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雨宮高校の不思議な話。  作者: 敷儀式四季
第三部:<天草と葛城>
20/37

第五話:一大事、発生。

一週間短期集中連載のはずが……


ちょっと遅れてしまいましたー。

「さて、出てらっしゃいな。流石にあなたも一般人には手を出せないでしょうから、わざわざ帰らしてあげましたよ?」

 天草と話していた時とは違う、老成された口調。


「流石真祖さん。普通の眷属レベルじゃあ気づかないのにー」

 その声は曲がり角の向こうから聞こえてきた。

 聞いたことのある口調。


 そして、赤黒いローブが姿を見せた。


「教皇庁の名に置いて、不死六真祖の一人“クロノス・ヴェルジパーナ”に制裁を下させてもらいます」

「ええ、どうぞご勝手に」

「……なめた口利けるのも今のうちってもんです。あの天草って男がいなくなってからここには人払いの魔法を掛けた。助けなんて来ない」

「私は真祖よ? 単体でも舐めるなって教わらなかったのかしら?」

 赤黒ローブの女の子は年齢に見合わないような怒りを含んだ語気。

 対する“クロノス・ヴェルジパーナ”こと葛城はあしらっているかのような口調だった。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「どう考えたって、あの態度はおかしい」

 天草は葛城の変化に気づいていた。

「ありゃ、何かあったに違いない」

 早く帰らそうとする態度。

 焦りも見えた。

「もしかして……!」

 天草は駆け出した。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「まったく……、あなた強すぎじゃない……? 私は平和に生きたいだけだってのに」

 葛城は体中から血を流していた。

 服はところどころが焼けていた。

「私、こんな極東の地に送られたからてっきり左遷されたと思ったの。私ってこんなぷりてぃーできゅーとだからねたましく思う人とかいると思ってね。でも、真祖が居るとはね!!」

 赤黒のローブを着た女の子は平和な声を上げながら、手に持った杖を地面についた。

 するといきなり空中に手裏剣のような回転する刃が四つ現れ、葛城へと飛んでいく。

 それを葛城は見事に避ける。

「自分で言うのは駄目だと思うわよ? それとも、最近じゃそういうのがプリティーっていうのかしら?」

 あくまでも挑発をする。


 体中から流れていた血が葛城の中に帰り終わったようで、血はもう流れていない。


「反撃させてもらうわよ? ユイ、我に集えよ光の精、矢の形を成して歯向かう者への手向(たむ)けとせよ」

 葛城はそう呪文を唱えると、身体の回りから光の球体が九つ出るとすべてが矢となって赤黒ローブの女の子に向かう。


「光とか使って欲しくないなー。これじゃまるで私のほうが悪いみたいじゃない。黒き盾、我を守れよ」

 その女の子は杖を身体の前で回転させ呪文を唱えると、その前に黒く丸い盾が出てきた。

 それにすべての光の矢が防がれる。


「ほぉんと、誰が闇を悪く取って光を良いものとしたのかなぁ」

「まったく、聖女シスターとは思えないわね。ともすれば神の否定になるわよ?」

「神様ねぇ……。私としては――――――――――――――――――」

 女の子はそこで言葉を区切ると、


「不死者さえ殺せればそんなのどうでも良いっての」

 そこに恨みでもあるように、言葉を強調して言った。


「怖いわね。ま、こういうタイプは大体……、私達に恨みでも持ってるって所なのかしら?」

「だったらなんなのよ? とにかく、闇と炎の下に叩き潰してあげる」

 ダンっと力強くその女の子は杖を地面に叩く。


「来たれ!! “執行者の剣エクスキューショナー・ソード”!!」

 すると、杖をついたところに真っ黒い穴のようなものが生まれ、そこから黒く輝く剣が飛び出した。

 その剣は女の子の身長くらいの長さがあり、女の子はそれを思い切り振りぬく。


「闇と炎の属性って……、貴女本当に聖女シスター?」

「黙れ。黒ずみになるまで焼き尽くしてあげるから」

 女の子はそういうと重そうな長い剣をものともせず一歩前に出、そのまま下から上に振り上げた。

 するとその剣から三日月状の斬撃が飛ぶ。


「確かに当たったら危なそうだけど……、もうちょっと操りやすいものを選んだら?」

 葛城は軽口を叩いてその斬撃を避ける。


 が、


 ボボボボッ! と炎が斬撃を追う様に飛び出し、葛城に直撃した。


「なっ!!」

 流石にこれには驚いた。


「本来の“執行者の剣エクスキューショナー・ソード”だけなら、罪を持つものを裁くだけの闇属性にして光の力を持つ剣。でも、この剣は私の改良品でね。私の炎属性を足しているから、罪を裁くって意味から炎が不死者、つまり貴女を追いかけるの」

「嫉妬の炎って訳……? モテないわよ?」

 体中から煙を出しながらも、流石は2000歳を超えているだけはありこの程度では怯まない。


「あれ……? この炎にも断罪の力がこもってるから、眷属の方でも焼け死ぬ奴だっているレベルなのに……、焼けないの?」

 不思議そうな顔をする。


「私は真祖よ? それとも、私には罪が無いのかも知れないわね? 大体、私はここの人に迷惑を掛けずに隠居生活を――――」

「ふっざけないで!!」

 またも剣を下から上に振り上げた。

 斬撃は問題ない……。

 そう思って避けようとしたそのとき、斬撃が急に逆巻く炎に変わり体積も膨れ上がって葛城に直撃した。


「くっ……」

 先ほどの炎の影響もあり、倒れこんでしまう。


 そして倒れこんだ瞬間に、両手首と両足首に地面から生えた黒いコードのようなものが絡みつき、大の字に固定された。


 そこに女の子が迫る。


「私のこの“執行者の剣エクスキューショナー・ソード”の炎は不死者を焼き、黒く輝く刀身は不死者を殺せる一品。まあ、死になさいよ」

 女の子は固定されてしまった葛城に長い剣を振りかぶった。


 あれ? 私、油断しすぎたわね。

 たかが聖女にやられるとは。

 まあ、私と同時期になった仲間達も四人も死んじゃったし。


 うーん。

 面白そうな男の子にも出会えたんだけどな。


 隠し通しても分かる。

 血の臭いとときおり見せた冷たい目。


 まぁ、こんなこと私みたいに相当な人間を見てないとわかんないけどね。


「言い残すことは?」

 女の子が最期の言葉を聞いてきた。

「私は……、別にここで争うつもりは無かったんだけれども。平和に生きる予定だったのよ?」


「ふざけないでよ。この糞不死者が」

 その言葉は女の子の反感を買ったようで、



 女の子は剣を、振り下ろした。

何かバトルっぽくなっちゃいましたー。

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