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今日から学校と仕事、始まります。①莞

行動こそが値

作者: 孤独

大学とかではお祭が行事としてあるわけで、OBなり未来の後輩達がやってくるわけだ。

現在校生達は祭を盛り上げるべく、何かしらの企画を立てて実行するのだ。



「アカリン先輩がメイドになるって聞いてビックリだよね」

「そうよね。硬派で熱血な山本先輩が可愛い服を選ぶなんて。似合わないような気がしました」

「私もそう思っているけど、彩も毒舌だね」



沖ミムラと輪島彩。この女子高生2人は2つ上の先輩である山本灯がいる大学を見に来たのであった。彼女は”戦闘狂”や”拳女王”などと、とにかく物騒で暴力の限りを尽くせる人物であると二人は知っていた。それがメイド服などと、男連中に好かれる服を着ているなんて想像もできない。常に戦いに生きている人がそんなことをするわけがない。

っていうか、金髪で細目で、狐っぽい顔の人がメイド服なんて似合わないでしょ。


本心は言わないでおく。案外、見れば納得できるかもしれない。


「あ、ここだよ。ここ」


ミムラは灯がいる場所にやってきた。中に入ってから料金を頂くようなため、ドアを開いてみた。

”冥土巡り”……というお店のようだ。一体どんなところなのか?普通の喫茶店なのかと思ったら、言葉がなくても中で起きている出来事によって知りえた。


入るとすぐに男性客が万歳姿で嬉しそうなのか、怖い思いをしているのか、半々みたいな表情でいた。

男性客の後ろには安全用(?)の大きなエアマットが壁のように置かれていた。



「ご注文は、コーヒーにクリーム、チョコ……以上、3点で800円となっております。宜しいでしょうか?」


灯以外にもサークルの仲間か、そのクラスの仲間か。可愛い色とりどりのメイド姿で接客を行なっていた。メイドの声に喜んでいるのか、泣きたいのか分からない声で返事をする男性客。


「は、はい!」

「承知しました。では、お願いしまーす」


お客対応を済ませたメイドは3人のメイドを呼んだ。彼女達の手にはコーヒー、クリーム(パイ生地もあり)、チョコ(パイ生地もあり)。

とても満面の笑みでメイド達は男性客に向かって走りながら、



「ご注文の!!コーヒーです!!」



バシャアアァァッ


「クリームです!!」



ベチャアァァッ



「チョコでーす!」



バシャアァァッ



3人のメイドによるコーヒー、クリーム、チョコ。の、顔面投下!男性客の顔はもう見れないほど、クリームとチョコ塗れになり、コーヒーの熱さと彼女達の投石能力によって後退して、マットに衝突して床に転がった。


「あつつつつつっ!でも、旨ーい!!」

「大丈夫ですかー?お怪我はないですか?」


あんた等が怪我させてんじゃん!!……かに思うが、投げつけたメイド達はすぐに男性を介抱するというグッドサービス。すぐに顔のクリームやらチョコがとれていく。その様子を注文を受けたメイドが写真撮影。その場で現像まで行なう。するとどうだ、



「はーい、こちらがお客様の写真となっております」

「あ、ありがとうございます!」


3人のドジっ娘メイドが男性の介護を行なっているかのような、楽しいメイド達との一枚としてなってしまう。メイドに助けられる(投げつけられるのも初だろうが)という事態なんて、早々ありはしないことを保存までやってくるなんて、男共……否、変態共にとっては至福過ぎるのだ。


「あはははは!よく来たわね!ミムラに彩!!」

「アカリン先輩!!」


ミムラの先輩である灯もメイド姿であった。出会う前に散々、似合わないと思っていた二人だったが、



「えっ!?山本先輩なんですか!?ねー、ミムラ!メイド服が似合ってますよ?」

「わ、私にも振らないでよ!」

「……それって2人共、あたしにはこーゆうのが似合わないと思ってたってこと?」


隠していた本心をアッサリと言ってしまった彩は否定する気がないくらい、真っ直ぐで天然な笑顔を見せ付けた。灯も内心では似合わないと思っていたため、否定はしないし、暴力も振るわない。しばしの、微妙な空気の沈黙の後で、ミムラがこの喫茶店にて口を切り込んだ。


「と、ところでなんですか?この喫茶店」

「喫茶店じゃないわよ。殴られたい屋よ」

「すっごい危ない雰囲気ですよ!本音過ぎる!」



こーゆう企画をOKした大学側も、問題がある気がする。しかし、問題とは裏腹にかなり繁盛しているようだ。つまりは世界には変態の方が多いということ。



「私達もストレス解消、お客も大満足ならそれで良いわよね!」

「お客様は危ない気がします!」


とんでも企画に、さらなる特典を上乗せする灯。


「あんた達。せっかく来たんだからやりなさい!」

「い、嫌ですよ!コーヒーをぶっかけられるの!」

「違うわよ、メイドになってお客を楽しませてやりなさーい!そのために呼んだのよ!」

「ひぇーー!」



灯に捕まったミムラと彩は更衣室でメイド服を着させられる。恥ずかしい恰好だよって思ったのは数分ぐらいで、これが意外にも合うわけだ。


「メイド服って意外と合いますね。初めてだから、緊張しちゃったかな」

「山本先輩に合う服なら私達にだって合うわよ、ミムラ」

「あちゃー。なんか聞きたくない言葉だったわー!……まー、ともかく!接客なさい!!」


背中を強く押されて接客などをやらされる二人。ミムラはドギマギであったが、彩はすっごく興味を示したのか、


「パイ投げをやらせてくださーい」


自ら楽しそうなことに挑戦する。クリームがたっぷり乗せられたパイを手にとってお客様に天使な笑顔を飛ばす。


「クリーム行きまーす」


彩の投げ方とはまるで一致しない。天使の笑顔と声がどこにいったのか、尋ねたくなるほどの剛速球でパイをお客様に向けて投げ込んだ。



バヂイイイィィッ


炸裂した音は爆竹と似た激しいものであった。


「あ、外しちゃいました」


パイはお客様にではなく、後ろにあったマットに炸裂した。クリームがべっちゃりと付いていた。当たらなくて良かったと思っているお客様、そして、ミムラや他のメイド達。とんでもない速度だった。しかし、彩の天然は優しさを含んだ悪意的な自然さを出した。


「ごめんなさい!あの、ただいますぐに!」


お客様を介抱?しようと、近づいた彩。突如、お客様の顔を掴んで無理矢理、クリームがべっちゃり付いたマットに擦りつけ始めた。


「ご注文のクリームをお食べになってください!」


端から見ると、彩がお客を虐めているにしか見えない。いや、虐めているお店だけど、度が超え始めている。写真を撮っているメイドさんも、「これ、天然などSメイドだわ」などと感じた事を呟いてしまう始末。


「頑張って舐めて食してください」



その後、メニューには食品よりも、メイド達の行動によって値段が決まるようになった。

罵倒を好む変態も、ぼこられたい変態も、どんどんとやってきたそうな。彩は祭が終わるまで一番人気でメイドを楽しくやっていた。



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