36.優夜の更なる覚醒
「優夜様。勇者というのは……」
「本当だよ。リーナ達には面倒になりそうだから黙ってた。ごめん」
俺はガラルさんとリーナに向かって頭を下げる。
「それで、王女殿下。あなたの精霊妃はどこに?」
俺はそこらを見渡したがそれらしき人は見当たらない。まあ、多分あれだけど。
「精霊妃と契約しているなら分かっているはずですよ。『顕現せよ』」
その言葉にエリスの中から1人の女性が現れる。
その光景にまたも驚く王達。
「これは確認ですが王女殿下が風の勇者。そしてそちらが風の精霊妃で間違いありませんね?」
「はい。こちらはフリューネ。勇者様の精霊妃は?」
「俺のことは優夜と呼んでください。俺の精霊妃は隣にいるティーネだ」
ティーネが精霊妃という事実に驚くガラルとリーナ。
「ごめんなさい。これからは優夜様と呼びますね」
いや、様も要らないんだが。
「ティーネさんは精霊妃だったのですか?」
ティーネに問いかけるリーナ。
「はい。黙っていてすみません」
ティーネは申し訳なさそうに少し俯く。
「で、ここからが本題です。王女殿下。俺に力を貸してくれませんか?」
「それは、魔王討伐のため?」
「……はい」
「「「「!?」」」」
優夜とエリスの会話に驚愕する王達。
……この人達。今日で何回驚くんだろう。と、優夜は思った。
「待て」
ここで王が口を開いた。
「優夜といったか。そなたは魔王討伐のためと言ったが本当に魔王はいるのか?」
「はい」
「そうか……。ならエリスを連れて行くのに反対はしない」
あれ?ほんとはもっと反対されると思ったけど違うんだ"王様"は。
「駄目です!エリスは絶対に行かせません」
王妃殿下は激おこかぁ。どうしよう。
「お母様。離してください。私は優夜様と一緒に行きたいのです」
「なんと!勇者だろうとなんだろうとどこの馬の骨ともわからない者にエリスは任せられません」
ん?それって俺にエリスを任せられる強さがあればいいって事じゃね。
なら簡単だ。
「王妃殿下。決闘をさせてください。それで勝てたならば俺にエリスをください」
「分かりました。決闘は明日。王都にある決闘場で行います。この戦いで負けたらエリスからは手を引いてくださいね」
「はい。では今日はここで。明日またお会いしましょう」
俺は王妃殿下にそう言い残し王の間を出て行く。
この決闘。勝たせてもらうぞ。王妃殿下。
◇
優夜達が去った後の王の間。
「ザグレス。今すぐに近衛騎士隊長をここへ呼んで」
「かしこまりました」
ザグレスと呼ばれた執事は王妃殿下に辞儀をすると王の間を出て行く。
「おい、エリーゼ。まさか決闘に近衛騎士長を出すつもりか?」
「当たり前です。あんな小童にエリスは渡しません」
「お母様近衛騎士隊長はギルドのランクでSSランク相当ですよ。優夜様がどれだけ強くても流石に無理があります」
「近衛騎士隊長を倒せなければ魔王討伐など言語道断。もし負けたならその時は力不足だったという事です」
「そんな……」
エリスは諦めたように項垂れる。
(優夜様。負けないで)
エリスは心の中で優夜を応援した。
◇
フェンリオ家に戻った優夜はガラルに呼び出されていた。
「ガラルさん。来ました」
「入れ」
優夜はガラルの自室の扉を開けて中に入る。
「優夜。決闘を申し込んだが勝ち目はあるのか?」
「それは相手によりますね」
「優夜の相手は恐らく近衛騎士隊長だ。実力はギルドのランクでSSランク相当だ」
「SSランク……」
優夜はその言葉に息を飲む。
当たり前だ。SSランクという事は神風龍に一人で戦うという事だ。
「それを踏まえてもう一度聞くぞ。優夜。勝ち目はあるのか?」
「SSランクとなると恐らく無理ですね」
SSランクとはいえ神風龍よりは劣るだろうが今の俺では無理だ。
「そうか。仕方が無い。優夜にフェンリオ家の秘宝を渡そう」
「えっ?」
「この家には王族にも見せていない。秘宝のオーブがある。その力は魔法適性の増加」
「なっ!?」
優夜が驚くのも無理はない。魔法適性は生まれた時に決まり、一生変えることのできないものだ。それを増やせるというならば世界中の権力者が狙いに来るだろう。
