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第四話赤い変人と助ける条件

五月も中盤にさしかかった頃、暑さが少しだけ増した気がする。

目に映るだけの人々達は暑いのだろうか、薄着が目立ち始める。

この景色を見るのを久しぶりに感じるのは、僕が少しだけ大人になった証拠なのだと少しだけ誇らしげに笑みを浮かべる。

「久しぶりだな!幻徒!怪我はもう良いのか?!」

耳が痛くなるような声で、挨拶をして来たのは虎雄だった。

「あぁ、久しぶり。元気だったよ」

いきなりの出来事で、少し驚いてしまった。まだ、怪我が完治していないのだろうか。

「びっくりしたぜ。次の日にお前が事件に巻き込まれて、軍に保護されたなんてさ」

驚くは当然なのかもしれない。正体不明の化け物に襲われて、軍に保護される事は普通に生きていてない事だろう。

「僕も驚いたよ。いきなり、切り裂きジャックに襲われるたりして」

久しぶりに幼馴染との他愛無い会話に華を咲かせる。会話に夢中になっているのかあっという間に駅についてしまった。

日常会話がこんなに楽しいものだと、初めて実感を得た。


こちら、明。対象に異常みられず」

物陰から、幻徒達の様子を伺っている。

『おっけ~。引き続き監視を続けて』

何時ものいい加減な口調が耳に聞こえる。

「良いのですか?事件が解決して、もう星下は無関係なのでは?」

素直な疑問を口にする。

『なんとしてでも、彼を部隊に入れたい。それにあれで終わりだとは俺は思っていない。何もなければそれで良いんだけどね~』

耳元から本音と推測が聞こえて来る。ただ、星下幻徒はたまたま事件に巻き込まれたと思っている。

だが、本当に星下家の生き残りだとすれば少し興味がある。

『さっきから雷火の反応が離れているがどこに行った?一緒だったはずだ』

「え?あいつは…」

名前を聞いて思い出し、視点を左右に移動する。

駅前の売店で何やら、買い込んでこちらに戻ってくる見覚えのある姿があった。

「いや~、駅前の売店ってうまい物が沢山あるんだな!明も食う?」

ご機嫌の様子で戻って来るその姿に思わず、拳を強く握る。

「おい、雷火。貴様、今は任務中だと解っているか?」

何時ものように、自然と銃に手が伸びる

「ま、待て!ここは人目がある!それに朝飯がまだだろ!?お前の好きな三色パンも…」

「仕方ない、それで許してやろう。尾行の続行だ」


あ!星下君だ!大丈夫だった?」

学校に到着して教室に足を踏み入れると、女子生徒が声をかけて来た。それと同時に複数の生徒が幻徒の周りを囲んだ。

この状況に少し驚きはしたが日常に帰って来たのだと実感する。

「ねぇ?切り裂きジャックって、どんな奴だった?」

一人の男子生徒が質問を口する。

「えぇ…、どんな奴って言ってもな…。でかくて…」

幻徒が答えようとしたその時、誰かが背後に立っている気配を感じた。

「お前ら、席に付け!出入り口に集るな!出欠を取るぞ、席に付け」

担任の田中が教壇に立ち、出欠を取り始める。こうして、「日常」が始まる。

これであの出来事から開放されたとのだと思うと、自然と安堵に包まれていた。

予鈴がなり、一時間目が始まろうとしている。その時だ、一瞬だけこの間と同じ感触が頭を過ぎった。

「気のせいか…」

命の危機の目にあって、まだ気が立っているのだと思う事にした。


教室の窓から、空を見上げるとここが学校で自分の居場所に帰って来たのだと少しだけ顔がにやけてしまう。

それにクラスメイト達も自分を心配してくれた。少し変かもしれないが、嬉しかったのだ。

もう、あんな事件には巻き込まれないだろうと勝手に思い込む事する。

安心して、教室を見渡すと廊下から叫び声が聞こえて来た。

「キャーッ!誰か来て!」

その声が絶叫のように教室中に響き、誰もが驚きを隠せない。

「お前達!席に座っていろ、様子を見てくる!」

教科担任が廊下に出た瞬間だ。今まで気づかなかったが、教室の温度が高く感じたのだ。

