104.200年前の勇者再臨
投稿1日遅れました。本当にすみません。
エリーが屋敷に入った頃。優夜達はダイヤモンドのみで作られた広場に着いた。
「ここがこのダンジョンの一番奥か……?」
「分かりません。ですが、気を付けて下さい。ここには私達以外の精霊の気配があります」
ティーネの言葉に優夜は首を傾げる。
「精霊?ダンジョンの中なのにか?」
「はい。場所までは分かりませんが確かに精霊の気配がします」
「僕もそう思う。だって喋れるから」
え、ルウが喋れるのってそうゆうシステムなの?進化したら喋れるんじゃなかったの。まあ、久しぶりに喋ってるの見れたからいっか。
「そうか。俺は――ッ!!?」
言葉を口にしようとした優夜は、急に頭を抱えるとその場に倒れた。
「「優夜様!?」
「「優夜!?」」
「優夜さん!?」
「優夜くん!?」
『優夜!?』
「優夜!??」
優夜が倒れたの見ると全員が発狂に似た大声を出した。
「大…丈夫。ちょっと激痛がしただけだから」
しかし、優夜はすぐに立ち上がるが、痛むのか頭を押さえている。
「ちょっとじゃないです。それにまだ頭を押さえてるじゃないですか。少し休みましょう」
「ごめん……そうするわ」
優夜は壁際まで行くと座り込み、苦しそうに頭を抱える。
くそっ……何だこれ。頭超痛えし、何か変な映像が流れ込んでくるし。しかも場所はここかよ。
……いや、待て。この映像の中に居るのって俺とティーネか!?でもそれはおかしく無いか?だって俺もティーネもここには来た事が無いはずだぞ?
『さあ思い出して。約束の時が来たよ。これは貴方が望んだ事なんだよ?』
不意に映像と共に少女の声が頭の中に流れてくる。
……俺が望んだ事?約束って何だよ。思い出す?何をだ?俺はここに来て何をしたんだ?
『本当に思い出せないの?……分かった。なら約束通り私が思い出させてあげる。でもね、ここからは自己責任だよ。これは貴方が望んだ事なのだから』
再び少女の声が聞こえると、優夜の頭の中に流れる映像は消え、激しい頭痛もぴたりと止まった。
「何だったんだ……?それに思い出させるって……何だ?」
「優夜様!もう身体は大丈夫なのですか?」
「ああ……もう平気だ。心配かけたな」
「だがもう平気なら安心だな。早くこのおかしなダンジョンから出る方法を探すぞ」
「グレン兄さん素直じゃないな〜。さっきはあんなに心配してたくせに」
「うるさい。ミルも突っ立ってないで早く出る方法を探せ」
「はーい」
「でもグレンも心配してくれたんだろ?ありがとな」
「……まあ、仲間だしな」
やっぱ思ったんだけどさ、グレンってツンデレじゃね?さっきも俺が倒れた時一番に叫んでたぞ。俺ちゃんと聞いてたもん。
「ほら、もう平気なんだろ。なら早くここから出る方法を探すぞ」
壁に寄りかかり座っている優夜にグレンは手を伸ばす。
「了解」
優夜はグレンの手を掴み立ち上がる。
「あ、もう起き上がっちゃったの?もう少しくらい待ってあげたのに。まあ、約束は守ってもらうけどね」
「「「「「「!?」」」」」」
全員が顔を見上げると、そこには幼い姿の少女がいた。
「ねえね、勇者さん。まだ思い出せないの?私との約束。私約束とはいえあまり乱暴はしたくないんだけど」
「だから約束って何なんだ!?俺は君と何を約束したんだ!?」
「……そう。なら仕方ないね。私は約束を果たすだけ。じゃあ始めるね」
少女はそう言い姿を消すと、今度は優夜の目の前に現れ、優夜の頭の中に入り込む。
「ぐあっ!?」
優夜の頭の中に少女が入り込むと同時に、優夜は再び激しい頭痛に襲われる。
「優夜様!?」
「優夜!」
『さあ、約束の時だ。目覚めろ。200年の時を経て、今目覚めろ!』
まただ……。何なんだこれは!くそっ。何だよ目覚めろって。一体俺は何なんだよ。
『ならば教えてやろう。お前は私の、この世界を救った勇者の子孫だ』
!?そんな……いや、でも有り得なくは無い。事実、200年前水の勇者だけが姿を消している。そして、その勇者は異世界人それも日本人だ。それがこの声の正体なら確かに筋は通る。
だけど、約束って何だ。お前は一体あの子と何を約束したんだ?
『それは……やがて来るであろう私の子孫に私の記憶と私のステータスを一時的に植え付ける事だ』
それをしてどうするつもりだ。
『簡単な事だ。今度こそ魔王を殺す。勇者適正の高いお前の身体なら聖剣を完璧に扱う事が出来る。……さて、無駄話はここまでにするとしよう。さあ渡してもらうぞお前の身体を』
その言葉を最後に優夜の頭痛は治まり、頭の中に響く声も聞こえなくなった。
「優夜様……?」
ティーネが優夜を心配して声を掛ける。
「ふむ。凄い偶然ではあるな。まさか、現勇者と私の名前が同じとはな」
200年前の勇者は自信を優夜と名乗り、そしてティーネ達にも目的を伝えた。
「そんな事はさせません。優夜様がここまで築き上げてきた物を壊すなんて事は絶対にさせません!」
「俺も同意する。それと、優夜と同じ名前なんだかは知らないが、お前は俺らの知ってる優夜では無い。早く優夜の中から出て行け」
「……君達は仲が良いのだな……。しかしな。時間は余り無いのだ。手加減は出来ぬかも知れん。目的の為とはいえ人を殺すのはやはり気が引ける。ここは引いてくれないか?魔王さえ殺せば後はどうでも良い。君達だって魔王は居ない方が良いだろう?」
「それは貴方だけです。今は少しずつですが変わりつつあります。そして、ここにいる優夜様を含めた私達は皆、魔王の事を悪く思ってはいません。貴方の勝手な想像に私達を巻き込まないで下さい」
「そうか……見た目は等しくても中身は全く違うか。なら仕方ない。君達を魔王の味方として私は君達を殺す」
優夜を名乗る前勇者は優夜の物である聖剣を抜き構える。
それを見たグレン達もまた各々の武器を取り構えた。
【投稿予定】
11/18 105.前勇者激突




