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一度あったことはもう一度

「あの~、これからどこへ?」

「さっき言ったはずだが?貴様は人の話を聞いていないのか?保護すると」

「そう言う意味ではなくて…。場所をですね…」

幻徒は大日本帝国軍所属だと言う、女性に車の中に乗せられたのだ。

車内の雰囲気は最悪の一言で片付いてしまうほどに空気が重かった。


現在、女性が運転する車は第一区画から第四区画に向かっているようだ。

第一区画から第四区画まで、車で北に約一時間で到着する。


第四区画。警察機関・政府機関・大日本帝国軍本部などの建物が集中している区画である。

同時に日本の国家機密が集合している奇怪な場所である。

それはなぜか、他国との衝突があった場合に備えてとある装置が設置してあるためである。

そのために関係者以外立ち入り禁止の場所がある。

「大日本帝国陸軍本部所属非科学部門だ」

「は?第四区画に軍施設があるのは知っているのですが…。え?長くて聞き取れなかったのですが」

「私は二度も同じ事を言う事が嫌いだ。少しは黙っていろ…」

幻徒は不味い事を聞いてしまったような感情に駆られ、口を閉じることにした。


車の中から見える景色を眺めていると、一般人が普段入る事がない建物が並んでいた。

どうやら第四区画に入ったようだ…

第四区画、国会議事堂や大日本帝国軍の本部がある区画であり、一般開放もされており別に珍しくも何いのだが。

一箇所だけ、立ち入り禁止の場所がある。

「着いたぞ」

「え?ここって、関係者以外立ち入り禁止って…」

目の前には検問所があり、そこを通るつもりらしい。

「私は関係者だ、問題ない」


「ちょっと待て、所属と部隊名。それに許可証を…。八雲さん!これは失礼を!」

「いや、良いんだ。これを」

「は!確かに…。その民間人は?」

「すまない、秘匿義務で教える事はできない」

「こ、これは大変失礼な真似を!お通り下さい!」

この女性は軍関係者でも特別な階級の持ち主なのだろうか、

車の中で「非科学部門」と聞き覚えの無い部隊名を言っていたのを幻徒は思い出していた。


検問所を通り、立ち入り禁止区画に車が入る。そこには、教科書や見学では見たことがない建物が建っていた。

現代的な建物が並んでおり、何も特別な物は何も無いようだ。

そのさらに奥にボロボロの建物が建っていた。

「ここだ…」

「え?!ここですか?」

女性は車を停車してドアを開ける。その時、風が彼女の綺麗な黒髪をなびかせる。

その姿に幻徒は見とれてしまった。

「早く降りろ。ぐずぐずするな」

「は、はい!」

「私は、行動が遅い男が嫌いだ」

「は、はぁ~」

「返事ははいだ!」

「はい!」

「付いて来い!」


ボロボロの建物に足を踏み入れるとそこには直ぐに穴が開きそうな廊下、しみだらけの天上。

これはまるで、お化け屋敷である。

「ここだ」

入り口から少し歩くと「非科学部門第五部隊」と書かれた、看板がドアの横にかかっていた。

「失礼します。八雲明一等兵、ただいま任務が完了しましたので戻りました。星下、入れ」

「は、はい…」

部屋に入ると二十畳ほどの広さのリビングがあり、明と幻徒が入って来た入り口から一メートル離れた場所に

机があり、そこにぼさぼさ頭の男がだらしなく座りながら携帯ゲームをしていた。

「ご苦労さ~ん。やべ、選択肢間違えた…」

「隊長、対象を確保しました」

「今、急がしいんだよ…」

明が隊長と呼ばれる男の前で報告を行うがまったく聞いていないようだ。

「隊長…」

「あぁ…、明!?落ち着け!じゅ、銃をしまえ!」

話を聞いていないのが頭にきたらしく、腰の銃を男の頭に突き付ける。

「私は冷静です。隊長が勤務中に遊んでいるから私は怒っているのです」


「えぇ~。改めて第五非科学部門にようこそ、星下幻徒君。私はこの部隊の隊長、八雲風斗やくもふうとだ。よろしく」

その男の口調は軍人と思えないほどだらしない。だが、男の目付きは鋭い。

「何から聞いて良いか解らないんですが…。何で僕はここに?」

「そうなるよな、普通。そこのソファーに座ってくれ」

風斗が座っている席から直ぐ横に来客用のソファーがあるのだが、男が寝ていた。

「雷火。おい、雷火起きろ!」

「あぁ?なんだよ、せっかく気持ちよく寝てたのによ…」

「明が対象を連れてきたんだよ!ほら、しゃきっとしろ!」

「隊長に言われたくねぇよ」

口を開いた男は、気だるく身体を起こす。

「えぇ~。一様紹介しよう、天ノ雷火あまのらいかだ」

「あぁ?誰だ、こいつ?」

「言ってただろう、例の保護対象だ」

「は?」

「お前、人の話を聞いてなかったのかよ!何日か前に話しただろ!?」

天ノ雷火。非科学部門第五部隊所属の軍人である。

年齢二十八歳、身長百七十八センチ。容姿は顔つきはいかつく、身体つきは筋肉質だが細身である。


