101.優夜達の帰る場所
投稿再開です。またよろしくお願いします。
翌日。優夜は案の定寝不足の状態でエリーさんの元に集まった。
「あれ、魔王が居ない……ああ、そうか。もう帰ったんだっけ」
魔王は昨日のうちに帰り、信頼できると言って七人の魔族を残していった。
「なんかちょっと寂しいけど……今は家に行く楽しみで全くそんな気持ちになれない!すまん、魔王!」
「何を大声で喋っておるのじゃ。少し音量を下げろ。周りの人から冷たい目で見られてるぞ」
「あ……」
優夜は今になり周りを見ると、明らかに優夜を避けて歩く通行人の姿が見えた。
「すみません。少しはしゃぎ過ぎました」
「まあ、家を持つという喜びには同意するが、音量は下げてやってくれ」
「はい……」
「全員集まった様じゃな。では、私に掴まれ。行くぞ」
優夜達はエリーさんの指示を聞くと何も言わずに動き、全員がエリーに触れる。
エリーは全員が掴まったのを確認すると、転移をした。
◇
一瞬で景色が変わった。ガッハの街中からモンスターがちらほらといる草原へ。草原の奥を見るとそこには懐かしい街が見えた。
「メルルラだ。また戻ってきたんだな」
「ああ、これからはお主達にとっての帰る場所になるがな」
「帰る場所……か…」
エリーさんの言った言葉は何故か俺の胸に深く刺さった。
……帰る場所、かあ。そういえば、俺ってこの世界に来てから家とか持って無かったんだよな。そうか。やっとか。
「やっと……帰る場所を見つけられたんだな」
「そうですね。優夜様」
「ここから、また始まるんだな。俺の人生が」
「そうですね」
「何を二人で惚けておる。他の者は先に行っておるぞ。早く来い」
エリーさんの言葉に俺の意識は現実に戻される。
「っ!すみません。行くぞ、ティーネ」
「はい、優夜様」
俺とティーネは小走りに移動し、エリーさん達の後を付いて行った。
◇
優夜達が移動を開始してから十数分が経った。メルルラの街まで後少しという所でエリーが立ち止まる。
「ああ、くそっ……そうじゃった。すっかり忘れておった」
「?どうしたんですか?エリーさん」
急に様子が変わったエリーを見て優夜は心配する。
「!ああ、いや、何でもない。お主らも早く自分の家を見たいだろう。メルルラまではもうすぐじゃ。行くぞ」
「え?あ、はい」
優夜はエリーの様子を変に思いながら歩いていく。
しかし、ティーネだけは見落とさなかった。エリーが見つけ、動揺する元となった魔鉱石の存在を。
優夜達はそれから街に入ると、エリーの案内で遂にこれから住む事になる家に着いた。
「お、おおおおーーー!!」
「これは……中々に豪華ですね……」
『ほう……これは素晴らしい』
「ワオーーン!!」
「凄いな、これ……」
「え!ここに住めるの!?やったー!」
「凄いですよ、優夜様!これほどの豪邸に住めるとは流石です!」
「優夜凄い!こんな家に住むのなんて僕初めてだよ!」
「優夜さん……。私がここに住んで良いのでしょうか?何か悪い気がします」
メルルラの中でも一番の広さを誇る邸宅で、その値段は並大抵の貴族では手が出ず、三大公爵家でさえ出し渋る程。更に、この家には来客用のもの、倉庫として使うものなどを含めれば、部屋の数は五十近くにもなる。しかも、この家が経つ場所は温泉の源泉のすぐ近く。つまり、この家に住むだけで毎日温泉を堪能する事が出来る。そしてこの家は珍しい事にまだ誰も住んだ事が無い。いや、正確には一度だけある。あるのだが、この世界の文献にはその記録が残されていない。
この様な特別な家に住めるのだから、優夜やティーネ達は勿論、公爵家であるメルやグレン。神獣である白とルウ。王族であるエリスが驚くのも無理は無い。
「どうじゃ?喜んで貰えたか?」
「はい!それは勿論です!」
「そうか。それは良かった。中の家具などは揃えてある。今すぐに住める様になっておるから安心しろ。私は急用を思い出したからまた王城に戻る。ではな」
エリーはそう言うと転移を使いその場から去った。
「さて、どうするか。どこから見ていくか……」
「優夜様。時間はあります。ゆっくり見ていきましょう」
「……そうだな。ゆっくり見ていくか。じゃあみんな。中に入るぞ」
優夜はティーネ達に指示を出すと、一番に家の中に入っていった。
◇
「よし。まだ来ていない。今のうちに早く回収せねば。魔法解除!」
エリーは魔鉱石に付与していた魔法を解除すると、魔鉱石を懐に忍ばせ転移する。
転移した先は勿論王城。それも王の間の中に。
「なっ……エリー!?転移で直接の移動は禁じたはずじゃぞ!」
「それは緊急時以外のはずだが?」
エリーの焦る様子と声を聞き、国王は一瞬で冷静になる。
「……何があった?」
「物事事態は人魔戦争の前だが、それを話すと長くなる。先にこれを見てくれ」
エリーは懐に入れておいた魔鉱石出した。否、出そうとした。
「エリー?どうかしたか?」
「やられた!魔法に更に魔法を上掛けしていたのか!それも私が気付かない程に巧妙に!くそっ!」
「エリー。何があったのじゃ。証拠が無くとも話だけは聞いておきたい」
「っ!分かりました」
エリーは魔鉱石を取られた事を悔やみながらも、国王に状況を説明するために心を落ち着かせる。
「実は帝国絡みの事で話しておかなければならない事があります」
【投稿予定】
11/9 102.王国最強の隠密部隊