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《スピリーム・ゼロ》(旧版)  作者: 五月奏人
第二章《人と霊》
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第二章《人と霊》(第一部)

 精霊学園へと入学を無事終えた、刹那達。精霊のルナとの偶然的な出会いを果たした。それから数日後、騎士科の刹那達は、精霊科のルナ達との合同授業の最中、邪霊が出現するという異例の事態が起こった。それを目の前でイリスが倒すのを見ていた。生徒達に様々な想いが飛び交う中、その裏で暗躍する者達が……

 学園に邪霊が現れてから一週間。あの日以降、特に何事も無く過ごした生徒達。様々な想いを、生徒達は抱いていたが、それでも、と皆辞めることは無かった。しかし、刹那はその日以降、何かが変わっていた。外面(がいめん)ではなく、内面の変化であった。あの時、何も出来なかった自分と、数年前の自分とを照らし合わせていた。その日から、刹那の目からは、少し光が消えていた。


「はーい、じゃあ今日の授業はここまで。明日はさっき言った問題の答え合わせからね」

 6時限目の授業が終わった。生徒達は下校の準備をし終えると、イリスが教室に入って帰りのSHRが始まった。SHRが終わり、帰ろうとするとイリスが3人指名した。

「黒飾、細流、高宮。悪いな、この後少し話があるんだがいいか?」

 蒼唯が先に返事をした。

「はい、今日は特に予定は無いので」

「うん、今日は無いよー」

 続けて紅明も言った。刹那に関しては、頷いただけであった。

「とりあえず、体育館とグラウンド近くに寮みたいなのがあるのは知ってるな?」

「あったっけ?」

「もう、紅明。説明会であったよ?」

「てへ」

 舌を出して決まりのポーズを取ろうとしたら、イリスに頭を叩かれて思わず舌を噛んでしまった。痛さに倒れ込んだ紅明を置いて、イリスは話を始めた。

「詳しい話はその寮でするが、既に3人待たせてしまっているからな。なるべく急ぎで行くぞ」

 刹那と蒼唯は顔を見合わせて、頭に疑問符を浮かべた。簡単に話を終えると歩きだしたイリスだが、教室の鍵を閉めるのを思い出した。まだ倒れ込んでいた紅明を廊下に出し、鍵を閉めた。

「よーし、行くぞ。あー、高宮は……おぶってけ」

「じゃあ、刹那よろしく」

「えっ、いやそこは蒼唯が」

 無言の笑顔に恐怖を覚えたのか、刹那は蒼唯に自分と紅明の鞄を預け、紅明をおんぶした。それからイリスに付いて歩き出した。しかし、刹那は周りの目線が少し痛かった。校内で女の子をおんぶしながら歩いている為か、変わった光景に生徒達や先生までも見ていた。

「……なんかさっきから目線がすごく痛いんだけど。なんだろうこれ」

「んーなんだろうねー」

「絶対分かっててやらせてるでしょ?」

「なんのことかなー」

 周りの目線が気になる刹那を置いて、蒼唯は楽しそうにしていた。ため息を着いていると、刹那は背中に違和感を感じていた。女子を背負っているからなのであろうか、その感覚を一度気にすると、ずっと気にしている様子であった。それに何か勘付いたのか、蒼唯が刹那に話した。

「ねぇねぇ、刹那。背中気になるんでしょ?」

「ナ、ナンノコトカナー」

「いやー、それなりに発育のいい女の子おんぶしてるからねぇ。気にならないわけないよねー」

「紅明の喋り方うつってるぞ……」

「ふふん」

 それを前で聞いていたイリスが、2人の会話に入った。

「お前らホント楽しそうだな」

「楽しいですよー」

「こっちは精神的なダメージ大きいですけどね」

 蒼唯の発言のせいか、余計に背中を気にしてしまう刹那であった。本館玄関に来ると、靴を取り出そうと刹那はしたが、両手が塞がっている為、取り出せない。蒼唯の方を見やると、ニコニコとしながらこちらを見ていた。頑張ってね、と言っているような顔をしていた。流石に紅明の靴を取り換えることは出来な為、それは蒼唯がやったが、刹那自身のは紅明を背負いながらやる事となった。

「蒼唯、僕に対してなんかSになってない?気のせい?」

「楽しいから」

「えぇ……」

 最近の蒼唯からの弄られに刹那は少し疲れを感じていたが、蒼唯が楽しんでいるならいいか、と言った様子であった。

 そのようにして、歩いていると、目的の場所に着いた。その時にようやく紅明が目を覚ました。紅明を下して、寮へと入っていった。

 この施設は、大きく区分すると、寮、となるが内装はとても充実している。上空から見ると、建物の形状は凹のようで、丸みを帯びている。また、この寮は4つ程存在しており、2つずつに人と精霊とで分けられている。同時に、この寮にはある理由で作られた教室が、各寮に10部屋ずつ用意されており、その都度、使用されている。

 4人が寮に入ると、多くの精霊がこちらを見ていた。少し視線が気になりながらも、先を歩くイリスに着いていった。西側の階段を使い、3階まで(のぼ)り、直ぐに左に曲がった。2つほど、空き教室を通り過ぎると、イリスが立ち止まって付いて来た刹那達に確認した。

