第五話:謎の展開。
5W1Hってあるじゃないですか。
what,who,where,when,why,how。
何かhowだけ浮いてない?
どうしてあの男はこんなに私に構うのだろうか。
普通怯えて逃げたり、忘れてしまうはずなのに。
幸せ?
そんな馬鹿な。
私が、ただの学生に、
恋をしてしまっている?
こんなに幸せだと、木賊が私を忘れたとき耐えられなくなる。
アイツも私を忘れた。
木賊もアイツと同じだ。
もうあんな思いはしたくない。
離れないと。
そうして平和な日々が一週間程続いたある日のことだった。
「なー琴浦ー」
【……】
「琴浦ってばー」
【……】
「こーとーうーらー」
【うるさいわね、さっさとどこかに行きなさい】
「どうしてだよ琴浦ー」
10月31日(水)
朝のことだった。
急に琴浦が冷たくなったのだ。
何故かは分からないけど。
「というわけなんだよ委員長」
「どうしてそこで私に頼るって選択肢しかないの……」
「いやいや、困ったときの黒瀬とは誰がいったか知らんが当意即妙とはこのことだろ?」
急に冷たくなった琴浦の謎を暴くために、委員長に聞いてみることにした。
「前日までに彼女になんかしちゃったとかは?」
「ないな。多分」
「じゃあ何なのかしら……」
大変だ、あの委員長が困っている。こんなことほとんど無いんじゃないか?
そういえば。
あの時抱いたふとした疑問を聞いてみることにした。
「そういえば委員長、前俺が琴浦のことを聞いて成仏させてやりたいって言ったら“私じゃその役は無理そう”って言ったよな。なんでなんだ? お前は何でも出来るだろ?」
「何でもは出来ないよ。出来ることだけ……ってそうじゃなくて、琴浦さんはそんなに私とは喋ってくれなかったわよ」
喋ってくれなかった?
随分と自分のことあっさりと、さっぱりと、きっぱりと、すっぱりと、そしてやっぱり淡々と喋ってたぞ?
「おいおい、そりゃないだろうよ。アイツ結構喋るぜ?」
「それが元々珍しいのよ。彼女の死因を知っていればあなたの方がおかしいってくらい分かるはずよ」
「死因?」
そんなこと気にしたこともなかった。
恋は盲目とはよく言ったものだ。
マジ当意即妙。
ごめん当意即妙って使いたいだけ。
「彼女は30年前、いじめを苦にこの学校で自殺しているの。それを考えたら、学校の生徒とおしゃべりなんて出来るはずが無いわよ」
そういう死因かよ。
そりゃ自縛霊にもなるわな。
どうすれば幸せに成仏できるのかな…。
でも、それはそれでおかしくないか?
「じゃあ何で琴浦は俺に今まで話してくれたんだ? 普通だったら委員長みたいに避けられておしまいだろ?」
「そうなのよ……。だから……、話しかけたことについては死因以外のことが原因かも知れないわね。30年もここにいれば色々とあるでしょうから。とはいってもこれ以上は私も分からないわね。後は本人に聞いて見るのが一番だとは思うわ。急に冷たくなった理由も聞けるかもしれないわよ」
「そうか……」
そこで休み時間終了のチャイムが鳴った。
「じゃあ頑張ってね。私も応援してあげるから。それと、屋上の使用権を認めます」
「………、おお。そういうことか。ありがとよ、委員長」
そして昼休み。
俺は琴浦を屋上に連れ出した。
なんでこうなったのか聞くために。
ちなみに。
このときの一週間あまりの話は、するかもしれません。
しないかもね。