13.街を回ります
みんなでワイワイパーティーをした次の日俺はティーネと一緒に街に来ていた。
「やっと来れましたね、優夜様。今日はいろんな所に行きましょう」
「ああ。そうだな」
ティーネには結構迷惑をかけたからな。今日ぐらいはティーネの言う事を聞こう。俺はそう心に決めていた。
「それで、今日はどこに行くんだ?そんなに張り切ってるんならどこか行く場所を決めてるんだろ?」
「いえ、まったく」
ええー。そんなきっぱり言い切られても困るんだが。
「あ、ですが、ひとつ行きたい場所はありますね」
「お、そうか。その行きたい場所がどこか聞いていいか?」
「いえ、それは着いてからのお楽しみです」
ええ。まっいっか。着けばどうせ分かるしな。
「それで、行きたい場所はそこだけか?」
「まぁそうなりますが、街の中にある店や屋台に行ってみたいですね」
「よし、分かった。じゃあ、まずは……そうだな、今は昼だし腹ごしらえとするか」
「そうですね」
そして、俺とティーネの意見が一致した事もあり、この街名物の肉料理を食べる事にした。
料理を食べた俺とティーネは一息つく事にした。
「ティーネが肉料理が好きだなんて意外だったな」
「幻滅しましたか?」
「いや、全然。むしろティーネの好きな物が分かって良かったよ」
「そうですか、ありがとうございます」
「それで、これからどうする?」
「街の店や屋台に行きましょう」
「そういえばさっき言ってたな」
「………優夜様」
ティーネが俺のことを半眼で見てきた。
「ん?どうした?」
「いえ、別に。ただ、優夜様の記憶力を少し疑っただけです」
「うっ。あれは忘れてた訳じゃないぞ。ただ確認で言っただけだ」
「……では、そういう事にしておきましょう」
まだティーネが疑ってるな……。何か話題を変えなくては。そう考えてる時に店が見えてきた。
「お、店が見えてきたぞ」
「そうですね、では行きましょう優夜様」
「ああ。行こうか」
◇
優夜とティーネが店や屋台を回った後、優夜は宿に忘れ物を思い出したと言い戻っているためティーネは今1人でいた。
………優夜様。あの人は何故私にここまで良くしてくれるのでしょうか?思い返してみれば出会った時もそうでした。優夜様は私が精霊妃だという事を知っても普通に接してくれました。
この世界において精霊族は貴重です。昔は人間とも仲良く暮らせていたらしいのですが、今は違います。精霊族は200年前の人魔戦争で、数が激減してしまったので精霊族の価値が物凄く上がったのです。
優夜様は私の事を普通の女の子として接してくれます。それは何故でしょうか?私を奴隷商人などに売りつければ一生遊んで暮らせるほどの金が手に入るというのに。
私はもう疲れました。生きるのに疲れました。ですからせめて最後は誰かの役に立ちたい。そう思っていました。ですが、優夜様といると一緒にいたいと思えてしまう。生きるのが楽しいと思えてしまう。優夜様と一緒にいると胸の辺りがキュッとする感じがして痛くなってきます。この思いはなんなのでしょうか?優夜様は一体何者なのでしょうか?優夜様と一緒にいる時間がもっと続けばいいと思っていました。ですがその時間は今日で終わりです。今日で全て終わりなんです。何故なら今日で私は――。
「ティーネ、すまん。忘れ物が意外に見つからなくてさ」
「いえ、大丈夫ですよ。気にしないでください」
「そうか、ありがとう。じゃあはい、これ、プレゼント」
「え?」
「ティーネとはまだ出会ってから全然経ってないけど、色々助けてもらってるしな。だからプレゼント。開けてみてよ」
そう言われて渡された箱を開けてみると青い宝石が輝くペンダントが入っていた。
「これは?」
「いや、ティーネに合う物がないかなって探してたらさ、これが一番似合うんじゃないかなって思って結構高かったけどぎりぎり俺の手持ちで足りたしな」
何故でしょう。自然と涙が溢れてきます。この気持ちはなんなのでしょうか?何故涙が溢れるのでしょうか?
「お、おい。なんで泣いてんだよ」
「すみません。嬉しくて、つい涙が溢れてしまいました。優夜様。ありがとうございます。このペンダントは一生大切にします」
「ああ。そうか、喜んでもらえたなら良かったよ」
確かにこの贈り物は嬉しかったです。とんでもないサプライズです。ですが、もう決めたのです。ごめんなさい、優夜様。
「優夜様。最後に行きたい場所があります」
「最初に言ってた場所か?」
「はい。優夜様、付いて来てください」
「分かった。案内してくれ」
◇
ティーネに案内され連れて来られたのは森だった。
「おい、ティーネ。ここで本当に合ってるのか?」
「はい。合ってますよ」
「じゃあ、何のために――」
俺はそこで話す口を止めた。何故なら、ティーネの顔が今までで一番暗かったからだ。
「優夜様、少し聞いてもらえますか?ある精霊の話を」
【投稿予定】
12/28 14.ティーネの過去