48.5森の中で
リンカがティーネと交代し、優夜はリンカと狩りをする事になった。
狩りを始めて少し経ち、二人とも一匹ずつウサギを仕留めていた。
「優夜。優夜は何で魔王討伐をしようと思ったの?」
リンカが優夜に問いかける。
「どうした?急に」
「いいから。優夜は何で魔王討伐をしようと思ったの?」
「んー。何で、か」
正直に言えば強制的にやらされたからだけど、リンカにホーラのこと言っても信じないよなあ。
「まあ、魔王討伐って言ってもほんとに魔王を殺すかは分からないけどな」
「え?」
優夜から予想外の言葉が飛び出し困惑するリンカ。
「どうゆう事?だって、魔王だよ?何で魔王を殺さないの?」
あ、それ言うとサザンガの事言わなきゃいけないのか。んー。別にいっか。どうせ、また会うだろうし。
「俺はな、レベル上げをしてた時にな、十魔族と知り合いになったんだ」
「へ?」
優夜の言っている事が分からず首を傾げるリンカ。
「最初は何だこいつって思ってたんだけど、話してく内に悪い奴じゃないんじゃ無いかって思ったんだ。それで、色々話してたら実は仲間思いの良い奴だって分かったんだ。それで、サザンガは俺に手を貸してやるって言ったんだ」
「そんな……」
リンカは優夜の言葉に信じられないという顔をする。
「信じられなかったらそれで良いさ。でも、俺が言いたいのはな、魔族だからって悪いと決めつけようとするのはやめろって事だ」
「!」
優夜の言葉でリンカは亡き父の言葉を思い出す。
『リンカ。お前は強い子だ。だが、人を印象で決めつけようとはするな。必ず自分の目で見て、自分で判断しろ。お前ならそれが出来る』
そう言い、父は私の頭を撫でた。
そして、それが父の最後の言葉だった。
「ごめん。優夜。僕は魔王を全然知らない。知らないのに勝手に決めつけてた」
「別に謝る事じゃないだろ」
優夜は笑って言う。
「僕、優夜の事信じるよ」
「そっか。ありがとな。……じゃあ狩り再開しようぜ。早くしないとティーネに怒られる」
「ふふっ。そうだね」
リンカは早くしようと言う優夜に笑って答える。
20分後。優夜とリンカはあれからウサギを二匹狩り、ティーネ達の元へ帰ろうとしていた時だった。
「リンカ。あそこにミノタウロスがいる」
優夜は草むらに隠れてミノタウロスがいる方向を指す。
「えっ?ミノタウロスは普通洞窟とかにいるはずなんだけど……」
リンカは優夜が伏せたのを見て自分も伏せる。
「そんな事言われても、ミノタウロスなんだもん」
俺がさっき鑑定してみるとこういう結果が出た。
種族 ミノタウロス(変異種)
レベル 120
スキル 咆哮(相手を怯ませる) 突進(勢いをつけて突進する)
体力 7000/7000
攻撃力 7000
防御力 6000
俊敏 5000
弱点属性 精霊
俺はこのステータスを見て、疑問に思った事をリンカに聞いてみた。
「リンカ。変異種って何だ?」
リンカは俺の問いを聞き答えずに舌打ちをする。
「え?どうした?」
「ああ、ごめん。変異種ってゆうのはね、モンスターに稀に起こる事で、変異種のモンスターは活動する場所から離れるんだ」
なるほど。だから森にミノタウロスがいるのか。
「それでね。ここからが厄介なんだけど。モンスターが変異種になると、必ずそれを統率するモンスターが現れるんだ」
「統率?」
「うん。ミノタウロスの場合はね、ミノタウロスキングっていうミノタウロスの上位個体が統率するの」
「へえ。それって強いのか?」
強かったら厄介だよな。ただでさえミノタウロスはBランクなんだから。
……ミノタウロスか。思えばミノタウロスのお陰でティーネに会えたんだっけ。
ミノタウロスには感謝だな。今は別だけど。
「優夜戦うつもり?ミノタウロスキングは強いよ。Bランクのミノタウロスを統率するモンスターだからね。ギルドのランクで確かSランク上位だったはずだよ」
うえ。Sランク上位かよ。
「戦うつもりならやめといた方が良いよ、優夜。みんながいれば勝てるかも知れないけど、この二人だと流石に無理だよ」
「そうだよなあ。ミノタウロスキングだけならまだしも、ミノタウロスもいるからなあ」
ミノタウロスキングだけなら俺だけでも倒せる。けど、その周りにミノタウロスがいるんだと別だ。
うーん。どうしよ。
「……まだ戦うつもり?」
リンカはどう戦うか悩んでいる優夜を見て呆れる。
「ああ。戦ってみたいんだよな。ミノタウロスキングと。最近はみんなでモンスターを倒す事が多いけど、俺は自分の力が知りたいんだ。どのくらい強くなったのかが」
ミノタウロスキングと戦う事を諦めない優夜にリンカも遂に心が折れる。
「はいはい。分かったよ。僕も協力するよ。でも、危なくなったらすぐに戻るからね」
「分かってる。仲間の命が一番だ」
「なら、良し」
リンカは頷くと立ち上がると優夜に手を差し伸べる。
