59.ルウの進化
俺は縮地を使い飛んでいるマナメルに剣を振り下ろす。
「おやおや、いきなり剣を向けて来るとは穏やかでは無いですね」
しかし、マナメルはまるで分っていたかのように躱す。
!速い。前戦った時は本気じゃなかった?
「精霊魔法。『水霊の咆哮』」
優夜はマナメルに魔法を放つ。
「そんな魔法が効くとでも?圧魔法。『圧迫』」
マナメルに当たるはずの魔法がマナメルの手前で霧散する。
「何?」
圧魔法?そんなの聞いたことが無い。それに精霊魔法上位の魔法を無力化した。あの魔法、やばいな。
優夜はマナメルへの警戒を更に強める。
「おや、攻撃が止まりましたね。では、貴方には少し眠っててもらいましょう。圧魔法。『重圧』」
マナメルは優夜に魔法を使う。
「ぐ、がはっ!」
優夜はマナメルの魔法によって地面に叩き落される。
「『加圧』」
「ぐあああああああ!」
マナメルの追撃に優夜は悶絶する。
「優夜様!」
ティーネは落ちた優夜に駆け寄る。
「大丈夫ですか?」
「あ、ああ。ティーネ。注意しろよ。あいつ前よりも格段に強くなってる」
優夜はわき腹を抑えながら言う。
「優夜様。あれから強くなったのは私達も、ですよ」
ティーネは優夜に微笑む。
優夜はその笑みに同調し、
「ああ。そうだな」
にやり、と笑みを浮かべる。
優夜はみんなの元に戻ると考えた作戦を話した。
「聞いてくれ。あいつは強い。だけど、耐久はあまりない。だから、一斉に攻撃すれば少しは効くはずだ。ハルさん」
「ハルで良い」
「ハル。ハルはレヒィアさんに何を与えた?」
ハルが神獣ならレヒィアさんのステータスの何かが強化されてるはず。
「ふむ。そんな事まで知っておるのか。確かに私はレヒィアに力を与えた。それは魔力と、魔法じゃ」
やっぱりか。ただ、
「魔法?」
魔法ってのは気になるな。
「うむ。だが、今は説明してる時間が無い。後でそこの猫…白に聞くが良い。それより先に作戦とやらを話せ」
確かに時間は無い。魔法は白に聞こう。
「分かった。まず、俺は引き続きあいつの相手をする。そこをティーネは援護をしてくれ」
優夜はティーネに目配せをすると続ける。
「そして、次に出てくるのが白とルウだ。十魔族相手だと厳しいかもしれないけど、頑張って時間を稼いでくれ」
『うむ』
「ワウ!」
「それで、時間を稼いでどうするつもりだ?」
「俺が全魔力を消費してあいつに魔法を放つ、ってつもりだったんだけど、白。ハルの言ってる魔法はどういう系統だ?」
答えによっては少し変えるかもな。
『攻撃魔法で氷の系統だ』
なるほどな。よりにもよって氷か。運が良すぎる。
「作戦変更だ。俺もあいつの牽制に入る。止めはレフィアさん。貴方にお願いします」
「え!私、ですか?」
レフィアは驚きの声を上げる。
失礼だけどさっきレフィアさんのステータスを除いたら、魔法は見えなかったけど、魔力が20000を超えてた。まじで。
多分、俺が神聖魔法を撃つよりも良いかもしれない。その理由はもう一つ。あいつの弱点属性に氷がある事だ。
「はい。これは貴方にしか出来ません」
「えっと、その……」
レフィアはまだ少し慌てた様子でいる。
「レフィア。私からも頼む」
ハルはレフィアに頭を下げる。
「うぅ……。分かりました。やります」
自信なさげに言うレフィア。
「よし。じゃあ、行くぞ!」
「はい」
「ワウ!」
「『うむ』」
「はいぃ」
む。一人だけ元気の無い人がいるけど、まあ、大丈夫だろ。
◇
「何をしても無駄ですよ。大人しく捕まれば私も楽で済みます」
マナメルはレフィアとハルに向かって言う。
「ふざけんな。あと、お前の相手は俺達だ!」
優夜は縮地でもう一度マナメルの前まで移動する。
「おや。貴方は何も学ばないようですね。では、今度はもう少し強く……」
「精霊魔法。『精霊の咆哮』」
「っ!全く。面倒ですね」
マナメルはティーネの魔法をぎりぎりで避ける。
「斬波!」
そして、今度は優夜が剣撃を飛ばす。
「ちっ!本当に面倒くさい。圧魔法。『重圧』」
攻撃を避けたマナメルは優夜に魔法を使う。
「ぐっ!」
地面に落ちた優夜は苦しそうに呻く。
「潰れなさい!『加圧』」
「ぐっ、がはっ!」
それで良い。俺に魔法を使ってろ。
『ルウ。今だ!』
木の頂点から一気にジャンプした白は背中に乗せたルウに合図をする。
「ワウ!」
ルウはマナメルに飛びつき、その腕に噛みつく」
「ぐあああああ!この犬風情があ!」
マナメルはルウを振り払おうとするがルウは離れない。
「ちっ!圧魔法『重圧』」
マナメルは優夜の魔法を解除し、ルウに標的を変更する。
「ワウゥ」
ルウはマナメルの魔法を受けて地面に落とされる。
「ルウ!」
優夜はすぐに立ち上がりルウを抱き抱える。
「ワフゥ」
ルウは力なく鳴く。
くっ。ルウはもう無理か。
優夜はカバンから回復瓶を取り出してルウに飲ませる。
「ルウはレフィアさんの所に戻って休んでてくれ」
「クゥ〜ン」
ルウはまるでごめんというかのように鳴く。
「任せろ。俺達が必ず倒す」
優夜は剣を抜き戦いに戻っていく。
この時、ある一匹の狼に変化が起こった。
ーー優夜の力になれなかった。
ーーまだ、足りない。
ーー優夜の力になりたい!
