40.火の勇者リンカ
王都を出た俺達は今森で迷っていた。
「そういや、地図は白と一緒に宿に置いたままだったわ」
「何をしてるんですか優夜様」
優夜の失態に呆れるティーネ。
「う……すまん」
「過去の事をどうこう言っても仕方ありません。今はこの森をどう抜けるか考えましょう」
落ち込んでいる優夜に提案するエリス。
「そうだな。考え、か。うーん。……あっ、エリスの精霊妃って能力を使って他の精霊妃が何処に居るか分かるんだよな」
「よく知ってますね。優夜様。その事はあまり知られてないはずですが」
「ティーネが教えてくれたんだよ」
「なるほど」
俺の答えに納得するエリス。
「話を戻そう。つまり、他の精霊妃の居る場所に行けばわざわざ街に行かなくてもよくね?」
「「あ」」
この旅の目的は他の勇者、他の精霊妃を集める事だ。だからわざわざ街に行く必要は無いのだ。
「ちょっとやってみます『顕現せよ』」
エリスがフリューネを呼ぶと指示を出す。
「フリューネ。能力を使って他の精霊妃が何処に居るか教えてくれる?」
「了解ですわ。でもその前に」
フリューネは優夜の前に行くとその頬に口づけをする。
「「「!?」」」
その光景にフリューネ以外の全員が驚く。
「優夜様。私の名前はフリューネですわ」
フリューネは優夜の言った"エリスの精霊妃"の発言を訂正したのだった。
「あ、ごめん。これからはフリューネって呼ぶわ」
「そうしてくれると嬉しいですわ」
フリューネは笑みを浮かべて優夜に向かってウインクをする。
うっ。可愛い……。
不意に優夜は思ってしまった。
俺がそんな事を思っていると両脇に強い衝撃を受ける。
「ぐふっ」
俺はあまりの痛みにその場で膝をつく。
やべぇ。ガイルさんの攻撃より強かったぞ今。
「何をでれてるんですか優夜様。それとフリューネもあまり出過ぎた行為はしない様に!」
優夜を注意した後フリューネに釘を刺すエリス。
「あれは私からの好意の証ですわ主様」
「だから、主様じゃなくてエリスって呼んでって言ってるでしょ!」
「はいはい。エリス様」
「はいは一回!」
優夜はエリスとフリューネのやり取りを見ていると脇腹に受けた痛みを忘れてしまいそうだった。
「何をにやけてるんですか優夜様。私からも言う事はあるんですよ」
「はい……」
ティーネにとどめの一撃をくらいその場に倒れるのだった。
◇
「それで、フリューネ。他の精霊妃は何処に居るんだ?」
「はい。火の精霊妃はここから北東に10キロの所に。土の精霊妃は東に50キロの所に居ますわ」
「なるほど。どっちも王国内には居るんだな。よし、火の精霊妃の所に行くぞ」
「「「はい」」」
あれ?前は旅に出てすぐ白と合流できたんだけどな。うーん。まあ、何とかなるでしょ。
◇
〈アクリオン辺境伯邸〉
今は亡きアクリオン辺境伯邸の部屋の一室で、机に置かれた握り拳程の玉を覗く二人の女性は会話をしていた。
「メル。こっちに向かってくるよ勇者達」
髪の丈が肩ほどの赤髪、紅眼の女性は自分と違い髪が腰まであり豊満な胸を持つ女性に話かけていた。
「ん〜?勇者〜?そうね〜。ほっとけば良いんじゃない?敵じゃないんだし」
メルと呼ばれた女性はおっとりした口調で答える。
「うーん。メルが良いなら僕も良いけど……」
「相変わらず心配性ねリンカ」
「だって、何で勇者がこんな辺境に来るんだろ?」
リンカと呼ばれた女性は疑問を浮かべる。
「ん〜?魔王討伐の為じゃない?」
リンカの疑問に答えるメル。
「魔王討伐!?」
「ちょっと、声がでかいわよリンカ。抑えて」
「ごめん……。でも、魔王討伐って」
「なんか噂でね。魔王が復活したとか。勇者が現れたとかゆうのを聞いたのよ」
「そうじゃなくて、メルは、その、心配じゃないの?魔王討伐って言われて」
「心配はあるわよもちろん。でもね、これでも100年以上生きてきたからね。覚悟みたいなものがあるのよ」
「何それ。僕には分からないや。メルの言ってる事」
「今は分からなくてもいいのよ。リンカにも必ずそんな日が来るから」
「……そうかな……」
「うんうん。あ、勇者達すぐそこまで来てるわよ。そんな姿で良いの?リンカ」
リンカはメルの言葉に顔を赤くする。
リンカは寝巻き姿だったのだ。
「だめに決まってるでしょ。意地悪しないでよメル」
リンカは急いで着替えながらメルを叱る。
「ごめんなさい。リンカをからかうのって面白いから」
「もう……」
「すみませーん!誰か居ませんか」
家の扉を叩く音が聞こえた後若い男の声が聞こえた。
「さ、行こうリンカ。勇者がどんな人か見定めに」
「うん」
もし、勇者が悪い人なら私はメルを守るために勇者を殺す。
【投稿予定】
4/6 41.対談①




