7.十魔族【怒】サザンガ
龍に乗った人は降りて俺達を見た。
「そこの者達、よく聞け。俺はここ一帯を統治する十魔族の一人【怒】サザンガ様だ」
えぇー。いきなり十魔族かよ。SSランク指定だろ。俺の幸運∞なんじゃないのかよ。
………てか今までで俺の幸運ステータスが働いた事とかほとんど無くね?俺の幸運ステータスの意味って面倒事に巻き込まれる運が∞って事なのか?
………今はそんな事考えてる場合じゃなかったわ。目の前に十魔族がいるじゃん。ピンチじゃね?
「おい。聞いているのか。どこの馬の骨とも分からん奴にこのサザンガ様が話してやっているのだぞ」
うわぁ、こういう奴俺の一番嫌いな人種だわ。魔族どうとかは俺は別にどうでもいいけどこいつ今なんつった?
「なぁ、お前今なんつった?」
「あん?このサザンガ様が話してやっているのだぞ。か?」
「いや、その前だ」
「どこの馬の骨とも分からん奴。か?」
「それは俺たちのことか?」
「はぁ?当たり前だろ。魔界にのこのことやってきたゴミが」
どうやら聞き間違いではなかったらしい。俺に対してそれを言うのはいい。だがティーネ達を悪く言うのは絶対に許さん。よしこいつボコそう。
そこで俺は気づいた。俺の隣にいるティーネが青いオーラを纏っていることに。
「うおっ!」
びっくりして声が出てしまった。
いやそりゃ声も出るでしょ。いつも大人しいティーネが青いオーラ纏ってスーパーサイヤ人みたいになってんのに。
「おい。そこのゴミ」
!?ティーネがあんなドス黒い声を出すなんて。これにはホーラさんもびっくりしてます。ティーネどんだけ怒ってんの。こんなティーネ初めて見るんだけど。サザンガって奴死んだな。
「なんだと人間風情が」
あー。こいつティーネが精霊妃だってことに気づいてないのね。まぁそうだよなー、ティーネやホーラは見た目だけで見たら完璧人間だし。
「私のことを悪く言うのはいいが優夜様のことを悪く言うのは許さない」
ティーネは俺のことになるとこうなるのか。街に行ったら気をつけないとな。てかなんでここまでティーネって俺のためにしてくれるんだろう。今度聞かないとな。
「ああ?優夜様ってそこに"ある"ゴミか?ゴミをゴミと言って何が悪い。所詮人間はゴミだ。忌み子が生まれればすぐ魔界に捨てる。捨てられた子供がどんな目にあうか知っていながら。だから上位魔族会でクズな人間達に捨てられた可哀想な子供を拾おうと決まったのだ。つまりゴミと同じ種族のやつらは全員ゴミだ」
「貴様っ……!」
そこで俺はティーネを止める。何故かって?そりゃティーネ達のことをゴミだとか言うから嫌いだよ。でもね実はこいついい奴なんじゃね?って思ってきたから仕方がない。
「なぁサザンガ。仲間を想う気持ちはわかる。だがな子供を喜んで捨てられる親なんていないんだぞ。ていうかそんな奴いたら子供は捨てられた方がましだ」
「なにが言いたい?」
「察しが悪いな。つまりほとんどの親が魔界に子供を捨てたくないんだよ。それがたとえ忌み子でもな」
「だからどうした。仮にそうだったとして、それでなにが変えられる?捨てられたという事実はなにも変わらないだろ!」
サザンガは怒鳴り声を荒げる。
「ああ。俺が今言ったのはただの言い訳だ。じゃあ質問をしよう。もし俺がお前んとこの魔王と話し合い和平交渉に成功したらどうする?」
「それは無理だ。今代の魔王は復活してから人界へ攻めることしか考えてない。――ただでさえ魔族は人数が少ないのに。ふざけんな」
「なるほど。最後に言ったのが本音か。なぁサザンガ。ほんとうにいいのか?このままだと人間と魔族は戦争をする。そうすれば魔族も被害が出る。お前は仲間想いだ。戦争になれば相手を殺す事よりも仲間を守るだろう。最後にもう一度聞くぞ。ほんとうにいいのか?お前と同じ考えの奴はいないのか?」
俺の言葉を聞いたサザンガは顔をうつむき考えるような姿勢をした。話をちゃんと聞いてくれる人でよかったぁ。
「……………いる。今の魔王様の意見に反対的な者はいる。だが俺は十魔族だ。魔王様に逆らうことはできない」
「なぁ、なんで魔王に逆らうことができないんだ?逆らったら頭が爆発するとかそういう呪いとかでもうけてんのか?」
「それはっ………ない。だが俺は魔王様に拾われた。魔王様は俺の命の恩人なんだ」
「でもよ。お前の命の恩人は今進むべき道を間違えようとしている。それはわかってるよな?」
「……………あぁ。わかっている」
「なら恩返しとして魔王の道を正すのは駄目か?お前と同じ考えの奴らで魔王を正すんだ。今の平和な時代に戦争は要らない。俺は魔王と話し合い、和平をしたいと思っている。だから頼む」
俺はサザンガに対して頭を下げた。嫌いな人種に頭下げんのは結構抵抗があったよ?でも、こいつ実はいい奴だし、やっぱ前世の頃のお節介な部分は出ちゃうんだよな。それに血を流さずに済めばそれが一番だ。
「…………"お前"本当にそんな事考えてるのか?」
「ああ。そうだ」
「わかった。力を貸そう。その代わり和平して魔族が不平等になるのは絶対に嫌だ」
「わかってる。平等に和平交渉をすることを誓おう」
「では、いつか会う日まで」
サザンガはそう言い残し龍に乗って帰って行った。
「ふぅ。ようやく一安心だな」
そう言いティーネ達の方を向くとティーネが号泣していた。
「優夜様〜!とでもずでぎでじだ〜」
「とりあえず落ち着け。そしてちゃんとした言葉を喋れ」
「…………すいません。取り乱してしまいました。優夜様!とても素敵でした!」
「おっおう。ありがとな」
「戦闘をせず話し合いだけでまとめるとは流石です」
「まぁ血を流さないのが一番いいしな」
「じゃあ、街に行くか」
「「はい」」
そして俺達は街に向けて歩き出す。
【投稿予定】
12/11 8.異世界で初めての街です