第四話:夢物語、驚愕。
この話では宗教の話題が出ますが、決して中傷等をしようと思っているわけではありません。
説明の回となっていますので少々文字が多めです。
「まじで!? やっぱり本当だったのか……」
いきなりの告白に驚いた。
だが、こればっかりは一度見てしまっているから信じざるを得ない。
「世界中に不老不死は意外と多く居るの」
「へぇ……」
じゃあ、世界中に残っている不老不死伝説は本当だったりするのかも。
「でも、まったくそんな話を聞かないよな。幽霊とかならうちの学校の七不思議にあるくらい有名なのによ。多く居るってんならその中の一人くらいはその身体を活かして色々するみたいな奴も出そうなもんだが」
うちの学校の1年1組には座らずの席というものがある。
誰も座っていない席があるのだ。
「それは……、あの女、いや、あの女が所属しているグループが関係しているの」
あの女、とはあのローブを着ていた女の子だろうか。
「どう関係しているんだ?」
「あの女が関係している、簡単に言うならキリスト教ね」
「は!?」
あのでっかい宗教のキリスト教?
「まったくあの宗教には頭を悩まされるわ。あいつらいわく、私達のような不老不死は神への冒涜者らしいいわよ。だからこそ、あの女みたいな奴ら、普通に言うなら聖女や神父が私達を殺そうと躍起になってるわけ。紀元が始まってからね」
「ふーん。宗教の問題は色々あるからなぁ。でも、お前達は不老不死なんだろ?」
「何年あいつらと私達が対立してきたと思ってるの? 私達を殺す方法なんて色々あるわ。魔女狩りの炎なんてのはよくある話。知ってた? 魔女狩りは私達不老不死を殺すためにやってたのよ? 他にも聖水を体中にめぐらせるとか、銀の弾丸を撃ち込むとかね。あいつらは私達が苦手な図形ですらも発明したの。これが十字架なんだけれど。そういえば、あいつらが最初に発見した私達の弱点も十字架だったわね」
「待て、葛城。お前一体何歳なんだ?」
「私は真祖だからね。2000歳くらいじゃないかしら。数えるのも面倒だけれど」
「2000歳!? よく生きるのに飽きなかったな……」
普通なら発狂してもおかしくないぞそれ。
「いやいや、人間は色々と面白かったわよ? それに私に理解を示してくれる者達も多かったしね」
「あ、あの女の子もお前も言ってたけど、真祖って何なんだ?」
「真祖ってのは不老不死の元みたいなものなの。真祖と眷属ってのが居て、この不老不死の力は他の人間に移すことが出来る訳なんだけれども、移された人が眷属、移したほう、つまり大本が真祖になるって訳。眷属が力を移しても出来た方も移させたほうもただの眷属。だから真祖の数だけは変わらない。それが真祖と眷属の違いってわけなんだけれど」
「移す? どうやってだ?」
「私の場合は私の血を飲ますの。こういうところが吸血鬼と間違えられたりするんだけどね」
「そういえば、お前が死ぬ方法の中にも吸血鬼の弱点と同じものがあったな」
銀の弾丸を胸に撃ち込むとか、十字架が嫌いとかな。
「元々、吸血鬼と私達は同じもの。人間がどう勘違いしたかによるわ。真祖によって不老不死の移し方が違っていてね。私は血を飲ませて不老不死にするけど、他のやつにはその牙で噛んで血を吸う事で不老不死を移すものも居るわ。そいつは随分と目立ちたがりだったから……、吸血鬼なんて噂が一人歩きしたの。真祖は私を含めて六人だった。二人は聖女や神父に殺されて、他の二人は生きるのに飽きて自殺したから、今はもう二人だけどね。連絡も取ってないし」
「そうなのか……。ところで、真祖と眷属で違いはあるのか? 眷属は不老不死を移せないとか」
「そうね……。真祖の方が基本的に力が強いって言えばいいのかしら。クローンとかってどんどん遺伝子が劣化していくじゃない。そんな感じで、真祖から離れればどんどん力、魔力とかは弱まる。そんなもんかな。でも、一番基本となる不老不死性はなかなか消えないわよ」
「成程、よく分かった。しかし驚いたな。そんな夢物語があるとは」
正直驚きすぎてホヘーとしか言うしかない。
まだ世界中には知らないことがたくさんあるということだろう。
「あぁそうだ。なんでそんなお前がこんな極東の日本に来たんだよ」
そういえば凄く疑問だった。
「いや、ほら。私も全盛期っていうの? そういうときは欧州とかで魔女とか言われて恐れられてたんだけどさ」
それは……、いかにも合いそうだ。
「それも結構疲れたりしてね。キリストの影響をあまり受けないここなら平和に人間と共生しながら生きられるかと思ったのよ」
「成程ねぇ。なんかおばあちゃん臭いな。隠居っぽくて」
「おばあちゃん言うな。こんな可愛い子捕まえといて。まあ、その動きを敏感に察知したあいつらが私に刺客を送ってきたって訳だけれど。一度はかなりダメージを負わせたのに……。まさか二日で見つかるとは思わなかった」
はぁ……、と葛城は溜息をついた。
さて、こんな世界の裏側を知った俺はどうするのか?
何も出来るわけ無いだろうが。
「パフェくらいおごってくれても良いんじゃない? みみっちい男ね」
「俺は学生だぞ!! そんな大打撃を受けるようなものおごってやれるわけ無いだろ」
二人はすることも無くあたりをぶらついて喫茶店にいた。
「そういやお前、家とかどうしてんだ?」
「ちょいと記憶操作の魔法を使ってね。私はその家でイギリスからの留学生キャロットっていう設定になっているわ。ちなみにこの国に来るのも、学校に入学するのにもこれを使わせてもらったわ」
「お前魔法使えんのか!? ていうかその魔法で俺の記憶も操作すればよかったんじゃ!?」
至極当然なことを葛城に聞いた。
「それをしようとは思ったのよ。でも、あの時。あなたが私の再生を見終わった後、あの場所には誰がいたかしら?」
「誰……?」
あの時、俺と葛城と……。
「委員長と現川って男子か!!」
「そう、あいつらがいたからおおっぴらに魔法は使えなかったの」
「なら、さっき俺達がサボった後にどっかですればよかったんじゃないのか?」
「実はね、記憶操作の魔法は痕跡が凄く残りやすいの。だからこそあの女も学校に来たんだろうけど。あの女にまた追われだしたこの状況じゃあ、あまり魔法は使いたくないし。それに、こんなこと話したとして、他の人に話しても信じてもらえるわけが無いから、あえて教えたの」
「そういうことだったのか……」
さて、この後。
適当にそのあたりをぶらぶらしていた。
ウィンドウショッピング的な。
「じゃあ、この辺でお別れになるわね」
「そうか? まだ早くないか?」
「いや、もういいわ。楽しかったわ」
ウィンドウショッピングの途中で、急に葛城が帰ると言い出した。
楽しかったという葛城の顔は、すこし悲しげにも見えた。
「本当にいいのか? 何かあったんじゃ……」
「いや、本当もういいから。じゃあね」
葛城は少し焦ったように手を振って無理やり別れた。
なんかこの設定だけで一個くらい小説が作れそうな気がします。
頑張って見ようかな?
いや、まだネタとか全然出来上がってないですけどね?