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99.優夜の天敵現る



「エリスッ!!」


「お母様!?」

 あー、来たよこの人。来ちゃったよ。頼むから面倒くさくしないでくれよ。


「エリス〜〜〜!!」

 王妃はまだ整っていない息のままエリスに突進する。

 しかし、エリスは横に避け、王妃は支えが無くなり床へ思いっきりダイブする。


「ぐえっ……!エリス!?何故避けるの!!?」


「お母様。ここは王の間です。出過ぎた真似は控えて下さい」

 エリスは王妃を立たせると玉座に座る国王の隣に連れて行く。


「ひう!?」

 エリス、前から思ってたけど王妃様に辛辣じゃね?


「……エリーゼ。先程まで寝室で寝ていたはずでは?」


「ザグレスにエリスが来た事を伝えられたのよ。…それより、何故先程から私の事を避けるのエリス!?」


「それはお母様には子離れが必要だと感じたからです」


「へう!?……そんな意地悪ばかり言わないでぇ!泣いちゃうわよ!?私泣くわよ!?」

 うわあ。王妃様がこんなだったとは。そりゃあエリスもうんざりするわ。


「はあ……。お母様。今は大切な話をしている途中です。抱きついたりするのは後にして下さい」


「後なら良いのね!?なら分かったわ。部屋でエリスのこと待ってるから。絶対来てね!?」


「はいはい。分かりました」

 エリスがため息混じりに答えると王妃は喜んで王の間から出ていった。


「……邪魔が入ったがまあ良い。優夜よ。あの日から今まで何があったのか話してくれるか?」

 王妃様の事邪魔って言っちゃったよこの人。


「えっと……エリスと王都を出た後、リンカと会って、それからグレンとミルに再会して、レフィアに会って、メルルラでサザンガやサファイアに会って、それで今回の戦争があって……。って感じだな」


「うむ……?まあ、時間もあまりある訳でもないから仕方ないか。では優夜達よ。詳しい内容はエリスに聞く。だからエリスを置いて先に優夜達は戻ってくれないか?」


「はい、分かりました」

 優夜は軽く了承する。

 まあ、エリスは王妃様の事もあるし、でも俺達が残ってたら向こうにいるサファイアが心配だし。これが最善だろ。エリスだって嫌がってる様子はないし。


「うむ。では別室に居る魔王を連れて戻れ。クロードはまだ仕事がある故残ってもらう。エリーにはまたここに戻るように伝えといてくれ」


「分かりました」


「優夜、それに他の者達も。この度の人魔大戦、よく戦ってくれた。戦争での事故処理を終えたら王都へ来ると良い。褒美をやろう」


「ありがとうございます。……じゃあエリス、サファイア達と待ってるからな」


「はい、優夜様」

 優夜はエリスと言葉を交わした後ティーネ達を連れて王の間を出ていく。


「ふう……。ではエリスよ。クロードを呼んできてくれるか?」


「はい」



「陛下、お呼びでしょうか」


「うむ。今回の人魔大戦、終わるのが早すぎると思わぬか?してクロードよ。戦場で何があったか詳しく話してくれ」


「はっ。ではまず人魔大戦が早く終わる事となった一番の理由は勇者達にあります」


「優夜に?」


「はい。彼等が魔族の侵攻の時期を正確に伝えてくれたお陰で、我々は完璧に準備が出来たのです」


「そうか、優夜が……。しかし何故優夜は侵攻を予知する事が出来たのだ?」


「それは……」

 国王の問いにクロードが黙る中、エリスが口を開く。


「お父様。その事は私が知っています」


「エリス?…分かった。話してくれ」


「優夜様には魔族の味方がいました。それは十魔族二人、そして魔王の娘です」


「なんと!魔族が、それも十魔族と魔王の娘が優夜に味方しただと!?」


「はい。驚かれるのも仕方ありませんがこれは事実です。その魔族の方の情報から侵攻の時期を知ったのです」


「………。成る程。にわかには信じ難いが道理は通っている。それにエリスが儂に嘘をつくなどした事は一度も無い。……儂はエリスを信じるぞ」


「私も同意です。そういう事であれば勇者が魔族と行動していたのも理解できる」


「なっ、見えていたのですか?」

 サザンガ様が優夜様と行動していた時は出来る限り姿は隠していた筈ですが……。


「気配ですよ、エリス王女殿下。姿は隠せていても気配までは消せていませんでしたから。もっとも、気付いていたのは私だけですが」

 エリスは安堵したように息を吐く。


「それは良かったです。これから徐々にしていくとはいえ、今はまだ魔族に対する反感もありますから」


「うむ、エリスの言う通りじゃな。クロードよ。その事はくれぐれも口外しないようにしてくれ」


「御意」


「……それで、クロードよ。魔王と何か話したか?もし何か情報を得たなら教えてくれぬか?」


「はい。勇者が魔王と戦い勝利した後、魔王は我々の元に来て争いを止めました。そしてこう言いました。我は帝国の者に操られていた。帝国は我ら魔族が王国に侵攻している間に準備をし、戦争が終わり次第王国へ侵攻するつもりだ、と」


「何!?帝国がこの国に攻めてくるだと!?」

 国王は仰天し、そして憤慨した。


「帝国め……。確かに早く終わったとはいえ今攻められればこの国だけでは対処は難しい。……ならば、仕方ない。同盟国である獣王国に援助を頼もう。クロードよ、この件任されてくれるか?」


「御意。陛下の仰せのままに」


「ではクロードはそのように動くとして……優夜達をどうするか……。帝国の事があるとはいえ少しの休暇は与えてやりたい」

 国王は優夜にしてあげられることがなにかないかと悩ませる。


「では、住む家を与えてはどうですか?」


「家か……エリス、お前はどう思う?」


「私も家が良いと思いますよお父様。しかし、どこに家を建てるつもりですか?土地が余っていても、優夜様方は冒険者。一か所にはとどまれません」


「ふむ……ならばメルルラはどうじゃ。あそこならエリーが居るから移動も楽じゃろ。それに、あそこは温泉で有名なはず。もしかすれば家に温泉を引けるかもしれんぞ?」


「む……確かにそれなら……」

 エリスは一人でぶつぶつと呟いた後結論を出す。


「分かりました。それで良いです。が、それでも休みは欲しいです。そうですね……一週間ほどならば大丈夫なのではないですか?」


「分かった。帝国の動きは分かり次第伝えるが、優夜達の力は一週間借りない事にする。そして、家に関してはもう既に建ててある物を使え。人数も多いから一番大きな家をくれてやる。それに使用人も付けよう。これでどうじゃ?」

 エリスは国王の言葉を聞くと満足そうに頷く。


「はい。これで優夜様に明るい報告が出来そうですね」


「では、クロードは今からすぐに動いてくれ。エリスはエリーゼの相手をした後、優夜達の元へ戻ってくれ」


「御意」

「はい」

【投稿予定】

10/27 100.優夜念願の家


一日遅れの投稿すみませんでした。

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