「じゃあ行こう、優夜」
優夜は差し伸べられた手を掴み、
「ああ」
笑顔で頷くのだった。
◇
ミノタウロスキングを討伐する事にした二人は、森を散策し、少し開けた場所で寝ているミノタウロスキングを見つける。
「いたな…」
ミノタウロスキングを見つけた優夜は静かに呟く。
「それで、優夜。作戦はどうするの?」
今更になって思い出すリンカ。
「そうだな……とりあえずあいつのステータスを見てみるから待ってくれるか?」
「うん」
『鑑定(強)発動』
種族 ミノタウロスキング
レベル 200
スキル 突進(勢いをつけて突進する) 超回復(傷が修復しやすくなる) 召集(叫ぶ事で周囲にいるミノタウロス(変異種)を集める)
体力 15000/15000
攻撃力 15000
防御力 13000
俊敏 11000
弱点属性 精霊
「おお。分かっちゃいたけど、実際見ると凄いな。流石はミノタウロスキングってだけはあるか」
スキルを発動し終えた優夜にリンカが問いかける。
「どう?優夜。勝てそう?」
「うーん。ミノタウロスキングだけなら勝てそうだけど、召集ってスキルを使われたら不味いかも」
リンカの問いに悩みながら答える優夜。
「そう……。じゃあそのスキルを使わせないように戦おう。それと、ミノタウロスが一匹でも来たら逃げるからね」
リンカは提案したあと、優夜にもう一度釘を刺す。
「分かってるよ。作戦はそれで良いな。じゃあ……行くぞ!」
戦う方針が決まった二人は優夜の合図で草むらを出ると、ミノタウロスキングに先制攻撃を仕掛ける。
「精霊魔法『水霊の咆哮』」
「精霊魔法『火霊の咆哮』」
あれ?何かリンカまで無詠唱使えるようになってる。無詠唱ってそんな簡単に出来る事なの?
いや、まあ。俺も出来てるし簡単、なのかな?
優夜は素朴な疑問を胸に抱きながら魔法を放つ。
魔法が当たると安眠を妨害されたミノタウロスキングは激昂する。
『ブモオオオオオ!!』
「うわっ。完璧に怒ってるね。どうするの優夜?」
「いや、どうするって言われても。やるしかないだろ」
優夜達はミノタウロスキングから距離を取り更に魔法を撃ち込む。
『ブモオオオオオ!』
怒るミノタウロスキングは、優夜達に向かって突進をする。
「おっと」
「うわっ」
いきなりの攻撃に対して驚いたものの難無く躱す二人。
「随分拍子抜けだな。……ってこいつもう傷が修復してるぞ!?」
ミノタウロスキングの攻撃を躱した優夜は、魔法で傷ついたであろう皮膚を見ると既に傷は無くなっていた。
「え?どうゆう事?」
「多分、というかあのスキルだな。こいつは超回復ってスキルを持ってるんだ。まさかここまでとは。だって精霊魔法はこいつの弱点属性だぞ。それなのにもう回復してるんだぞ」
「じゃあ、諦める?」
リンカが驚いている優夜に聞く。
「それは無い。リンカ。作戦変更だ。俺が剣で攻撃するからリンカは魔法を撃ってくれ」
「どうして?」
「それは、あいつに回復する隙を与えないためだ!」
優夜はリンカの質問に答えると、二本の剣を抜きミノタウロスキング目掛けて走り、脇腹に斬り込む。
『ブモオオオオオ!』
攻撃を受けたミノタウロスキングは腕で優夜を振り払う。
「ちっ」
攻撃が止められた事に優夜は舌打ちをする。
「精霊魔法『火霊の咆哮』」
優夜が振り払われると同時にリンカが魔法を放つ。
「優夜。あんまり魔力が持たないから早く決めてね」
「分かった」
優夜はリンカの魔法に続き連続で剣を振るう。
『ブモオオオオオ!!』
優夜とリンカから集中砲火を受けたミノタウロスキングは膝をつく。
「よし、止めだ!」
優夜が膝をついたミノタウロスキングに止めを刺そうとした時だった。
『ブモオオオオオオオオオ!!!』
ミノタウロスキングはまるで誰かに助けを求めるかのように叫んだ。
「なんだ!?」
ミノタウロスキングの叫びに優夜はたじろぎ、ミノタウロスキングに逃げられてしまう。
「優夜!まずいよ。大きな足音がこっちに向かってくる!」
リンカは冷や汗を額に浮かべて優夜に訴える。
「くそ!さっきのが召集か。あとちょっとだったのに!」
優夜はミノタウロスキングを仕留めきれなかった事に悔しがる。
「優夜!」
「分かってるよ。逃げるぞ、リンカ!」
「うん!」
リンカは優夜の返事に満足したように頷き、二人はティーネの元へ戻ろうと走り出す。
二人が走り出してから少し経ち、二人とティーネ達の元まではあと少しの距離になっていた。
「あーあ。惜しかったなー」
「もう。そんな事言って。あと少しでミノタウロス達来てたんだよ?」
「悪かった。ごめん。でもいつかあいつを倒す!」
優夜はミノタウロスキングに対し対抗心を燃やすのだった。
「そうだね。僕ももう一度戦いたいよ。今度はティーネ達も一緒に、ね」
「そうだな」
それから二人はティーネ達の元へ戻り一緒に怒られたとさ。