「増やせる魔法適性は一つだけだがいいか?」
「そんな凄い物を俺なんかに使っていいんですか?」
「元よりフェンリオ家は戦いから疎遠している。そんな家がオーブを持っていても宝の持ち腐れだ。ならばここで優夜に使った方が良い」
「……分かりました。有り難く受け取ります」
「うん。そうしてくれると助かる。じゃあ、オーブを持ってくるから少し待っててくれ」
俺は言われた通り待っていると少しして玉を持ったガラルさんが戻ってきた。
「それがオーブですか……」
ガラルさんの持っている玉はとてつもない魔力を含んでいる事を除けけばごく普通な玉だ。
「そうだ。これで魔法適性を増やすことができる」
「増やす魔法適性は選ぶ事は出来るんですか?」
「いや、出来ない。開放されてない適性の内どれか一つを開放するだけだ」
という事は、俺の場合火と風と水を持ってるから開放するのは土か闇か光のどれかだな。
「今すぐやりますか?」
「それも出来るがどうする?」
「今すぐお願いします」
「分かった。こっちに来い。儀式を始める」
ガラルについて行くと魔法陣が真ん中に描かれた広い部屋に着く。
「優夜。あの魔法陣の真ん中に立ってこのオーブに魔力を込めろ。それで儀式は終わりだ」
随分あっけないな。と思ったが、この際どうでも良い。
俺は魔法陣の真ん中に立ち。ガラルさんの合図を待つ。
「じゃあ始めてくれ」
俺は合図と同時にオーブへありったけの魔力を込めていく。
「ちょっ、優夜止めろ!」
ガラルさんの静止を聞くも時はすでに遅し、オーブが強烈な光を放ち俺は意識を失う。
◇
「……夜、さま。優、夜様。優夜様。優夜様!」
俺は騒がしい声に起こされ目を覚ます。
目を開けるとそこには目の辺りを腫らしたリーナとティーネがいた。
「どうしたんだ。二人とも」
「心配したんですよ優夜様。お父様に優夜様が倒れたと聞いた時は血の気が引きました」
ああ、俺儀式の途中で意識を失ってたのか。
「ありがとなリーナ。ガラルさん儀式はどうなったんですか?」
「優夜が途中で倒れたからな。恐らく失敗だろう」
「そんな……」
俺はその事実を信じきれずステータスを確認する。
『ステータスオープン』
名前 神崎優夜
年齢 17
レベル 220
スキル 身体能力強化(レベル4) 縮地(一蹴りで100メートルまで移動する) 魔剣生成(魔剣を生成する) テイミング(自分よりレベルの低いモンスターをテイムする) 覚醒者(攻撃力を30秒だけ3倍にする) 神の願い(常時発動。魔の生き物に対して威力が2倍になる。逆に魔の生き物からの攻撃は半減する) 鑑定(強)(全ての物のステータスを確認できる) 二刀流(二本の剣を使う場合攻撃力が1.5倍になる) 斬波(斬撃に魔力を含ませる事で波にして斬撃を飛ばす)
魔法 火属性魔法(上位) 風属性魔法(上位) 水属性魔法(上位) 土属性魔法(小位) 闇属性魔法(小位) 光属性魔法(小位) 回復魔法(最上位) 神聖魔法(神位) 精霊魔法(神位)
体力 12000/12000
攻撃力 12000
防御力 12000
俊敏 12000(+6000)
運 ∞
魔力16000/16000
…………あれ?なんか3つも増えたんだけど。
「ガラルさん?儀式は失敗なんじゃ……」
「そのはずだが、何かあったか?」
「なんか魔法が3つ増えてるけど」
「は?」
優夜の言葉に口を開けてぽかんとするガラル。
「それ、本当か?」
「はい」
「…………優夜。儀式の時にオーブに何かしたか?」
「えっと、持ってる魔力を全て込めたことかな?」
「優夜。お前の魔力量は?」
「16000です」
「これは仮説だが、優夜が3つの適性を開放させたのは優夜が持つ多量の魔力をオーブに全て込めた事でオーブが過剰に反応したから。というのが今出せる結論だ」
「なるほど」
「まあ、別に悪いことが起きた訳でもないし今は喜ぼう」
「そうですね」
「では優夜。新しい魔法の特訓をするぞ。明日の決闘のためにな」
「はい」
この日の夜。優夜は土、闇、光属性魔法を全て上位まで使えるようになった。
※お知らせ
3/22の投稿をお休みさせて頂きます。
【投稿予定】
3/25 37.決闘




