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第7話
今回の事件の全容はこうだ。
粉竜の店主は老舗の味を外部に漏らさずに伝承すべく、休店日にこっそり弟子を育てていた。しかし弟子はどれだけうどんを作っても暖簾分けをしてもらえない。そんなもどかしさもあり、ついには包丁で師匠を刺してしまう。そして強盗に見せかけるために金庫とレジから金を持ち去った。
だが真の目的は、自分の店を出すための資金集めだったのだ。それに気付いていた沢尻は、新規オープンするうどん屋があれば足を運んでいたという。いつか必ず弟子が自分の店を出すであろうと信じて……いや、そうではない。ただ単に沢尻は粉竜の味噌煮込みうどんを食べたかっただけである。願わくば刑期を終えた弟子にもう1度店を出してほしいとさえ思っているのだ。
味噌煮込み刑事《デカ》は次にあの味を堪能できる日を楽しみに、今日も善良な市民を守るのであった。