第一話:脇役主役。
さて
咲乃と久遠編、ようやくスタートです!
この話が一番作りにくかった気がしますね…。
私は、極めて普通の女です。
テストを受ければ平均点、走れば平均、投げても平均の、キング・オブ・普通なんです。
物語で言えば脇役的な存在です。
委員長みたいな人とは違う。
そんな私が極めて普通に恋をしました。
恋をした彼の名前は久遠零次君です。
私は普通に恋を心に募らせていきました。
ただし、彼は圧倒的に普通では無かった。
彼は社会的に主役となるべきような人間だったのです。
「あ、あの、久遠君!!」
「何?」
私は彼を追いとめた。
「その……、良かったら、文……」
「文?」
いけない。
深呼吸深呼吸。
「文化祭、一緒に回ってくれませんか!!」
今日は10月12日(金)
文化祭まで後八日という時だった。
私、咲乃凛はこの日一世一代の大勝負をしました。
久遠零次君を文化祭に誘ったのです。
「そうだな、別に良いけど?」
その答えはなんとOK。
人生最大の賭けに勝ちましたよ!!
それから一週間。
気になって楽しみで全然眠れない夜が続きました。
そして文化祭当日。
「久遠くーん!!」
彼は携帯をいじりながら正門前で待っていた。
「ん、来たか。」
この後、彼と普通に文化祭を回りました。
どんなことしたのか?
普通ですよ?
お化け屋敷に行ったり、模擬店でラーメンを食べたり。
そういえば軽音部のライブも見ましたね。
すっごく綺麗な人がいたんですよ!!
あれ、誰だっけ?
木賊君も誰だって聞いてきたんだけど…。
正門前、時間は夕方だった。
「ふむ、今日は随分と楽しかった」
「そうなの!? ありがとう久遠君!!」
「そうだ、家まで送ろうか?最近通り魔がいるらしいし」
「いいの!?」
これは驚きの展開。
帰るところまで一緒だよ!!
ここで、私は久遠君の凄さを思い知ることになる。
「爺や。全部終わった。車はどこにある?」
爺や?
お爺さんなのかな……。
それに車ってどういう……。
その答えはすぐにやってきた。
ブゥンと黒くて長い車が正門前にやってきた。
これってリムジンって奴じゃないのかな?
すぐにリムジンのドアが開かれて、おじいさんが出てきた。
すごく親切そうな人だった。
するとその人は後部座席らしきところのドアを開け、こちらを向いた。
「ぼっちゃん、お帰りでございますか。して、そこの彼女は?」
ぼっちゃん?
誰のことだろう。
「爺や、僕のことは零次と呼んでくれと言っただろ。彼女は俺が家まで送ろうと思う。お願いできる?」
「無論でございます。零次様」
いやうすうす分かってたんだよ?
模擬店で万札とか出してたもん。
でもここまでだったの?
「ほら、乗るぞ」
「え、ちょ、ちょっと!!」
結局彼に連れられるように、リムジンに乗せられた。
そしてリムジンで帰宅。
私の家族もあんぐりと口をあけて驚いていた。
「ちょ、アンタ何よあれ!!」
「おねぇちゃん……、ぱないの」
「家族会議よ!!」
結局久遠君にさよならも言えず別れてしまった。
実感したことがある。
久遠君はお金持ちで主役。
私はただの庶民で脇役。
彼には、もっとつりあいになりそうな人がいるんじゃないのかな……。
さて、今回は人外的な人は出てこないので、少し薄いかもしれませんねー。
では今回も一週間短期連載でどうぞー。