18.白猫団VSヒュドラ③
新しいメンバー白を迎え、白猫団を結成した俺達は今からヒュドラに挑もうとしていた。
「まず、役割分担だ。俺とグレンが前衛、ミルは魔法で援護、そしてユナは白と一緒に支援魔法をかけてくれ」
『おい。我も戦えるぞ』
「いいんだ。ここは任せろ」
『ぬぅ………。分かった。その言葉信じるぞ』
「ああ。戦いの前に嘘なんてつかないさ」
「優夜くん。私は、具体的には何をすれば良いのかな?」
「ああ、ミルにはヒュドラの弱点属性の魔法で援護をしてくれ」
「え?でも、まだ弱点属性なんて分かってないよね」
「ああ、だから俺が確認してから言う。それまで待機だ」
「うん、それは良いけど。もし、弱点属性が私の使えない属性だったらどうするの?」
「その時は、ユナと一緒に支援に当たってくれ」
「うん。分かった」
「次に、グレンは俺と一緒にヒュドラを攻撃する。ヒュドラは九つの首を全て殺さないと死なないからな。頼りにしてるぞ」
「おう。任せとけ」
そう言い、俺とグレンは拳をぶつけて、笑い合う。
「仲良いな〜二人とも」
そこに水を差すようにミルが言ってくる。
「はは、………じゃあみんな行くぞ!」
俺はゆるんだ顔を引き締める。
「「「応!」」」
『応』
《霧の洞窟 ボス部屋》
ボス部屋の中は第二層よりも魔素が濃くなっていた。そのせいか、ユナが少し苦しそうだった。
流石にSランク指定ダンジョンのボス部屋はCランク級冒険者にはきつかったか。
「ユナ、大丈夫か?」
「大丈夫、です」
やはり苦しそうだ。少し心配だな。
「白、ユナを頼む」
『分かった。小娘は我に任せて優夜はヒュドラに集中しろ』
白の返事にこくりと頷いた、その時だった。天井から何かが落ちてきた。
ズシーーーーン!!
恐らくヒュドラだろう。
「みんな、気を引き締めろ」
その声とともに3人の表情が変わる。
そして、落ちてきた何かが声を上げた。
「シャアァアアアアア!!」
これ、完全に蛇じゃん。てことは、ヒュドラで決まりか。
「先頭開始だ!」
先手必勝。『鑑定(強)発動』
種族 ヒュドラ
レベル 160
スキル 威嚇(相手を怯ませる。相手の攻撃力を10%下げる) 再生(傷のついた部分を再生する。既に死んでいる場合は再生出来ない)
体力 24000/24000
攻撃力 24000
防御力 24000
俊敏 20000
魔力 8000/8000
弱点属性 火
よし、思った以上に分かったな。魔力以外が高いな。だが、弱点属性が火なのはついてるな。やっぱ運が∞だからか?それに俊敏だけならそこまで差はない。速さだけならついていける。
「ミル、グレン。弱点属性は火だ。俺があいつの気を引くから、そのうちに魔法を一番強いやつを撃ち込め」
「「了解」」
『身体強化(レベル2)発動』よし、行くぞ。
「こっち向け蛇野郎」
そう言いながらヒュドラの頭を聖剣でぶっ叩く。その途端ヒュドラの悲鳴が部屋内に響く。
「シュアァアアアア!!」
ヒュドラの目線が俺を捉える。そして、お前か!とばかりに叫ぶ。
「シャルアアアアア!!」
よし、このままあいつの注意を引けば――。
ミル達が魔法の準備をし始めた途端ヒュドラの動きが止まり、怯えるように唸り声を上げる。
「シャルルルルル!」
なっ、このままだとミルとグレンが危ない!
