さっきから顔ばっか狙われて可哀そ……。


「優夜!次行くぞ!」

 ミルの魔法に遅れてグレンが二発目を放つ。そして、オークエンペラーの悲鳴が聞こえる。


「おっと。このままだとまじで魔法だけで終わっちゃうな。行かないと」

 優夜はミルとグレンの火属性魔法によって無残な顔になっているだろうオークエンペラーに止めを刺すため、跳躍し、更に縮地を使う。

 すると、オークエンペラーはにたり、と笑った。


「ん?」


「ブモオオオオオオオッッ!!」

 魔法の攻撃が止まると同時にオークエンペラーは狂ったように叫ぶ。

 そして、オークエンペラーの傷がどんどん回復していく。


「完全回復か!」

 ちょうど良い。完全回復がどのくらい魔力を消費するのか知っておきたかった。

 優夜は一度地面に降り、距離を取った後オークエンペラーを鑑定する。


種族 オークエンペラー

レベル 300

スキル 完全回復(傷を完全に修復する。発動時、必要な魔力を消費する) 魔法攻撃耐性(強)(弱点属性以外の魔法攻撃の威力を激減する)  性欲旺盛(女性を見ると興奮状態になる)

体力 40000/40000

攻撃力 32000

防御力 32000

俊敏 20000

魔力 8000/12000

弱点属性 火


 おいおい、マジかよ……。あんなチートをもう二回使えんのかよ。


「優夜、大丈夫か?」

 オークエンペラーの叫びを聞いてグレンが駆けつけてくる。


「ああ、だけど、あと二回完全回復が使えるぞ、あいつ」


「まじか……。ん?……いや、大丈夫だ、優夜」

 グレンは何かに気づいたかのように新調した剣を鞘から抜く。


「どうゆう事だ?」


「詳しくは後で話す。取り敢えず俺も前衛に加わるぞ優夜」


「お、まじで?それは助かる」

 グレンが何をするつもりかは知らんが、それで倒せるなら任せるか。


「じゃあ、行くぞ」

「応」

 二人は剣を持ち、オークエンペラーの方へ走り出す。



 パーティを組んでいる数人の男達は全速力で冒険者ギルドへ戻った。


「大変だ!」

 男達の一人が声を荒らげて言う。


「どうしました?」

 一人の受付嬢が駆け寄り事情を聞く。


「お、オークエンペラーが出たんだ!ギルドマスターを呼んでくれ!」

 その一言でギルド内にいた人達が騒ぎ出す。


「わ、分かりました!すぐに呼んできます!」

 受付嬢はギルドマスターを呼びに走る。

 それから数分。慌てる受付嬢と落ち着いたギルドマスター、エリーが男達の元にやってくる。


「事情は聞いた。東の平原にオークエンペラーが出たんじゃろ」


「ああ!そうだ!なんとかできないのか!?」


「まあ落ち着け。東の平原は確か……優夜がいるな。いや、それにグレンとミルも手伝いに行っておったはずじゃな……。優夜一人ならきついじゃろうがミルとグレンが一緒なら大丈夫か?それにオークエンペラーは弱点属性が火のはず。なら」

 エリーは少し悩むと結論を出す。


「安心せい。大丈夫じゃ。お主らはゆっくり茶でも飲んでおれ」


「……は?」

 エリーの回答に男達はぽかんとするのだった。



 優夜達がオークエンペラーと戦闘を開始してから20分が経った。


「ブモオオオオッ!」

 戦況はオークエンペラーが優勢で、優夜達は少し押されていた。


「グレン!ちょっとやばいぞ!どうするんだ!?」

 優夜は息が少し上がっていた。


「もう少し、もう少しあいつにダメージを負わせてからだ」


「っ!分かった」


「優夜くん、兄さん!魔法通るよ!」

 二人はその言葉を合図に右と左にジャンプをする。

 そしてその数秒後爆炎がオークエンペラーを襲う。


「ブモオオオオッ!」

 オークエンペラーは回復してから初めて膝をついた。


「よし。優夜、そろそろ終わらせる。合図したら後ろに跳べ」

 グレンはそう言い詠唱を始める。


「了解。豚さん。もう少し相手してもらうぞ」

 優夜はオークエンペラーを挑発し、オークエンペラーは挑発に乗り優夜に突進する。


「神聖魔法。『神の監獄』」

 魔法耐性があるって言っても神の監獄(この魔法)には通用しないしな。時間稼ぎにはこれが一番だ。


「ブモオッ!?」

 オークエンペラーは監獄を突進で壊そうとするが、中々壊れない。

 そして、檻に亀裂が入ってきた頃。


「よし、準備も終わった。交代だ優夜」

 その言葉(合図)に優夜は頷き後ろへ跳躍する。


「火属性魔法最上位の力を見せてやる」

 オークエンペラーが檻を壊した頃にはもう、グレンはオークエンペラーの目の前にいた。


「いくぞ」


『覚醒者発動』

 グレンはにやりと笑みを見せると炎を纏った剣を掲げる。


「これが俺の修行の成果だ!火属性魔法。『炎の魔人(イフリート)!』」

 魔法を唱えるとグレンは剣を振り下ろす。すると、剣から出た炎は何倍もの大きさになってオークエンペラーを襲う。


「ブモオオオォォォオオオッッ!!」

 オークエンペラーは断末魔の叫びを上げて倒れる。


「これが、今の俺の力だ」

 グレンはオークエンペラーの焼死体を見ながらどこか誇らしげに呟いた。

【投稿予定】

7/23 72.ミルの短剣

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