第二話:分別決別。
今日すごい雪が降りました。
数分だけね。
「爺や、ちょっといいか?」
「なんでございましょうか。ぼっちゃん」
「ぼっちゃんって言うな」
「失礼、かみました、でございます」
「全然可愛いとか思わないからな」
「かみまみた」
「黙れ。ところでだ。やっぱりこんなに俺が金持ちだと、彼女引いちゃったかな」
「でしょうかね。彼女非常に驚いていたようですが……」
これは久遠家での文化祭後の次の日の日曜日の会話だった。
「さて、凛ちゃん。あの男の子は誰なのかにゃー? お母さん気になっちゃってるんだけどー!!」
「べ、別に特に関係なんて……」
「すっごいお金持ちだったんだよね……」
「ねぇ、好きなの、好きなの?」
帰るなり家族(母と妹)に質問攻めにされた。
「玉の輿よ玉の輿!! 絶対落とすのよ!!」
「そんな……、彼が私のほうなんて振り向いてくれるとは思えないもん」
「そんなことは無いわ!! 頑張るのよ!!」
「そこの応援されても……」
結局寝るまで延々と質問攻めにされた……。
久遠君があんなお金持ちだったなんて……。
どうしよう……。
そして文化祭から空けて二日後の10月22日(月)
「という訳で、お金持ちの男の子の落とし方を教えて欲しいのです!!」
「欲しいのですって言われてもねぇ……」
2時間目の休み時間、思い切って委員長に相談して見ることにした。
委員長なら口も堅いからこういう相談相手にはぴったりだ。
「だって委員長なんでしょ? 皆さん、モテてますか? と相談相手を解決する」
「私はめちゃモ○委員長か何かと勘違いしてないかな……」
「そうじゃないの!?」
「そうじゃないに決まってるでしょ!!」
おかしいな。
現川くんに聞いたときはそうだって言ってたのに。
「やっぱりあーちゃんね……。で、それはともかく。その人は久遠君で間違いないわね?」
「え、どうして分かっちゃったんですか!?」
「お金持ちといったら彼くらいしか思い浮かばないもの」
あ、そうか。
最初に言っちゃったんだった。
「そうね、それはどうしようも出来ないかも知れないわね」
「そんな身もふたも無いことを!!」
「だって文化祭の誘いを受けてくれたんでしょ? もう脈ありじゃない。後は何とかなるんじゃない?」
「なんか委員長投げやりだね……」
「ちょっとイライラすることなんてなかったわよ? あーちゃんに会いに行こうとか思ってないわよ?」
「出てる出てる」
それはともかく。
本当に脈ありなんだろうか。
だって私普通だよ?
極めて特徴が無いんだよ?
その渦中の久遠君は男子と楽しくお喋りしています。
ポッ。
「あーもう可愛いなー凛ちゃんはー」
ぷにぷに。
頬をつついてくる指が一つ。
東雲火音だった。
彼女は私の友達の一人で、私が久遠君のことを好きだということも知っている。
「こんな可愛い子を放って置くなんて罪な男ねー、久遠君」
「可愛くなんかないって……」
「まーたそんなこと言ってー。そういや結局文化祭も誘えたんでしょ? 後一押しでいけるんじゃない?」
「いけるんじゃないって……」
確かに文化祭前の私なら今よりはちょっとばかし積極的になれたかもしれない。
でも。
あんなお金持ちだったと分かって。
今の私には、久遠君に近づく勇気すら無くなってしまっている。
私ひとり舞い上がっちゃっただけなんだとか。
そんなことを考えて。
どうせあのことも忘れているんだろう。
普通なら玉の輿とかいって喜べばいいんだけど…、脇役の私にそれはあってないんじゃないのかな……。
ああいうの見るとテンションが上がりますねー。
雪凄い。