突然、狼を光が覆う。
狼はこの時自分が何者かを自覚する。
(僕は神狼。神に力を与えられた者)
(この力があれば、優夜の力になれる!)
一匹の狼はレフィアの元には行かず、優夜の元へ向かっていく。
「優夜!」
「なっ!ルウ!何で来た?」
優夜はルウが喋っている事には気付かず、ルウが来た事を不思議に思う。
「戦う!」
「駄目だ。ルウじゃまだ駄目だ」
ルウに怪我をさせたくない。その思いがルウの戦闘を拒否した。
「なら、待ってて。強くなってくる」
そう言い、ルウはレフィアの元に行く。
「ん?何だったんだ、一体」
優夜はルウの行動の意味が分からないまま戦闘に戻っていく。
「ハル、僕を殴って」
ルウは自分より大きいハルを見上げて言う。
ハルは混乱する。
いきなりルウが喋ったかと思えば、今度は殴れと言ってくるのだ。
「私も遂に頭がおかしくなったか」
ハルは足で頭を抱える。
「おかしくない。殴って」
ルウの真剣な表情にハルは疑問を浮かべる。
「何故そのような事をする?」
「強くなる。だから、お願い」
「何故強くなる?」
「優夜の力になりたい」
「……はあ。分かった。殴れば良いんだな。死んでも知らないぞ」
ハルはルウの言葉に遂に折れる。
「大丈夫。ちゃんと固くしてる」
「そうか。では、いくぞ」
ハルは足ででルウを薙ぎ払う。
「うっ!」
ルウは一瞬痛みに悶えるがすぐに立ち上がる。
「ありがと。ハル」
ルウは殴った相手に礼を言う。
「それで。ルウは何がしたかったのだ?」
「それは、今、始まる」
ルウの言葉を合図にルウを先程よりも大きい光が覆う。
「まさか、進化か」
目の前で行われた進化にハルは驚嘆する。
ルウはハルに殴ってもらう事でレベルを上げたのだ。いや、そもそも、攻撃を受けてレベルが上がるなんて話聞いた事無いんだが。
しばらくすると光は収まり、ルウはハルと同じくらいの大きさになっていた。
「じゃあ。行ってくる」
進化したルウはハルに告げる。
「ちょっと待て。私も白程では無いが同じ神獣のステータスは覗ける。行く前に見せてくれないか?」
「うん、良いよ」
ルウは即答する。
「では、見せてもらうぞ」
ハルは目に力を入れる。
種族 神狼
レベル 100
スキル 硬化(レベル4)(自分の体を硬質化出来る。自分以外も硬質化させられるが、効果は落ちる。レベルが上がると能力も上がる) 爪牙強化(レベル4)(自身の爪と牙を強化する。レベルが上がると能力も上がる)
魔法 神降ろし(神を自身の体に降ろす。魔力が尽きるまで効果は続く)
体力 8000/12000
攻撃力 12000
防御力 10000
俊敏 11000
魔力 5000/5000
弱点属性 ???
ハルはこのステータスを見て笑ってしまう。
進化とは元々神獣として全ステータスが1000程上がる程度のもの。ここまで成長するものではない。
そして何より、
「魔法の発現。それも神降ろしという聞いたこともない魔法」
やはり、私の頭はおかしくなったのか。
「行ってこいルウ。今のお前なら優夜の力になれる」
ルウはその言葉が嬉しかった。優夜の力になれるというのがこの上なく嬉しかった。
「ワウ!」
ルウは優夜の元へ走って行く。
十魔族も流石に無理だろうな。神を敵に回したのだから。
ハルはマナメルを見上げ、不敵な笑みを浮かべる。
【投稿予定】
6/11 60.決着




