愛しの順子~繊細な恋の詩~
「たったひとつ」
16。太いズボンで学校へ。夢はF1レーサー。アイルトンセナを抜くこと。ほのかな夢の日々。
バイト。酒の卸問屋。倉庫の整理と、配達助手。日曜日、サーキットにて爆音。レーシングマシンを走らせる。水分。水分。たったひとつ。言えること。
忘れられない、順子の涙。
初恋。
英雄は赤木軍馬。
ガソリンの匂い。赤いスパルコのレーシングスーツ。
ヘルメットを被り、アクセルが僕を前にやる。
中山サーキットの夕暮れ。
チクショウ。とため息をもらす。
赤い缶コーラ。
そして、愛しの順子。
順子はあの日、学校前のバス停に座ってた。
『順子、どうした、もう、帰るのか』
『私、学校、辞めるんだ』
『どうして』
泣き出す、順子。
順子の涙。
どうすることもできなかった。
初恋。想い。。。。。順子。
好きだと言えばよかった。
順子に。素直に。
順子はバスに乗って。
『またね』
とたったひとつ、言葉をくれた。
たったひとつ。
愛しの順子。
好きだった。
16歳の儚き日々。
僕も退学届を出した。そして、僕は、また、走った。
エンジン音と愛しの順子。
たったひとつの夢のうた。