終話:真実そして輪廻
喜べばいいのか、悲しめばいいのか……俺にはよく分からなかった。
「……」
呪詛の言葉も尽きた。
そして、3億45万2022日目の朝が始まる。
「ま~た、朝っぱらから飽きないね~」
「……」
ひとりぼっちの世界がまたはじまった。
「言っとくけど……この世界の救世主でも巫女でもないからね」
「……そうだな」
「黙っちゃったよ……どうする、日奈子」
「千恵、あんまり、その……いじめないであげて」
「……」
ふれあいもなにも存在しない。
ただ型にそって行動することでしか、寂しさを埋めることのできない世界。
「うん、おはよう、祐一」
「……」
千恵「ほほぉ~、なるほどなるほど」
俺は千恵達を無視して、亡霊のような足取りで学校へ向かった。
「出席をとります、え~、安倍翼君――」
「おい! 昨日はよくもやってくれたな、このマヌケ!」
「はい、次……え~、相模祐一君」
「自分が燃やした瓦礫の下敷きになるなんて、ダサすぎだろ」
「……はい、じゃあ、次、柴田亮子さん――」
「……バーカ! バーカ!」
……。
…………。
「……」
確信した。
先生は”死んだ”のだ。
涙がほろりと頬を伝った。
「ば~か」
「……」
いつかと同じように千恵がこちらを振り向いている。
そしていつかと同じ言葉と、いつかと同じ仕草で俺を罵倒している。
そのとき、俺の脳裏に過るものがあった。
「……待てよ」
先生が言っていたヒトパピローマウイルスのくだり。
ヒトパピローマウイルスの感染源になっていたのは……。
「いや、ありえない……だって、とっくの昔にあの日と全く同じに……」
そうだ、もしそうなら彼女は長い間自分を隠し、死を演じていたことになる。
俺はゆっくりと日奈子の席を見た。
くるりと彼女の顔がこちらを向き、にこりと微笑んだ。
”死んで”ない。
――俺は寒気と共に、絶望とも希望とも区別のつかない未来が訪れるのを感じた。