58.十魔族再来
翌朝。
朝の日差しに起こされた優夜は目を擦りながら隣で寝ているティーネを見る。
「昨日はまさかティーネ達がご飯を作ってくれるとは。普通に美味かった」
「ワウ」
『うむ』
優夜の言葉に賛同する白とルウ。
ん?白達も食べてたのか?猫とか犬って人間と同じ物食べて良いの?
あ。ルウは犬じゃなくて狼か。
「さて。今日も休みにする事はみんなには言ってあるし。白、ルウ。行くぞ」
「ワウ!」
『うむ』
優夜が外に出る支度を始めた所でティーネが起きる。
「あれ?優夜様。もう出かけるのですか?」
「あ、ティーネ起きたんだ。おはよう」
「おはようございます。それで、何処に?」
ティーネはぺこりと頭を下げて挨拶を返す。
「ちょっと待ち合わせしててね」
優夜がそう言うとティーネはむっと顔をしかめる。
「む。優夜様から何やら見知らぬ女の匂いが……優夜様。その用事には私もついて行って良いですか?」
女の匂いって。ティーネは探偵か。
優夜はティーネの言葉に脳内でつっこみを入れた後、
「ああ、良いぞ」
ティーネの同行を許可した。
◇
「遅いですね。朝に来ると言っていたのですが」
レフィアは森の入り口でそわそわしながらある一人の男を待っていた。
優夜である。
彼女は朝早く、正確には午前4時ごろから待っている。そして、現在の時刻は午前6時。彼女は約2時間待っている事になる。
「まさか街で何かあったんじゃ……いや、でも、私が行ったら奴らに見つかっちゃうし……」
レフィアはどうしようかと考えていたその時。
「レフィアさんー。来たぞー」
聞き覚えのある声が聞こえ、レフィアはぱっと顔を明るくする。
「あ、優夜さん。来てくれたんですね」
「うん。待った?」
「……いえ。私も今来たところです」
本当は2時間待ってました。なんて言えるはずもなく、レフィアは嘘をついた。
「そっか」
「それで、優夜さん。そちらの方は?」
レフィアはティーネの事を聞く。
「ああ。こっちはティーネ。俺の仲間だ」
優夜は後ろにいるティーネを前に出す。
「初めまして」
ティーネはぺこりと頭を下げる。
「初めまして」
レフィアもそれに倣い頭を下げる。
「ところで、お二人はどういう関係で?」
「え」
関係。関係かあ。ティーネとの関係。
「主従関係かな」
「え……」
優夜の答えにレフィアは少し引く。
「あ。変な意味じゃないよ?普通の主従関係だよ?」
「普通の主従関係って何ですか……もう良いです。では行きましょう」
「え?あ、うん」
森の奥へ歩き出すレフィアに優夜達はついて行く。
◇
「着きました」
レフィアは足を止める。
「え?何も無いけど……」
優夜は辺りを見回すが休めそうな場所は無い。
「いえ。ここで大丈夫です。上を見てください」
優夜はレフィアに言われた通り上を見上げる。
すると、
「家が、浮いてる……!?」
空に浮かぶポツンと一軒家があった。
これにはティーネも口を開けてぽかんとしている。
「ふふ。驚いた?」
悪戯っぽく言うレフィア。
「ああ。これ一体どうなってるんだ?」
「……んー。内緒」
「まあ、言えないなら別に良いか」
「え?」
優夜の反応に意外そうな顔をするレフィア。
「ん?どうした?」
「あ、いや。何でもないです」
にこっと笑みを浮かべるレフィア。
「そっか。……それよりもさ。これどうやって入るの?」
空に家あるんだよ?
俺は縮地で行けそうだけど、レフィアさんとかティーネは無理じゃない?
「それなら大丈夫。そろそろ迎えが来るから」
「迎え?」
優夜は聞き返し上を見上げる。
「あ、来た」
それは誰の言葉だったろうか。けれど、優夜にはそんな事はどうでもよかった。
何故なら、空から狐が降ってきたからだ。
真っ白な体をした狐はスタッと着地するとレフィアの近くまで寄る。
「レフィア。この者達か?」
狐はレフィアに喋りかける。
ん?喋る?
この狐………。
「はい。そうですよ、ハル様」
「そうか。ではお主達。背中にの……れ……」
狐は優夜達の事を見るといきなり黙る。
「どうかしましたか?ハル様」
急に黙った狐を見て心配そうにするレフィア。
「お、お、お前は!」
狐は大声を上げると優夜の近くまで歩く。
「え?な、何だ?」
優夜はいきなりの事に動揺する。
「お主はその隣にいる猫の主か?」
「え?そうだけど……」
「そうか。そうか、プッ。あはははははは!」
狐は優夜に問うたと思いきや、急に爆笑する。
……この狐。大丈夫なのか?
「ハル様!?一体どうしたのですか」
「あー、すまぬ。一人で勝手に盛り上がっていたようだ。だが、お主なら大体察してあるのではないか?」
狐は優夜を指?差して言う。
ああ。やっぱりか。
「この狐は神の眷属。それで合ってるよな?白」
『うむ。此奴は我と同じ時に生まれた奴だ』
「おー。やっぱり分かってたな。そう。私は神孤。まあ、レフィア達からはハルって呼ばれておる。お主らもそう呼べ」
「それで。先程は何故笑っていたのですか?」
狐改めハルにティーネが問う。
「あー。それはな、プッ。そこの猫が人と一緒にいるからだ」
「えっと。どゆこと?」
「そこの猫はな、我は一人で十分だ。誰の力も借りん。とか言ってたのに、今は……プッ、あはははははははは!」
ハルは再び爆笑する。
『ぬう。先程から聞いておれば人の事を笑いおって。そういう貴様も、人間?あんな矮小な存在といられるか。などと言っておったではないか』
笑われる白は遂に反抗にでる。
「そ、それは昔の話だろう?今は違う」
『なら、我の事も昔の事だ。今は違う』
「『ぐぬぬぬぬぬ』」
睨み合う二匹。
「それで。いつあの家に連れてってくれるんだ?」
痺れを切らした優夜がハルに言う。
「おっと。そうだったな。すまぬ。では今行こう」
ハルが乗りやすいよう地面に座り、それに乗ろうとしたその時だった。
「くくくっ。何やら不穏な空気がしたので来てみれば。あの時の人間ですか」
「「「!?」」」
優夜達は一斉に上を向く。
そして、その顔を見た瞬間、優夜は憤怒に満ちた表情をする。
「お前はあの時の!」
「おや?覚えていたのですか。そうです。私は【紫炎】エンガ様直属十魔族。【怨】マナメルです」
十魔族という言葉にティーネと優夜以外が驚愕する。
「何しに来た?」
「目的を敵である貴方に言うとでも?」
マナメルは嘲笑するかのように言う。
「くっ」
あいつが誰かを傷つけたりするなら俺は戦うけど、そうじゃない場合、俺は戦えない。
「まあ、安心してください。今回の目的は貴方でもその隣の精霊妃でもありません。今回はそこにいる狐と女に用があるのです」
レフィアはここで悟る。
こいつが私とハルを追っていたのだと。
マナメルの言葉に優夜は剣を抜いた。
「そうか。なら、俺はレフィアさん達を守るためにお前を殺す」
優夜は剣を構え、冷淡に言い放った。
【投稿予定】
6/8 59.ルウの進化