「っと、いいか?教室の中に今3人待っているが、1人は既に知っているはずだ。もう2人は上級生だからな。それなりに気を付けなよ?」

 そういわれると、紅明が元気よく答えた。対して、刹那と蒼唯は少し緊張気味で返事をした。確認を取ると、イリスは扉を開けて、入った。

 すると、教室の中には、白髪の子と黄髪(おうはつ)のショートヘアに赤いバンダナの子、それに緑髪(りょくはつ)のセミロングに眼鏡をかけた子が居た。白髪の子は、見覚えがあった。

「あっ、イリス先生!刹那と蒼唯ちゃんと紅明ちゃんだー!」

 白髪の子は、ルナであった。刹那達をハイタッチすると、用意されている席に座るように言われた。その後、遅れてフレイヤが教室に入って、イリスの隣に立った。すると、イリスが話を始めた。

「あー、とりあえず今日はわざわざ集まってくれてありがとう。簡単に説明すると、今ここにいる6人には、ある重要な話がある。が、その前に、1つ2つと片付けておきたいことがある」

 イリスがそういうと、ある3人を除き、頭の上に疑問符を浮かべていた。

「とりあえず、黒飾達は仙娥の事を知っているが、この2人は初めて見ただろう?」

 そういうと、刹那達は頷いた。紅明が質問をした。

「えーっと、誰ですか?」

「まぁ慌てるな。とりあえず、2人は前に来てくれ。あとで4人の自己紹介もさせるけどな」

 イリスがそういうと、2人の精徒が前に出てきた。黄髪の子は、人見知りなのであろうか、緑髪の子に隠れるような感じでいた。構わず、緑髪の子は自己紹介を始めた。

「初めまして。私は3年精霊科の知見(ともみ)リューンよ。精霊での名前は簡単に、D・リューンと呼ばれているわ。因みに、私のモチーフは本よ。よろしく。特に黒飾君」

 紹介を終えると、笑みを浮かべていた。その目線は刹那へと向かっていた。刹那は少し戸惑っていたが、小声でよろしくと言った。リューンの紹介が終わると、黄髪の子の後ろに回った。肩に手を乗せ、少し前に押した。かなり緊張していたが、少しずつ落ち着き始め、自己紹介を始めた。

「え、えっと……精霊……科の……2年の……照屋(てるや)、フラム……です」

 まだ少し緊張感があったが、ゆっくりとしっかりと話した。

「精霊では……L・フラーウムです……モチーフは、太陽です……よ、よろしく……」

 顔を真っ赤にして、恥ずかしがっていたが、紹介を終えたフラムに皆拍手をした。拍手に驚いたのか、リューンの後ろに隠れた。それから、2人が席に戻ると、イリスが話を始めた。

「じゃあ、4人も簡単に自己紹介をだな。初めて会った2人に紹介するわけだから、他の人の事はあまり気にしなくていい」

 そういわれ、4人は順番に自己紹介を始めた。やはり、刹那の時になるとリューンは、少し微笑みながら刹那を見ていた。刹那は、何が何だか分からないまま見られている為か、顔を赤らめながら自己紹介をした。それを見て、蒼唯は、また少し頬を膨らませていた。更にそれを見て、紅明は内心楽しそうにしていた。4人の説明が終わると、イリスが話を始めた。

「さて、これで互いの情報は分かったわけだが……片付けるべきこと1つ目を始めようと思う」

 これには、3人を除いて頭に疑問符を浮かべていた。すると、フレイヤがイリスに紙を渡した。イリスはそれを見ながら話を続けた。

「今から2人ずつ名前を言うが、その2人はペアだ」

 刹那と蒼唯、紅明、それにルナは驚いていた。対して、フラムとリューンは落ち着いていた。

「どうした?」

 そう聞くと、蒼唯が答えた。

「いえ、その……入って間もないのに、もうペアができるとは思ってなくて……」

「まぁ、な。だが、問題は無いだろう。詳しいことは後々説明はする」

 まだ状況を理解できてない紅明とルナを置いて、イリスは、名前を読み上げた。

「じゃあ、まず1組目は、刹那とルナ。2組目は蒼唯とフラム。3組目は紅明とリューン。以上の3組だ。とりあず立ってペアで並んでくれ」

 言われたとおりに、6人はそれぞれのペアの隣に立った。

「よろしく!刹那!」

「う、うん。よろしく」

 刹那はルナに抱き着かれている一方、蒼唯たちもそのような話になった。

「えっと……よろしく、フラムさん」

「はっ、はひっ!?……よ、よろし……く……」

 突然声をかけられて驚いてたフラム。驚きながらも顔を赤らめて、蒼唯の出した手を握り返した。

「えーっと、リューンさんだっけ?よろしく!」

「こちらこそ。よろしくね、紅明さん」

 旺盛な紅明とは違った、温和なリューン。固く手を握った。

 それぞれの感じが合ったのを確認したかのように、イリスは再び話を始めた。

「とりあえず、問題は無いな。じゃあ早速2つ目の事を片付けよう」

 6人は、何なのかと心を踊らせていると、イリスの発言は、予想の斜め上であった。

「今から6人には、《契約》を結んでもらいたい」

 その発言には、6人とも驚きを隠せなかった――

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