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70.豚帝王討伐①



 平原を大股で歩く巨大なオークエンペラー。

 オークエンペラーの通った後は一メートルはえぐられていて、街に侵入されれば壊滅は避けられないだろう。


「うわあ。すげえな、あれ」

 こちらに向かってくるオークエンペラーに物怖じせず歩く姿を見ている優夜。

 あれと戦うのかあ。帰っていい?

 ……前言撤回。物怖じしていた。


「ほんとに凄いね、あれ。今からあれと戦うのかあ」

 ミルも戦うとは言ったものの内心は怖がっていた。


「おい、何弱気になってるんだよ」


「だって、あんなでかいんだよ?グレン兄さんは怖くないの?」


「まあな。それに、でかさで言ったらリヴァイアサンと同じようなもんだろ」

 グレンさんすげえー。いや、確かにさ、リヴァイアサンもでかいんだけどさ。


「まあ、そうなんだけどさあ……」

 そこで、優夜とミルは目が合う。

 あ、ミルも同じ事考えてるな、これ。


「……リヴァイアサンの方がオークよりかっこいいじゃん」

 豚と龍じゃカッコよさが違うんだよな。


「オークに謝れ、()()とも」

 バレてーら。


「さて、雑談はここまでにして、そろそろあいつの事調べるか」

 調べる、とは勿論鑑定の事である。

 優夜はオークエンペラーをじっと見る。


『鑑定(強)発動』


種族 オークエンペラー

レベル 300

スキル 完全回復(傷を完全に修復する。発動時、必要な魔力を消費する) 魔法攻撃耐性(強)(弱点属性以外の魔法攻撃の威力を激減する)  性欲旺盛(女性を見ると興奮状態になる)

体力 40000/40000

攻撃力 32000

防御力 32000

俊敏 20000

魔力 12000/12000

弱点属性 火


 おい!チートにも程があるだろ!完全回復って何だそれ!魔法攻撃も火以外効かないって事じゃん。体力もやべえし、防御力と攻撃力30000越えかよ。

 精欲旺盛(3個目のスキル)は……うん、見なかった事にしよう。

 優夜はグレンとミルにステータスの内容を伝えた。性欲旺盛(3個目のスキル)も伝えない訳にはいかないので伝えた。ほんとは伝えたく無かったよ?……ほんとだよ?

 優夜からステータスを聞いたミルは、顔から精気が消え、近づいて来るオークエンペラーを睨み付ける。


「絶対殺す……!」


「……そうか。完全回復に魔法攻撃耐性か。なら、優夜の精霊魔法と神聖魔法などは使えないのか」

 性欲旺盛(3個目のスキル)を無視しグレンは困ったように言う。


「まあ、試したい事はあるけど大体そうだな」


「中々面倒だな」


「確かにそうだけど、あんまり変わらないと思うぞ」


「それは何故だ?」

 グレンは優夜の言葉が理解できない様子だ。


「だって、俺も火属性魔法使えるし、グレンとミルは火属性は十八番だろ?」

 実際ミルの魔法は強いし、グレンは剣にまで炎を纏わせられる。うん、戦力としては申し分ないな。


「あ、言い忘れてたが優夜、最初の方は俺はミルと一緒に後衛をするからな」


「……ん?ちょ、ちょっと待て。え?なんで?それって俺が一人で前衛やるって意味でしょ?きつくない?俺、グレンに何かしたか?気に障る事をしたなら謝るけど」

 一人前衛が抜けるのは困るんだが。俺一人であのでかいの相手に出来るとでも思ってんの?無理に決まってんだろ!?


「いや、優夜は何も悪くないぞ」


「え。じゃあ何で?それいじめだよ?俺一人であのでかぶつ相手とか、マジいじめだよ!?訴えるよ?」

 優夜は涙目になって抗議する。


「……優夜。何か勘違いをしてるぞ。火属性魔法はミルよりも俺の方が威力は上だぞ」

 ……え?今、何て言った?ミルよりグレンの方が火属性魔法が強い?

 ははは。そんなまさか~。


「ミル、グレンの言ってる事マジ?」

 優夜は真偽を確かめるためにミルに問う。


「うん。ほんとだよ。私は火属性より雷属性の方が得意だから。今回はむしろ、私よりグレン兄さんの方が後衛に向いてるよ」

 ミルは何のためらいも無くあっさりと言う。

 え、嘘。じゃ、じゃあ今回の前衛……俺だけ?


「優夜、安心しろ。後衛は最初の方だけだ。途中から前衛に切り替えるさ」


「あ、そう。何か安心できたようなできないような……」

 優夜は喜ぶ半面、がっくりと腕を降ろすのだった。


「あ、二人とも。来るよ」

 オークエンペラーを監視していたミルが戦闘準備の合図を出す。


「ああ、もう!分かったよ。じゃあ、行ってくるから。魔法の援護頼んだぞ」

 優夜は最後まで文句を言いながらも覚悟を決める。


「おう、任せとけ。というか、魔法だけで倒しちまうかもな」


「はは、それなら楽でいいんだけどな」

 優夜とグレンは笑みを交わし、こぶしをぶつけ合うとお互いに背を向く。


「さて、と。こいつ倒して早く帰ろ。今日の夜ご飯はティーネが作るからな」

 優夜は剣は鞘にしまったままオークエンペラーに近づく。


「試したいことがあるから先にやらないとな」

 優夜はオークエンペラーの60メートルほど手前で立ち止まる。


「ひええぇ。まあまあ遠くにいるつもりだけど、そんな気が失せるほどでかいなあれ。……っと、魔法を試さないと。精霊魔法。『水霊の咆哮』」

 これは精霊魔法の中でも結構強い方だ。一番強いのにしなかったのはあまり大きな魔力消費は避けたかったからだな。

 優夜の放った魔法は見事に的中し、それが戦いの幕開けとなった。


「ブモオオオオォォォ!」

 オークキングとは比べ物にならない騒音に優夜は耳を塞ぐ。


「あれ、意外と効いて……ないじゃん!当たったとこまったく跡残ってないぞ!」

 うーん。やっぱり火属性じゃないと駄目か。神聖魔法も試したいけど、あれは魔力消費が半端ないからやめておこう。

 戦いが始まったばっかで魔力がありませんなんて洒落にならないしね。……それに、マナメルとの一戦で魔力回復瓶はもう無いし。魔法は慎重に使おう。


「ブルルルルッ!」

 え、それ豚が出す声じゃなくない?…じゃなくて!完全に俺睨んでるよな、あいつ。


「ブモオオオオッ!」

 あ、突っ込んできた。って、速ッ!?……そういえば豚って足速いんだっけ。

 優夜はエンペラーの突進を躱しながらそんな事を考える。


「よし、確かめるのも終わったし、そろそろ俺もやるか。グダグダしてるとグレン達の魔法でほんとに終わっちゃいそうだし……」

 優夜は剣を抜き、構える。


「さっさと依頼終わらせて帰らせてもらうぞ!」

【投稿予定】

7/20 71.豚帝王討伐②


*お知らせ。

一週間投稿をお休みします。次回投稿は7/20です。

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