幻徒が気づいた時には教室のクラスメイト全員、倒れていたのだ。

「え…。いったい、何が?」

思わず席を立ち虎雄の傍により、声をかける。

「虎雄!大丈夫!?」

声をかけるが、返事が返って来ない。

「げ、幻徒か?お前は無事か?早く、救急車を…」

今にも消えそうな声だけ残して、目を閉じた。

「と、虎雄!そうだ、救急車!」

ポケットの中から、携帯電話を取り出し救急車を呼ぼうとタッチパネルのボタンを押そうとした時。

「はっはは、どいつもこいつもだらしねぇな!たった、これだけの暑さで倒れるだもんな!」

廊下から、聞き覚えがない声が聞こる。どうやら、こっちに近づいて来るようだ。

幻徒は何を思ったか、立ち上がる。

「ん?この結界の中で立っていられる奴。お前、魔術師か?」

声の主がこちらに視線を向けてくる。この感覚は幻徒は覚えている、切り裂きジャックに襲われた時に感じた嫌な感触。

「僕は、魔術師なんかじゃない。ただの高校生だ」

質問に答えてしまった、男の目が鋭く幻徒を睨み付ける。

その男の容姿は、街中に居れば目立つ姿をしていた。朱色をした髪、髑髏模様をした半そで、赤色に煌く両手のグローブ、同じく赤色に輝く靴。

「ただの高校生が俺の結界中で立っていられるわけねぇだろ。魔力が無い人間は結界の中でとっくに倒れてる、その中を平気なツラをしてる。お前、星下幻徒だな」

幻徒は男の言葉が耳に一切入っていなかった。その代わり、男の奇抜な格好に目を奪われていた。

「はぁ…」

また面倒な事に巻き込まれてしまった。そう、思うとため息が自然と零れてしまう。

「おい、質問に答えろ。俺は気が長い方じゃねぇんだ」

この状況から、どうやって抜け出そうか思考を働かせる。

「おい!早く答えろ、自分の名前も言えねぇのか!」

男の声と同時に窓ガラスが割れた音が聞こえた。確かに音は聞こえた、だがガラスの破片が溶けて消えた。

「え…。まさか…」

「いい加減に答えてくれねぇかな…。じゃないと、骨まで溶かしそうだぜ」

この感触は間違いない、あの時と同じだ。つまり、この男は魔術師だ。

何をしたかはどうでも良いのだ。どうやって、この状況から抜け出そうか考えていた。

幻徒の後ろには窓がある。何を思ったか窓を出てベランダに出る、そして飛び降りた。

「くっ…。なかなか根性あるじゃねぇか」

男はベランダから下を見ながら、呟いた。


「危なかったな…、二階で助かった」

幻徒が落ちた場所は花壇だったようで、運が良く落ちる事が出来た。そのお蔭で怪我が無く済んだ。

「こんな所に居る場合じゃない」

花壇から出てグラウンドに足を向けて、走り出した。


今の自分が出せる精一杯の力でグラウンドを走っていた。

「はぁ…、はぁ…」

あの男をどうにかするため思考を巡らせる。

「敵に背中を見せるのか!逃げるんじゃねぇよ、星下幻徒!」

後ろの方から、声が聞こえたと同時に何か熱い物体が飛んで来るのを感じた。

「あつ!」

一つだけ、頭の片隅にあった言葉を思い出す。

『何かあったら、電話をしてくれ』

この言葉を思い出し、ズボンの中から携帯端末を取り出す。

「はぁ、はぁ、もしもし!星下です!」

『もしも~し、久しぶり。星下君、どうしたの?そんなに息を荒くして?』

「今、学校に変な男がやって来て!大変なんです!」

『それで、俺にどうしろと?』

「助けてください!」

『良いよ。ただし、条件がある。それが飲めないのなら、助ける事は出来ないな~』

「は?!この状況に何言ってるんですか!生徒が全員、倒れてるんですよ!」

『それって、俺に関係ある?ないでしょ?こっちも暇じゃないんだよ』

「わ、解りました!それで条件ってなんですか!」

『俺の部隊に入れ、それが条件だ』

「入ります!入りますから、助けて下さい!」

この時、風斗の表情は笑みを浮かべていた。


『雷火、明、聞こえるか。作戦行動開始だ!目標、赤髪の魔術師だ!』

「「了解」」

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