9話
さっきの山賊と同じと思われる男に洞窟の中を再び案内され、広間のような場所に連れられた。
「皆さんにはこの広間と広間につながっている六つの部屋をご使用ください。それと必要なものがあったら遠慮なく申し上げてください」
そういって一礼をし、男は今来た道を戻っていった。
その男がいなくなったのを見ると、それぞれが広間の中央にある、円卓状のテーブルを囲み座った。
ダーウィンとモーツァルトは遠慮なく自由に座り、ダウィンチとアインシュタインは二人が座るのを見て続いて、最後に遠慮しながらガリレオが座った。それをみて僕は余っていた席に座った。席の並びは、
僕、アインシュタイン、ダーウィン、モーツァルト、ガリレオ、ダウィンチとなっている。
「それにしてもどうする?俺たちにはドラゴンと相対する力なんてないぜ」
モーツァルトが机に脚をかけ、だらしなく座りながらやけになったように発言する。
ほかの四人も表情はあまり変わっていないが、少し自信が無く不安げな雰囲気である。
確かにこの中には怪物と一対一で戦う力をもつものなどいない。しかし・・・・・・
「僕達には力はないが知識がある。それぞれの知識を出し合い、それを合わせればいいだけの話だ」
僕のその発言を聞いて、それぞれがそれぞれの自分の智に自信をもっているのか、さっきまでの不安げ
だった雰囲気が一変し、試練について自分のなすことをすでに考え始めていた。
「そうだな。英雄などということは興味が無いがとりあえずは奴の話が合っていると仮定して、これからについて話し合おう」
「現状ではそうしかないだろうな」
「とりあえず私たちは明日からこの世界について調べることから始めたいと思う。私はこの世界の地質と生物についてどのようなものなのかを調べたいと考えているがどうだろうか?」
「そうだな。それぞれが調べることを決めておいたほうがいいな」
モーツァルトの言葉を聞くと、ガリレオがおどおどと手を上げた。
「す、すいません。そういう話なら私はこの世界の天体について調べてもいいですか」
「そういえばガリレオは、星について詳しかった」
「は、はい。星の位置や動きが分かれば、今どこにいるのかや、時間のことについてもわかるはずです」
「俺はお前らと違ってそんな知識は無いが手伝えることがあったら言ってくれ」
「ならば、すまないが僕はこれから対ドラゴンについての研究をしたいと考える。ダウィンチとそうだな・・・・・・アインシュタイン、手伝ってくれないか?」
そう尋ねると、アインシュタインは、コクリと首をかしげるが、ダウィンチは不満そうな顔をしている。
「なぜ我がお主の手伝いをしなければならないのだ?」
「ドラゴンについて詳しく知っているのはダウィンチ、お前だけだ。だからお前に意見を聞きたいのだが」
その言葉を聞いてもまだダウィンチは不満そうだ。
「すまない。頼めないか?その最強であり最悪の魔術師であるダウィンチの知恵を」
「しょうがないな。この最強であり最悪の魔術師の力を見せてやろうではないか」
その言葉を聞くとダウィンチしかたがなさそうにいうが顔はうれしさを隠せていないようにニヤニヤとしている。
(ちょろいな)
(ちょろ過ぎるな)
(・・・・・・・・・・・・)
(ちょろいですね)
全員がダウィンチを温かい目で見ている。たぶん皆考えていることは同じであろう。
「それでは明日からの予定が決まったことで、今日はお開きにしますか」
ダーウィンが提案すると、モーツァルトは席を立った。
「俺は眠いから部屋に行かせてもらうぜ。適当に部屋を選ばせてもらう」
そういうと一番右奥の部屋に入っていった。
「私も部屋に行かしてもらおうかな。何かあったら読んでくれ」
ダーウィンもその隣の部屋に入っていった。
「わ、私も部屋に行きますね」
「ふむ。我も行くとするか。明日からを楽しみにしておるぞ」
ガリレオは左奥の部屋に、ダウィンチはその隣の部屋に入っていった。
――僕も部屋にいくか。しかしどちらの部屋を使うか。
「・・・・・・アルキメデスさん。後で話があります」
急にアインシュタインに話しかけられ驚いた。
――そういえばアインシュタインとまともに会話するのは初めてだな。
「ああ。構わないがどうしてだ?」
「それは後で話があります。部屋に来てください」
アインシュタインの有無を言わせない雰囲気に驚いたが承諾する。
そういうとダーウィンの隣の部屋に入っていく。
それを見送ると残った部屋に入った。