第四話:furioso。
意味は激怒。
読んでいただければ分かります。
足が攣ったりしたせいもあって、屋上に到着するのには意外に時間が掛かってしまった。
だが、外から悲鳴も聞こえてこないようだし、まだ飛び降りては居ないだろう。
急いで屋上の扉を開ける、前に。
腰から携帯電話を取り出して、あるところに電話をかける。
「もしもし、乃愛か!?」
「あーちゃん、いきなり電話なんかどうしたの!? それより、今どこ!!」
電話の向こうの声は、少し怒り気味のような気がした。
「えっとな」
「また視えた、のね」
現川が言う前に、先に黒瀬が言った。
「いつも通り頭の回転は速いな。今屋上で飛び降りようとしている女の子を止めにかかってるから、もしもの時を考えて、どうにかしてくれ!!」
「どうにかって……、アバウトすぎやしない?」
「俺はお前を信じてる!! お前なら何とかできるはずだ!!」
「……恥ずかしいじゃない。とにかく、努力してみる。文化祭が出来るだけ動かないように」
「頼む!!」
そこで電話を切って、屋上の扉を開けると、すでにフェンスを乗り越えたのか、フェンスの向こう側にとある女の子は立っていた。
「……!? こ、来ないで!!」
まさか文化祭の日に、校則を破ってまで(校則に屋上に行ってはいけない、というものがある)屋上に人が来るとは思っていなかったのだろう。
よく考えたら、屋上って乃愛は来るんだろうか。
「って、こんなこと考えてる場合じゃない!!」
集中集中。
自分の両頬をパチン、と叩く。
「……? ほら、早く帰ってよ。どうせあなたには楽しい楽しい文化祭が待ってるんでしょ!!」
いきなり頬を叩いたことに不思議に思ったようだが、すぐに怒ったようにまくし立てた。
「おいおい、そんなこと言うなよ。お前だって文化祭は楽しいんじゃないのか?」
「私は、こんな文化祭、ぶっ壊れちゃえば良いと思ってるわよ」
その目は、とても悲しげだった。
「どうして、どうしてなんだ?」
「そんなことアンタに関係ないでしょ!!」
「いいやあるね!!」
現川は叫ぶ。
「俺の、将来彼女になってくれるかもしれない女子が、他のみんなと協力してこの文化祭を作り上げてんだ!! それを邪魔させやしないし、そんな不幸そうな顔させやしねぇ!!」
「ふざけないでよ!! 何よその理由!!」
「一体何でこんなことをしてるんだ!! 命を粗末にするなんて、俺の目が届く範囲なら、そんなことさせる気は無い!!」
「アンタに私の何が分かるのよ!!」
その目は涙で光っていた。
「何もわかんねぇよ馬鹿野郎!!」
現川は、激怒していた。