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姫神様は猫が敵
「ぬぬっ!?!!」
とある場所で姫神は、オレの言い表せないような表情と姿勢で固まった。
「何やってるんだ?猫。かわいいだろ」
「かわいいとな?わらわには理解できぬ」
猫は、「にゃーにゃー」可愛く鳴いている。
日向ぼっこよろしく寝そべっているが、どうやら、姫は猫が苦手のようだ。
「招き猫とかあるじゃん」
「そうじゃとしても、わらわは……」
「わらわは、猫が苦手じゃ。犬ならまだよいがのう」
「犬?ああ、そっか。神社には狛犬がいるから、犬の方がいいのか。なんとなく納得」
「あれ?でも、確か。どこかに猫を祀る場所が……」
野良猫にしては、思いのほか毛艶のいい猫を撫でながら、この町の地図を脳裏に描く。
ま、いいか。
「それより、姫、あれ、何だと思う?」
オレが指摘した場所。
そこには見慣れぬ、ふさふさの尻尾。
それをぶんぶん振り回し、今にも涎を垂らさんばかりに豆腐屋を見つめている、
平安衣装を纏った金茶の長い髪の女の子。
耳も同じ色でぴくぴく動いている。
「あれは狐じゃ」
「狐?」