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雨宮高校の不思議な話。  作者: 敷儀式四季
第一部:<木賊と琴浦>
3/37

第三話:決意は固く。

寒いです。

寒風吹きすさぶ今日この頃です。

「ゆ、幽霊!?」

 そんな馬鹿な!?

 俺が今ここで彼女の姿が見えているし、足だってあるじゃないか!

 ていうかそんなオカルトあったのか!!

【普通私に気づくことすらないわよ。ほら、“座らずの席”って、聞いたことない?】


 座らずの席?

 そういえば、そんな怪談があった。

 どうやら1年1組には、自殺した女子高生の席があってそこがずっと置かれているとか。

 なんで置いてんだよとかは突っ込んじゃいけないらしいけど。


【私そこの席に座ってたでしょう。窓際の一番後ろ】

「そういやそこだった気が……」

 いやいや、こんな綺麗な幽霊もいるもんなんだな。

 もうすでにほとんど幽霊であることを認めてしまっている自分に驚いた。

 意外と順応できるもんなんだな。


【あなた、驚かないのね。幽霊よ?】

「いや、驚いてるぜ?」

 そりゃもう。

 ただ驚きが一周してポカンとしてるだけだ。



 そういやあの委員長もそれっぽいこと言ってた気が。


「彼女、ああ、琴浦真理亜さんよ。私達のクラスの人じゃない。珍しいわね、木賊君がそんなこと聞くなんて」


 あの時は何も感じなかったが、もしかして委員長は……。



【それにしても今年は珍しいわね。普段は私は気づかれず一年を終えることが多いのだけれど。今年は二人も出てきたわね】

「やっぱりあの委員長が気づいてたのか……」

【あら、まだ委員長とは言ってないのに。よく分かったわね。】

「俺はあの委員長に軽音部で歌っているあんたが誰なのか聞いたんだ……。ていうか、なんで軽音部に入ってるんだよ!! 幽霊なんだろ!」

 みんな見えてただろう。

 あんなに大々的に軽音部がやったのだから。

【あぁ、その点なら大丈夫よ。みんな忘れて(・ ・ ・)しまうだ(・ ・ ・ ・)ろうから(・ ・ ・ ・)

「忘れるって……、どういうことだよ」

【私の姿は、後から思いだそうとしても絶対に思い出せないの。一昨日の晩御飯が思い出せないように。それは軽音部の皆さんも同じよ】

「待てよ、じゃあ何で軽音部なんかに入ったんだよ」

【ああ、それは暇つぶしって言った方が良いのかしら。だって30年(・ ・ ・)もここで自縛霊やってるもの。こっから出れないんだから色々なこと試したくなるわよ。家庭科同好会とか、オカルト研究会とか色々行ったわ。でも最近トレンドってやつらしいじゃない。私もコンビ二でクリアファイルとか配られる5人組とかになれるかもしれないと思ったのよ】

「最後の動機が不純だ!!」

 そしてあれはアニメだ。(いやマンガもあるけど。)

 お前自縛霊なのに見れんのか?

 とはいえ、彼女がさらさらと言っているからあまり感じないが、俺はその言葉が気にかかった。


「ていうか、30年も居たのかよ……」

 ほとんど誰にも気づかれず。

 気づかれたとしてもすぐに忘れられてしまう。


 それは。


「それは、地獄じゃないのか……!」

【そうね、あなたみたいに3日も記憶が持っているのは良いほう。どうせすぐに忘れて見えなくなるわ】

 彼女はやはり自分の事をあっさりと、さっぱりと、きっぱりと、すっぱりと、そしてやっぱり淡々とそう言った。


 ように見えた。


 が、


 一瞬、彼女の顔が悲しそうな顔になった気がした。


 気のせいでは、無いだろう……。


「俺は、お前のことを忘れない」

【忘れる】

「忘れない!!」


 そんなの、悲しすぎる。

 酷過ぎる。


 俺は彼女を幸せに、成仏させてやりたい。


【ま、そうね。頑張りなさいよ】

 やはり彼女はあっさりと、さっぱりと、きっぱりと、すっぱりと、そしてやっぱり淡々とそう言い切ると、屋上から去っていった。


「絶対に、幸せに成仏させてやる……!」

 俺はその時、一人になった屋上でそう決めた。

アンパンって意外とおいしくありません?


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