キャシューカード 残高0円
が~ん。
銀行のキャッシュコーナーの前で呆然と立ち尽くすオレ。
預金通帳の残高欄には、むなしくも「0」の一文字だけが書いてあった。
赤字にならなくてよかった。借金なんかしたらやばいよな。
なけなしの定期崩したくないっ。
などと、余裕の一言とも言える台詞を吐いてみたりなどして、現実から目を逸らそうとしてみても……。
「やっぱり、ダメだ」
ぼそっと、呟いたオレは
近くにあった椅子に座り、預金通帳を見直す。
なぜだ。
なぜなんだ?!
確か半年ほど前まではここに、六桁の数字があるのに。
これでも節約に努め。金を溜め込んできたはずなのに。
理由はわかっている。
あいつらだ。
あいつらがやってきてからだ。
オレを苦悩させている元凶たちめ。
オレの金をバカバカ使いやがった女どものせいだ。
この間だって……。
「はーい。お土産」
「おい、ちょっと待て。これ全部、お前らが買ってきたのか?」
「そうよ。みんなで食べようと思って。すごくおいしいよ。これ」
部屋の中の一角にでで~んと置かれたお菓子の山。
彼女たちはすごく楽しそうだが、オレは全く楽しくない。
急いでお財布をひっくり返してみたが、何も出てこない。
「全部使ったのか……?」
青ざめる俺に笑顔で「うん」と頷き返した女たち。
石になって壊れてみたい。
まさに、そういう心境だった。
一週間分の食費がっ!
一瞬にして消え去ったのであった。
女の買い物は、はんぱないと聞くが。なぜ、それが、よりによって、消費するしかないお菓子に変わるのかね?!
服なら身包み剥がしてでも古着で売りさばける可能性あるのに。
思い出したくもない思い出に浸っていると、姫神が姿を現した。
何を深刻そうにしているのか、わからない様子で理由を尋ねてくる。
だからオレは、お前らのせいで、せっかく積み立てた金が、ぱーだ、と涙ながらに訴えた。
けれど、姫神はなんとでもないといった様子でオレに言ってきた。
「稼げばいくらでも手に入るだろう?」
親にでも相談しろ、と。
オレはすかさず反論する。
「これ以上何のバイトをどれだけ入れろって言うんだ?!お前らが来てから、バイト三つも増やしたんだぞ。あいつらが、稼いでくれればな……」
いや、ダメだ。
万能悪魔はオーケーだろうけど、他は心配だ。
あの傲慢天使は何か問題起こしそうだし、浮遊霊じゃあ働けない。
姫神じゃあいくらなんでもなぁ。どう見ても、小学生だからなぁ……。
狐はコスプレでなんとかいける可能性は……微妙だな。迷子になると困る。
「神なら俺を幸福にしてくれるよな。お金をどうにかならないかな」
「賽銭でも使うか?」と姫神は言う。
一応、自分たち神のためにくれているのだろう。と言って。
だが、それじゃあ、賽銭泥棒だ。
そんな案を、浮遊霊にでもしたら、誰かに憑りついて銀行強盗しかねないし。
天使でありながら、やつは男から巻き上げそうだし。
あー、やっぱ、無理じゃん。