「えぇ~、星下幻徒君。まず、事情を説明しなければならいの流れだよな…」

幻徒が座っている席の目の前に風斗が座っていた。まず、幻徒の視界に入ったのは風斗の右腕に包帯が巻かれていた事である。

怪我でもしているのかと、勝手に思考を巡らせる。

「実は君を保護する理由がまだ、上から聞いていなくて…。そのなんだ…」

風斗は気まずそうに頭をかいていた。

「え…。それじゃ、答えになっていんじゃ?」

「そうなんだけどね。君も疲れただろう?今日は泊まって行くと良い」

「家に連絡しないと…」

「大丈夫、親御さんにはこっちで連絡しておくから。汚い所だけどね、ゆっくり休むと良い」

「わ、解りました。そうさせてもらいます…」

幻徒は何故か風斗の言葉に違和感を覚えていた。

明らかにおかしい、どこがおかしいかは説明できないが風斗の表情が笑っていないのだ。

軍人だからと言われれば、納得せざるおえないのだが…

「星下、着いて来い。私が案内する」

この言葉に幻徒は我に帰る。

「は、はい」

席を立ち、部屋を出る。廊下から外を見ると空に星が散りばめられ夜空を彩り、夜の訪れを告げていた。


「将軍。対象を保護したが、いかがいたしましょう?」

静まり返った、部屋で八雲風斗は誰かとモニター越しに口を開く。

「そう、気を急かすな。白髪が増えるぞ、八雲」

モニターから聞こえる声の主は年配の人物のようだ。

「はい。ですが、本当なのですか?星下家の生き残りだと言うのは?」

「わしもまだ、確証は得ていないのだ…。何か解ったら、連絡する」

「は、解りました。獅子皇将軍、それでは失礼いたします」

「ちょっと待て」

「何でしょうか?他に何か?用件は伝えたはずですが?」

「まったく、年寄りを邪険にするもんじゃないぞ。後一つ、頼みがある」

「何でしょう?」

「星下幻徒君の事だが、よろしく頼むぞ」

「え…。もちろん、そのつもりです。では通信を終わります」

風斗の通信相手。大日本帝国陸軍将軍、獅子皇京志郎ししおうきょうしろう

彼は同時に大日本非科学部門第一部隊代表でもあり、魔術関係などの責任者でもある。

「あの親父…。また、面倒な事を俺達に…。はぁ、いつも事か」

口を開きため息を付き、煙草を口にくわえる。


窓から朝日が差し込み眠りから目を覚ますが身体がまだ、眠っていたいと要求する。

その要求に答えようとするが…

「おい、起きろ」

「う~ん。まだ、眠い…」

「貴様、私に対して良い度胸だな…」

声が聞こえるが、気にせずに眠りに入る。

「いい加減起きんか!それでも日本男子か!」

「び、びっくりした…。八雲さんか、あのまだ五時半なんですけど…」

「良いか、ここの起床時間は六時だ!覚えておけ!そして、集合時間は六時半だ!」

「え…、僕はそんな事は…」

「口答えするな!良いから、顔を洗って来い!」

「は、はい!」

明の言葉に身体の背筋が伸びる。彼女の声は何故か、身体の芯まで響くのである。

幻徒はその感覚を不思議に感じていた。


「皆、おはよう~。さっそくだけどさ、仕事が入ったよ…」

幻徒と明が第五部隊の部屋に行くと、既に雷火がソファーに座っていた。

そして風斗がだるそうに席に座っている。

「これ、命令書ね~。皆、目を通してね~」

「風斗さん、この民間人もって書いてあるんですけど?!」

雷火が驚きで口が開くが風斗はまったく動じていない。

「あぁ…、今回の作戦は星下君にも参加してもらう」

その口調は冷静で迷いは微塵も感じられない。

「え?ちょ、ちょっと待って下さい!僕も参加ってどう言う事ですか?」

「説明を全くしていなかったな、作戦参加は自由だ。君は軍人ではないからな、それは仕方ない事が」

全く予想していなかった、出来事に幻徒は動揺を隠しきれない。

「そ、そうで…」

幻徒が口を開こうとして瞬間。

「そうか、嫌か…。それなら、仕方ないな。君はあの切り裂きジャックに狙われている可能性がある人物だ。このまま家に戻って、また襲われる可能性がある。それでも拒否するのなら…」

「それって、最初から僕に選択権なんてないじゃないですか!また、僕にあんな怖い思いを…」

また昨日と同じ事が起こると想像した瞬間、幻徒は声を思わず荒げてしまうが後頭部に冷たい金属が突きつけられるのを感じた。

「ひっ!」

「止めろ、明!星下君、君の友達や家族が危険な目にあうのは嫌だろ?」

「は、はい…。解りました、協力します」

「じゃー、早速準備だ!雷火!星下君に何か武器をやってくれ!」

「はぁ?急に言われてもな…。あ、部屋の隅に何かあったわ」

「護身用にこれを預けるよ」

「は、はぁ…」

幻徒渡された物はボロボロの日本刀だった。


これから、あの恐怖をもう一度味わいに行くとなると身体と気分が重かった。




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