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Ragnarok 廻る世界  作者: 腕曲がり肘男
5/5

終話:真実そして輪廻

喜べばいいのか、悲しめばいいのか……俺にはよく分からなかった。


  「……」


呪詛の言葉も尽きた。

そして、3億45万2022日目の朝が始まる。


  「ま~た、朝っぱらから飽きないね~」


  「……」


ひとりぼっちの世界がまたはじまった。


  「言っとくけど……この世界の救世主でも巫女でもないからね」


  「……そうだな」


  「黙っちゃったよ……どうする、日奈子」


  「千恵、あんまり、その……いじめないであげて」


  「……」


ふれあいもなにも存在しない。

ただ型にそって行動することでしか、寂しさを埋めることのできない世界。


  「うん、おはよう、祐一」


  「……」


千恵「ほほぉ~、なるほどなるほど」

俺は千恵達を無視して、亡霊のような足取りで学校へ向かった。


  「出席をとります、え~、安倍翼君――」


  「おい! 昨日はよくもやってくれたな、このマヌケ!」


  「はい、次……え~、相模祐一君」


  「自分が燃やした瓦礫の下敷きになるなんて、ダサすぎだろ」


  「……はい、じゃあ、次、柴田亮子さん――」


  「……バーカ! バーカ!」


……。

…………。


  「……」


確信した。

先生は”死んだ”のだ。

涙がほろりと頬を伝った。


  「ば~か」


  「……」


いつかと同じように千恵がこちらを振り向いている。

そしていつかと同じ言葉と、いつかと同じ仕草で俺を罵倒している。

そのとき、俺の脳裏に過るものがあった。


  「……待てよ」


先生が言っていたヒトパピローマウイルスのくだり。

ヒトパピローマウイルスの感染源になっていたのは……。


  「いや、ありえない……だって、とっくの昔にあの日と全く同じに……」


そうだ、もしそうなら彼女は長い間自分を隠し、死を演じていたことになる。




俺はゆっくりと日奈子の席を見た。

くるりと彼女の顔がこちらを向き、にこりと微笑んだ。

”死んで”ない。

――俺は寒気と共に、絶望とも希望とも区別のつかない未来が訪れるのを感じた。


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