「お前の相手は俺だ!」
俺はヒュドラの注意を引くために首を一本切り落とす。
ザシュッと、切れる音とともにヒュドラの悲鳴が聞こえる。
「シュアァアアアアアアアアア!!」
さっきよりも効いたみたいだ。ヒュドラの標的が完全に俺になる。よし、来い。
「準備出来たぞ!優夜」
ナイスタイミングだ。
「いいぞ。ぶっ放せ!」
その掛け声と同時にグレン達のいる方向から二対の炎の龍が向かってくる。そして、ヒュドラに当たると、今日一番の悲鳴が聞こえる。
「シュアァアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
「やったか」
煙がなくなり見えた姿は首が四つ残ったヒュドラだった。
「ははは、まじかよ……」
くそっ。まだ足りなかったか。首がもう回復し始めてる。早く次の手を打たないと。
「ミルはもう一度魔法の準備を、ユナと白はミルの魔法を支援しろ。グレンは俺と一緒に畳み掛けるぞ。弱ってる今がチャンスだ!」
「「「了解」」」
『了解だ』
返事が返って来るとミルの方は魔法陣が展開され、グレンは俺の近くに来た。
「優夜、どうする」
「やる事は決まってる。ミルが魔法を打つまで俺とグレンで出来る限り首を落とす」
「分かった」
「行くぞ」
その声と同時に俺とグレンは走る。ここで決める!
『覚醒者発動』『魔剣生成発動』これが今俺の出来る最高の力だ。
俺は聖剣と魔剣をヒュドラに向かって斬りつける。
「シャアァアアアアアアアアア!!」
よし、首を二つ落とした。
「グレン!」
「応!」
返事とともにグレンは剣に炎を纏いヒュドラの首を切り落とす。あれ?グレンってそんな技使えたの?
「シャアァアアアアア!!」
よし、あと一つ。
「優夜くん。準備出来たよ!」
「よし、ミル。ぶっ放せ!!」
その言葉に呼応するかのように特大の龍がヒュドラの首目掛けて走る。そして、
「シャアァアアアアアアアアアァァァァァ」
ヒュドラの息切れる声が聞こえてくる。さらに、数秒遅れて、ズドーーーン!とヒュドラが倒れる音が聞こえる。
やった。
「やったぞー!!」
「「「おおおおーーーー!」」」
こうして、白猫団の初陣は勝利の形で幕を閉じた。
〜翌日〜
白猫団のメンバーは事後報告をする為にギルド長室に来ていた。
「この度はご苦労だったな」
「はい、今回は流石に疲れました。だけど、無事討伐できて良かったです」
「ふうぅ、私は疲れたよー。そうだ、今日は白猫団のメンバーご飯食べに行かない?」
ミルはマイペースだよなぁ。
「ん?白猫団?」
ミルの言葉にフェザードさんが不思議そうに首を傾げている。まだ、白猫団の事言ってないんだった。
「白猫団は俺達のパーティ名ですよ。ヒュドラ討伐の時に時々知り合った神猫をシンボルにしたんです」
「そうか。ん?待て、今なんて言った?」
「え?神猫、ですか?」
「そうか。神猫か」
フェザードさんは神猫の名前を聞き頭に手を当てる。
「フェザードさん。神猫の事、知ってるんですか?」
「ああ、これは神話なんだが人魔戦争の時代、女神は自分の眷属たる獣に力を分け与えたんだ。そして、分け与えられた獣は、猫、狼、鷲、狐、虎の五体だったそうだ」
「なるほど、つまり神猫はその内の一体という訳か」
「そういう事だ。まっ、別に危害を加えなければ特に問題は無い。優夜、今日は休め。金をやるからパーティメンバーで美味いもんでも食ってこい」
「フェザードさん。ありがとうございます」
「やったーーー」
「よし、じゃあみんな行こうか」
「「はい」」
「おう」
『うむ』
よし、今日は休む。それからティーネの所に行こう。必ず取り戻してみせる。
【投稿予定】
1/10 18.5.白猫団メンバーのステータス公開
1/12 19.精霊の里