19.精霊の里
ヒュドラ討伐から3日が経った。儀式の準備は今日で完了する。俺は今日、ティーネを取り戻す。それから、魔王をぶっ飛ばしに行く。
久々に目標を大幅変更します。
①【ティーネを取り戻す】
②【仲間を集める】
③【魔王を倒す】
④【家買ってのんびり暮らす】
え?なんで魔王をぶっ飛ばしに行くか?
勇者だからっていうのもある。だけど、一番の理由はティーネのためだな。だってさ、ティーネって魔王がいるせいで死ぬとか言ってんだろ。だったら魔王倒せば終わりじゃね?
そして今俺は最後にティーネと会った場所に来ていた。目の前には大きな鉄の扉がある。
「この扉の先にティーネがいる。絶対にティーネを取り戻す。絶対に死なせたりしない」
そう言い、俺は扉を開ける。待ってろ、ティーネ。今行くからな。
◇
今日は儀式の日。私は今日死に、新たな精霊妃が誕生する。
そういえば、ここ最近、何も食べてないなぁ。
「最後に美味しいものを食べたかったな」
前に、優夜様と街を回った時は楽しかったな。
………何考えてるんだろ、私。あと数時間もすれば死ぬっていうのに。
もう、目を閉じて眠っていよう。そうすれば何も考えなくてすむ。胸が痛む思いをしなくてすむ。そう自分に説得して目を閉じようとした、その時だった。目の前に優夜様が現れた。私は1週間振りの優夜様に涙が溢れそうになる。
「なんで…………」
「よう。ティーネ、迎えに来た」
なんで、来てしまうんですか。あと少しでけじめをつけられたのに。今来てしまったら、意味無いじゃないですか。今来てしまったら、
「ティーネ。魔王の事は俺に任せろ」
頼りたくなっちゃうじゃないですか。でも、駄目ですよ。優夜様は巻き込まない。
「………なんで、来たんですか」
「迎えに来た」
「それだけ………ですか?」
「ああ」
「もう、ほっといて下さいよ。優夜様には関係ないですから」
「いや、100パー関係あるぞ」
「え?」
「知ってるかティーネ。俺な、勇者になったんだ。だから、魔王は俺が倒さないといけないんだ」
「え?うそっ。そんな………」
「それとな、パーティを結成したんだ。パーティの上限メンバーは5人で、空きがあと一枠空いてるんだ。だから、有能な人材を勝手に死なせるわけにはいかないだろ」
「そんな…………」
「もう一度言う。俺に全部任せて帰って来い。ティーネ」
「………………はい」
私は涙が溢れている自分の目を無視し、笑顔で答える。
◇
ティーネを説得した俺は里の中で一番の権力を持つ精霊に話をする為に里の中でも一際大きい家に来ていた。
「ここか………」
俺は里の中でも一際大きい家の前で止まった。
扉をノックすると、「どうぞ」と言う声が聞こえたので中に入ると、そこにいたのは、若い女性だった。
「貴方がこの里のリーダーですか?」
「それを答える前に貴方が何者かを言うべきでは?」
「そうですね、すみません。俺は優夜と言いティーネの主です」
「そう。ティーネの。じゃあ質問に答えましょうか。私はルルよ。よろしくね、優夜くん」
「はい。よろしくお願いします」
ルルさんか。身長はティーネと同じくらいで髪も同じ青だな。だけどティーネと違うのは、出る所は出てて、引っ込む所は引っ込んでいる所だな。服は普通なのに何故か凄くエロい。年齢は、20代後半ってとこか。16歳の元高校生には刺激的すぎる………!
そんな事を考えていると隣にいるティーネに脇腹をつねられる。
痛い痛い痛い痛い。ティーネってこんな力強いの?てか、なんでつねられた?
「なんで、つねってくるんだよ」
「知りません。自分に聞いてみて下さい」
ティーネはそう言い、そっぽを向いてしまった。
ええ、なんで?
「あの、どうかしたのかしら?」
「い、いえ、何もありません」
「そう。それで、貴方達が来た理由ってティーネの事でしょう」
「はい、そうです。単刀直入に言います。ティーネの儀式を今すぐ、中止して下さい」
「良いわよ」
「やっぱ、駄目ですよね……って良いの?」
つい、敬語を使わずに喋ってしまった。
「あの、すみません。驚いて、つい普通の話し方にしてしまいました」
「別に敬語じゃなくても良いわよ。気にしないし。優夜くんの好きな喋り方で良いわ」
「あ、そうですか。ありがとうございます」
「それじゃあ、ティーネの話に戻りましょう」
「はい。あの、儀式を中止するって、理由を聞いても良いですか?」
「理由ね。まあ、簡単に言って仕舞えばティーネが好きだから、かしら」
「え?」
何その理由。
「もう少し具体的に言うとね、この里のみんながティーネの事を好きなのよ。だから、儀式を中止するのは嬉しい事なの」
「えっと、じゃあ、なんで儀式を最初から止めなかったんですか?」
「だって、ティーネの初めてのお願いだったし、里に帰って来た時深刻そうな顔をしていたんだもん」
だもんって。だんだん喋り方が変わってきたぞ。てか、初めてのお願いだったとしても反対はしろよ。
「まあ、そうゆう訳だから、気にしなくて良いわ。これからもティーネをよろしくね」
「はい。ありがとうございました」
俺はルルさんに礼を言い外に出た時だった。
目の前にある家が全て燃えていた。
「何だ、これ!?」
俺はその光景に驚き、叫んだ。
「どうしたの?」
「どうしました、優夜様」
俺の声を聞きルルさんとティーネがすぐに来る。
そして、俺と同じ表情になる。
「俺達の見ていない時に一体何があったんだ?」
【投稿予定】
1/15 20.十魔族襲撃