34.フェンリオ家での一夜
「優夜様どうぞ中にお入りください」
「お、おう」
いやぁ、外から見て分かってた事だけどやっぱ広いな。貴族の家ってやっぱシャンデリアとかあるんだな。床に敷いてある絨毯とか絶対高い奴だぞこれ。
俺は庶民が貴族の家に来たなら必ず思うだろう感想を頭に浮かべながらリーナに案内された部屋へ入る。
「ここは貴族の家なら必ずある来客用の部屋です。すぐにお父様を呼んで来ますので少しお待ち下さい」
「お、おう」
リーナが出て行った後俺とティーネは部屋にあるテーブルの周りに置かれてる椅子に座る。
「この部屋俺達が泊まってる宿の部屋よりも広いぞ」
俺が今泊まってる宿は王都で人気の宿で朝、夜の飯付きで一泊銀貨2枚だ。金は結構あるからあんま気にして無いけど普通に高い。まあ、その分部屋は広くて綺麗で飯はうまいから良いけど。
で、俺が何を言いたいのかというと王都でも人気な高い宿の部屋よりも広い部屋を多分20部屋くらいは持ってるリーナの家がやばいって事だ。いや、やばい通り越して怖いだな。貴族こえぇ……。
と、世の中の庶民の気持ちを代弁し終えた所で部屋にリーナとおっさんが入って来た。
「お父様。こちらが私の命を救ってくれた優夜様とティーネさんです」
「おおっ!君が優夜君か」
「は、はい」
訂正します。おっさんでは無く公爵様でした。
「私はリーナの父、ガラル・フェンリオだ。娘からは話を聞いているよ。何でもオーク二体を一瞬で片付けてしまったんだってね」
「え、ええ」
やばい、家に入ってからまともに話せて無いぞ。何か喋らなくては……。
「あ、あの今日はリーナに呼ばれて来たんですけど何かあるのでは?」
「おっと。確かにそうだ。済まないね、一人で盛り上がってしまって。もう少しすれば妻も帰ってくるからその時にまた話そう」
ガラルはそう言うと懐から一枚の紙を取り出して優夜に渡す。
紙には招待状と書かれていて、右端には赤いハートの中に黄金の王冠が描かれた印が押されていた。
「これは王族と謁見する為に必要な物だ。右端に王家の紋章が押されてるだろう」
ああ、これ王家の紋章だったのか。という事は、
「リーナは優夜君にお礼がしたいと王城まで行って陛下に直訴したのだよ」
「リーナありがとな。無茶なお願いだったのに」
「いえ、優夜様のお願いですもの。確かに無茶でしたがこうやって優夜様にお礼が出来たのですからいいんです」
「だが、陛下への直訴はこれきりにしておけよ。陛下は忙しいからな」
「はい……」
ガラルに叱られしゅんとなるリーナ。
良い親子だな。とその光景を見て優夜は思うのだった。陛下は忙しいとか言いながらもガラルさんはリーナの事を心配してるんだろうな。
「では、俺はこれで」
「いやいや、せっかく来たのだから今日は泊まっていきたまえ。この家には空き部屋など多くある。それに妻の手料理は美味いぞ」
「え、ですが俺なんかが泊まっても良いんですか?」
「優夜君はリーナの恩人だろう。なら私からも何か礼がしたい。受け取ってくれるか?」
俺はガラルさんの厚意をむげにする事はできず今日は泊まる事にした。
あ、でも白どうしよ。宿に置いて来たままだわ。ま、いっか。起きない白が悪い。俺は悪く無いはず。
◇
あの後ガラルさんの妻……リーズさんが帰って来て夕食を食べる事になった。
リーズさんも俺が泊まる事に反対はしなかったため俺は少し気が和らいだ。ただ、
「娘を襲うならいつでもどうぞ」
と、泊まる事に反対するどころか大賛成した挙句母親からまさかの発言が繰り出された事には驚いたけどな。
………俺はそんな事しないぞ。俺はまだ未成年だし。あっ、この世界では15歳で成人なんだっけ。いやいや、落ち着け俺。リーナはただの友達だ。リーナは美人で巨乳(推定F)で公爵家の令嬢で俺の事を嫌ってはいないどころか何故か好意を向けられている。それでも、だ。俺には……そう、勇者という役目がある。色恋沙汰はそれが終わってからだ。
俺が脳内で目の前の問題に結論を出した所で食事の準備が出来たと執事さんに呼ばれたためティーネと一緒に食堂に向かった。
食堂へ着くと縦に長く作られたテーブルには人数分の料理が並べられていて俺とティーネ以外はすでに椅子に座っていた。
俺とティーネは自分達が遅れている事に気付きすぐリーナの目の前の椅子に腰掛ける。
一番奥がガラルさんでその隣に俺とリーナ、そしてその隣にティーネとリーズさんという席順だ。
「遅れてすみません」
「なに、これぐらい良いさ。でも気をつけた方がいい。私の家は貴族の中でもあまり気にかけない方だが他の公爵家達はそういうところに敏感だから」
「ご忠告ありがとうございます」
「それではみんな集まった事だし料理が冷めないうちに早く食べましょう」
早く食べるように急かすリーズさん。
「そうだな。では、リーナの無事と優夜君の未来に乾杯!」
「「「「乾杯!」」」」
「ちょっと待ったー!」
「ん?優夜君どうかしたかい?」
「俺の未来ってどうゆう事ですか?」
「そのままの意味だよ。リーナの命を救ってくれた優夜君には輝かしい未来が待っている事を願ってね」
「本当ですか………?」
「ほんとほんと。そんな深い意味なんてないさ」
俺に話しかけてるガラルさんは俺と目を合わせようとせず別に方向を向いている。
「なら、ちゃんと目を合わせて言って下さいよ」
「………ささ、優夜君も早く食べよう。せっかく妻が作ってくれた料理が冷めてしまうだろう」
追求したい気持ちはあったがそれはリーズさんに悪いと思い俺は料理を食べる事にした。
◇
その夜。俺はガラルさんに酒を勧められ断る事も出来ずそのまま勢いで飲み、見事に酔っ払った俺はベッドに行くとそのまま倒れ込み意識を失った。
【投稿予定】
3/13 35.風の王女




