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ゆりside


家でくつろいでいると、ドアを叩く音がした。


「ごめんくださーい」


女?

レーダーが敏感になる。

今まで女の人が訪ねてくることは一度もなかったから、緊張してごくりと喉を鳴らした。


「はーい」


ドアののぞき窓から外を見る。

外には自分より少し年下くらいの、まっすぐな黒髪が綺麗な少女が立っていた。

なんと言うか、どこかで見た顔だと思った。


「どなたですか?」

「清永あかりと申します。しょうたはいますか?」

「え、あ、少しお待ちください」


チェーンを外しドアを開ける。


「あ、どうも。」


ノースリワンピースの女の子が頭を下げる。


「わたし、しょうたの姉の清永あかりと言います。」

「え、お姉さんですか?」


(あ、前に写真で見た子だ。あれでも確か…)


そんなわたしの心を察してか、彼女はころころと可愛らしく笑って、


「わたし、もう死んでいるので。いわゆる“ 幽霊 ”です。厳密に言うと違うのですが、面倒なので幽霊でいいです。」

「はぁ。」

「あはは、ですよね。えと、あなたは…」

「…え、あ、咲ゆりです。」

「彼女さん?」

「ふぇ!?あ、まぁ、そうです、はい。」

「そっか。しょうたのこと、よろしくね。」


声の調子が変わって、切なげな声になる。


「は、い」

「あの子、昔からそそっかしいから。」

「…とても、しっかりした方ですよ。今は交番に勤務する警察官ですから。」

「そっかー、立派になったなー。」

「きっかけは、お姉さんだったと、聞きました。」

「……」


前に話してくれた。

お姉さんが亡くなった原因の事故を起こしたのは、飲酒運転をしたトラックだったそうだ。


「勉強、あまり出来る方ではなかったらしいですけど、頑張って、頑張って、やっとなれたと三年前に。」

「…さすが、わたしの弟ね」


泣きそうに、誇らしげに呟いた。


「しょうたは今交番にいるはずです。」

「そう、会えたら、会おうかな。」


幽霊だからか、とても青白い顔はしているが、確かにしょうたの姉だと思った。


「笑った顔、彼にそっくりですね。」


そう言うと、彼女は嬉しそうに笑って、音もなく去っていった。

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