家族
こんばんは。
閲覧頂きましてありがとうございます。
少しでも楽しんでもらえましたら幸いです。
それでは、名前屋音夢の物語をお楽しみください。
音夢の名前屋は閑静な住宅地にある。和菓子屋『なぎさ』の主人の好意で間借りさせて貰っており、名前屋の客は裏口から入れるようになっていた。
和菓子屋でアンダーグラウンドな仕事はやっぱりおかしいと思いつつ、路地裏に居を構えるのにはまだこの世界で慣れていない音夢は、『慣れるまではウチでやりなよ。なんならずっといてもいいし!』という主人の言葉に甘えさせて貰っていた。
『なぎさ』の家族構成は、主人である妻の夏樹、職人である夫の誠治、一人娘の真弓であった。
初めはなぜ誠治が主人ではないのか音夢は疑問であったが、共同生活をしていくにつれてすぐにわかった。夏樹はいわゆる姉さん女房だったのだ。基本的には夏樹が店の経営を自らこなし、誠治は和菓子を作るのみであった。
ただ、家族の中は非常に円満であり、ケンカなど滅多に起きなかった。一度夏樹が風邪をひいて病院に行った時の誠治の慌てようは、不謹慎であるとは思いつつ、音夢には心地良いものだった。
一方、真弓については、当初音夢を非常に警戒していた。まだ中学生の真弓にとって、いきなり同居人が出来た上に名前屋なんてワケが分からない仕事をしているとなれば当然の事だが。
『あ、真弓ちゃん!おはよう』
『…、おはようございます…』
といった態度が
『ちょっと姉さん聞いてよっ!』
『あの〜、名前の整理したいんだけど…』
『そんなの後でいいから!今日学校で…』
に変化するなど、音夢にも真弓にも想像出来なかっただろう。
『姉さん、今日なんかあったでしょ?』
『えっ?なんで?』
『姉さんってそういうの、すぐ顔にでるよ?おせっかい焼きは姉さんのいいところだけど、お仕事には持ち込んじゃダメだと思うよ?』
『…オッシャルトオリデス』
『その人だって考えた末に行き着いた答えなんだろうし…。それについて一緒に悩むのはカウンセラーの仕事であって、姉さんの仕事じゃないと思うよ?』
音夢は真弓の聡明さにいつも驚かされ、同時に励まされていた。真弓の言葉で自分の立ち位置を再確認することも多く、音夢は頭が上がらなかった。
(この子は先生に似てるかもなぁ…。いや、あんなハチャメチャな人と一緒にされたら真弓ちゃんに失礼か)
『どうしたの?』
『や、真弓ちゃんはカシコイ子だなーって思って』
『また姉さんは…、肝心なことは話さないんだから…。明日お休みだよね?もうちょっと話聞いて欲しいんだけど…』
こうした姉妹トークと共に、夜はふけていった。
申し訳ありません。
今回もネコの着物屋は登場しませんでした。
ただ、今後も続けていく上で、どうしても音夢の生活についての説明がいると思い、このような2話となってしまいました。
次回は少しだけ登場すると思います。
できるだけお待たせしないよう、早く投稿できるよう努めます。
それでは、今後もよろしくお願い申し上げます。